第三話 流暢なマネキン
…今何て?
…はっきり言いましたよね?日本語ですよね?日本語ぉ!?
「…日本語話せるんですか?ってか話せますよねかなり流暢にっ!」
"流暢"のところをあからさまに力込めて言ってやった。
「うんペラペラ。ごめんね?あぁいうのには一番手っ取り早い方法だからね♪」
「…それでも伝わってませんよ。
あのコら"I can speak Japanese"って言われたって言ってましたから。
ま、多分意味わかってないでしょうけど」
「別にどっちでもいいよ。日本語わからない人になれれば」
…ううわっ。こっちがバカみたい。
「…そうっすか。私には関係ないんでどっちでもいいです。じゃあ」
踵を返そうとした私に向ってマネキンが喋った。
やっぱりマネキンっぽい顔をして。
「そこまで英語話せる同世代初めて見た。上手いね、発音」
そりゃどうも。こっちは本場で修業した身なんでね。
駅前ハイスクールなんて目じゃねぇっつーの。
私は何の反応もせずにそそくさと引き返した。
あぁ…もう寝よう。帰って速攻で。3秒で夢の中だっ!
「恭介〜!腹減ったから何か食いに行こうぜっ!」
「ん?あぁ、そうだな」
「何?何笑ってんの?」
「…恭介半笑いの顔やめろ」
「ん。ちょっとな。面白い奴がいたからさ」
私が過ぎ去ったあとにこんな会話がされているなんて。
私は知る由もない。




