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君がいるから  作者: 柚果
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第四十七話 大事なこと

冬真っ只中になり、この辺りでもチラホラ雪が見られる頃




今さらですが、ここは都会でも田舎でもなく



まぁ、平々凡々でどこにでもあるような街です。





「そろそろ期末かぁ…」



私がふと呟いた一言で隣の人が青ざめている。




言うまでもなく沙希だ。



「もうそんな時期だっけ!?最悪だぁ…」


「別にそんなに成績悪くないでしょ?」


「そうだけどさぁ…勉強すること自体が嫌いだし」



そりゃ私だって嫌いだよ。



しなくていいって言うんなら誰が好き好んでやるものか。



でもそういうわけにもいかない。学生も色々大変なんだよね。




「あ、そうだ」



突然の沙希の一言。



私の嫌な予感は、相手が沙希の場合100%の確率で当たる。




…絶対何か言い出すぞ。このコ。




「彰くん達と勉強会しよっ!」



する?ではなく、しよう。



この場合すでに私に発言権はなく、決定事項だ。




でも念の為確認してみる。




「…それって独り言?」


「まさか。杏もよ。決まってるデショ?」




やっぱりね。うん、わかってたよ。そんな気はしてた。



「ねぇ杏」


「ん〜?」



私はもうすっかり諦めモードだ。



何だかんだ言っても沙希には付き合っちゃうんだよなぁ。




「恭介くんと何か進展してるの?」




オイオイ…ド直球な質問だな。もうちょっと包もうよ。




「…別にぃ」



本来私は恋する女の子タイプではないらしい。



好き。やっぱり好き。と自覚してもそうそう行動出来るもんじゃない…



「ちょっと、別にってやる気あんの!?」


「…う〜ん。どうだろう。ね?」


「"ね?"じゃないわよっ!その神に与えられた顔で勝負しかけろ!!」



神に与えられた??どんだけスケールの大きい話!?



っていうか何で私が沙希に怒られてんのっ!?



「顔で落ちる相手じゃ今さら苦労しないか…でもやっぱり良いに越した事は…」




何やらブツブツ唱えている沙希。…暴走の予感。



そしてやたら目が怖い。真剣すぎて眉間にシワ寄っちゃってますから。



「ね、連絡は?取ってるの?」


「あ〜…たまぁぁぁにメールぐらいなら」



本当に文字通り、"たまぁぁぁに"だけど。



「…それでイライラしない?」


「しないけど?」



私の答えに沙希はますます顔をしかめる。



「"会いたい"とか思わない?」


「…そんなには」



あ。そんなにってことは多少思っちゃってるんだ。



また自分じゃ気付かなかった事に気付いてしまった。




「…確認だけど好きなんだよね?」



うっ…改めて聞かれると赤面しそうだ。



しないけどね。



「…だよ?何で?」


「だって、恋してルンルン浮かれちゃってます♪みたいにならないんだもん」



何だそりゃ!他のコはみんなそうなの!?違うでしょ!?




「それって偏見だよ」


「じゃあ質問を変えます。ハイ立花杏さん!」


「…何ですか?」



沙希は先生気取りでありもしないメガネをクイッと直す仕草を見せる。



本人が楽しそうだからあえてツッコまないでおこう。



「彼。水嶋恭介さんといて"ドキ"っとしたことはありますか?」



ぎゃぁ!!教室でフルネームで言うなっっ!!



「否定しないってことはあるのね。フムフム…」



勝手に決めるなぁ!!



まぁ、あるけど…



「一緒にいてどうですか?楽しい?嬉しい?」



…一緒にいて?




確かにそれも間違いじゃないと思う。でも…




「どっちかって言うと…"楽"かな?」


「楽?」


「あ、ちょっと違うかな。でも気負わなくていいし、変に気を使わないでいられるし。


アイツの一言で楽になったこともあるし…そこにいて何て言うか…」




上手く自分の気持ちを表現できる言葉が見つからない。




「"安心"ってこと?」


「…多分」



"安心"って言うと大袈裟かもしれないけど。



今はその言葉がぴったり当てはまる気がする。



「それって大事なことだよね。絶対に」



何の邪心もない笑顔は、沙希をいつもの数倍かわいく見せる効果がある。



「彰くんは?どうなの?」


「もちろん!一緒にいて楽しいし、安心するよっ」



沙希の幸せそうな笑顔を見ると何だかこっちまで優しい笑顔になってしまう。




「じゃあとにかく5人で勉強しようねっ。集合かけとくから」


「あ、そっか。5人だから当然慶くんもだよね…」



あの日から慶くんとは会ってない。連絡先も知らないから当然だけど。



「うん?そうだよ?あ、まさか浮気心!?」



茶化したように沙希が言う。



「違うってば…ただ。ちょっとね…」




あの日からずっと何かが心に引っ掛かっている。




そんな気がしてならないんだ。

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