第四十話 消えない存在Part2
パシッ。
帽子に何か当たった感覚。
振り向くとそこにいたのはアイツ。
「なにぼぉっとしてんだよ」
どうやら丸めた雪を投げられて見事にヒットしたらしい。
「…水嶋 恭介」
「んぁ?手袋でも落としたか?」
「違うよ…あれ?恵麻ちゃんは…?」
ふと気が付くとあるべきはずの姿がなかった。
「あぁ。恵麻の奴、降りるのに失敗してそのままスタート地点まで強制送還。苦手なんだよリフト」
「…そっか」
得意とか言ってたのにリフトは苦手なんだ。ふぅん。
「お前さ、慶と何話してんの?」
え…?
「いや、慶って話題振っても一言二言で返すタイプじゃん?それで会話成立してんのかな、と思って」
「…そうでもないよ。普通じゃん」
「へぇ、意外だな」
もしかしたら水嶋恭介なら知ってるかもしれない。
確か中学からの付き合い…だったよね?
「でも聞いて悪いことしたかもしれない」
「何を?」
真実を聞くんじゃなくて、この話の重要性を聞こう。
「慶くんの…中学時代の彼女のこと…」
そう言った瞬間アイツの顔がこわばるのがわかった。
本当に聞くべきじゃなかったんだ。
「それ…慶に聞いたのか?」
「…うん。"似てる"って言われて…"誰に?"って聞いたら"元彼女"だって言われて…」
アイツは
「そうか」と言ったきり黙ってしまった。
「…やっぱ聞くべきじゃなかったんだね。無神経だった」
謝った方がいいんだろうか
それとも、もう話題にしないほうがいいのかな。
「…ん、でも慶から言ったことだしな」
「…そうかもしれないけど原因は私だから」
この空気の重さでわかるよ。簡単に触れることじゃないって。
「それに…
それにまだ好きなんだと思う…彼女のこと」
白い雪がゆっくり降り続けている。
周りではスピーカーから音楽が流れていて騒がしいはずなのに、
なぜかすごく静かに感じてしまう。
そしてアイツが重い口を開いた。
「でももう会えない相手だしな」
…え
「…会えない?」
それってどういう…
「だってそうだろ。…死んだ人には二度と会えないんだから」




