第四十五話 容量オーバーのち…
私のキャパシティをはるかに超えた連休での出来事。
そして帰って来ると、これまた見事に風邪を引いた。
…完全に容量オーバーだ。
休日を挟んで4日ぶりの教室へ入ると沙希がすぐさま駆け寄って来た。
…さすが我が親友。気にしてくれてるんだな。
「おはよ。見てよこの打ち身。まだアザ消えないの」
っておい!!
ちょっとは人の心配してくれてもいいんじゃないっ!?
「ってのは置いといて、復活した?」
…病み上がりの人間に突っ込ませないでよ。
「39度だって?家行こうかとも思ったんだけど、ゆっくり休めないと思ってさ」
「…ん、もう平気っス」
沙希は沙希なりに考えてくれてるんだ。
…多分だけど。
「彰くんも心配してたよ?自分が雪山に誘ったせいかな〜、って」
「うそ?全然違うのに」
さすがお人好しだ。彼女でもない私の心配までしてくれるなんて。
「ま、でも長引かなくて良かったね」
「だね。自分でも素晴らしい回復力だと思うよ」
本当は精神的疲労も大きな原因な気がするけど…
「…ねぇ沙希」
「う〜ん?あ、宿題なら私やってないからね」
…違うってば。っていうかやろうよ。
「私さぁ」
復活したらまず言おうと思ってたことがある。
自分だけじゃ多分…いや、絶対に気付かなかったから。
これを言ったら沙希はどんな反応するだろうな。
「やっぱりアイツのこと好きみたい」
ガタン。
あ、机の脚につまづいた。しかも顔がえらいことになってますよ。
「…はぁ?」
期待通りのリアクションどうもありがとう。
「本当に?何で?いつ!?」
「詳細は控えます。でも雪山で、ね。何でか気付いちゃったの」
偶然起こった出来事が偶然にも重なって
偶然に自分の気持ちに気付いてしまったというところだ。
「はぁ〜。確かにけしかけたの私だけど…まさかねぇ」
沙希は信じられないと言わんばかりの表情だ。
ま、取りあえず座ろうよ。ね?
私が席に座ると沙希も釣られるように前の席へ座った。
「で、何?雪山で告ったの?」
「…してないって」
沙希はやけに目がキラキラしている。
…絶対楽しんでるでしょ?まぁいいけどね。
「で、で、何が決め手なの?」
そんな前のめりになんなくても…
「…決め手っていうか…何となく?」
「何となく?」
頭上に?を浮かべて首をかしげる沙希。
「何て言うんだろう…急に思ったっていうか。理由なんてないんだよね」
「ふ〜ん…そっか」
両肘をついて頬を支えている体勢になる沙希。
それはいい。…いいけど
「…何かニヤニヤしてない?」
「え、わかる?」
…わかるって。不自然すぎる。
「良かったね」
はい?
「私もうれしいんだもん。杏にそういう人が出来て」
今度は優しい笑顔になる。
…何だかくすぐったい気分だ。
「…ありがと」
「でもって上手くいってくれるとさらに良いんだけどな」
…お〜い。ニヤリ顔に戻ってますよ。
「期待しないでよ…あと余計なことはしないことねっ!」
これはビシッっと言っておかなきゃ。
沙希は暴走癖があるし。
聞こえてませんよ〜。的な顔をしていた沙希も、私が念を押すとしぶしぶ
「はぁい」と返事をしてくれた。
はぁ。豪快なため息が出てしまう。
「何でため息?自分の気持ちがはっきりわかって気分はスッキリでしょ?」
確かにスッキリはしたかもしれない。
モヤモヤしてたものがやっと形になった感じがするし。
でも…私の中にはもう1つ気になることがあるんだ。




