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君がいるから  作者: 柚果
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第四十八話 突然の…

沙希は自分が楽しめることには、とにかく動きが速い。




勉強会の話もあれよあれよという間に決まってしまった。





「ね、これはこうだっけ?」


「そうそう。沙希ちゃん覚え速いね!」


「彰くんの教え方がわかり易いんだよっ!」




毎度おなじみのバカップル。さらに磨きが掛ってるのは気のせいだろうか。



ここは例のファミレス。



テストシーズンになるとこういう学生の姿がよく見受けられる。



来た時は座る席がいつも同じ。暗黙の決まりごとのようになっている気がする。




「杏、この公式違う」


「へ?」




私の前に座っているアイツ。会うのは雪山以来だ。



「本当だ…」



私は消しゴムで一度解いた式を消していく。



いつもなら間違えるはずのない問題なのにな…。




新しく問題を解き直していると何だか視線が気になる。



とりあえず問題は正解だ…




「…何?」



目線をチラリとあげると肩肘をついているアイツが私の方を見ていた。



正確には私のノートを、だ。




「いや、正解。問題解くの速いねお前」


「…見てないでやりなよ。知らないよ赤点取っても…!」



って、ぎゃあ!!



私の言ったセリフに過敏に反応している沙希がこっちを見ている!




だから怖いってば〜!!その顔っ!!




「知らないだろ?俺ってば結構優等生ですから」


「そう…なんだ」




ほっ。沙希はまたバカップルモードに戻っている。



って優等生!?



「優等生って本当に…?英語だけじゃなくて?」



疑うわけじゃないけれど。お世辞にも優等生タイプには見えない…



「だよな慶?言ってやって俺の戦歴♪」



自慢気な顔がやたらムカツク。




…嘘だ。全然ムカツけない。



「知らねぇ。興味ない」



ばっさり切り捨てられるアイツ。



ぷっ。



二人のやり取りに笑いを堪えているとスッと目の前に私のじゃないノートが現れた。



ん?




「立花、ここ教えて」



ぱっと顔を見ると、それは慶くん。




「あ…えっと、どれ?」



教科は英語だ。なるほど。私が得意なのも知ってるしね。



「えぇっと…ここは関係代名詞の"that"が…」


「なるほどね。サンキュ」



慶くんもかなり頭の回転が速いらしい。



自分が教えたことをわかってくれたらうれしくなってしまう。



「慶、英語だったら俺がいるだろ。遠慮すんなよ」



お?敵対心燃やしてる人が約1名。



「恭介、文法の説明出来ないだろ」


「…あはは」




水嶋恭介に限らずこういう人は多い。話せるけど文法は…ってね。




ひたすら問題を解き続けていると、随分と時間が経っていた。



「そろそろお開きにしよっかぁ!」



彰くんの一言でみんな一斉にリラックスモードになる。



「結構進んだかも。これならいけそう!」



沙希が言った一言はみんなに言えることだった。





「ありがとうございました」



店を出て駅まで数分の道のり。



「わ。恵麻から電話だわ…」



アイツの携帯が鳴ったかと思うとこの一言。



相当愛されちゃってるな。ナイス恵麻ちゃん。



電話に出るために少し離れて歩くアイツ。



自然に並びは前方に沙希と彰くん。後方に私と慶くんだ。



短い道のり。特に会話もなく淡々と進んでいる。




「この前聞いたこと」


「え?」



急な慶くんの声に驚いて立ち止まってしまった。



「や、歩きながらでいいし」


「あ…うん。そうだね」




…この前?私何聞いたっけ?



私の考えてることが伝わったのか慶くんは続けた。



「聞いただろ?"何で私にそんな話するのか?"って」



あぁ!




…でもそれが?



「…聞いた、ね。…それがどうしたの?」



私は思った通りのことを聞いてみた。




「それ俺も考えてたんだわ。あれから」



そうなんだ…



慶くんは前を見たまま続ける。




「俺多分」



うん…



「お前のこと気になってかもしれない」



うん…





…うん?今…何て?




まだ完全に今の言葉が理解出来ないでいる私の足が止まる。




「…え」



ゆっくり顔を上げた私は…完璧に頭がパニックだ。




「だから歩きながらでいいって。別にどうこうするってわけじゃないから」



歩きながらって…




そんなもん普通に歩けるかぁ〜っっ!!



って、え…え…何、今の!?




慶くんはすでに長い足でスタスタ歩き出している。




ちょっと待ってよ…今のって…





「…!!」





あまりの驚きで頭が真っ白になった。


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