第三十八話 何とかなる?
「はい。じゃあこれが女子ロッジの鍵ね」
おばさんはデザインが凝っている鍵を沙希に渡した。
キッチン、暖房、お風呂、トイレ
設備がばっちり整っている広めのログハウスだ。
「ありがとうございます!運転もお疲れ様でした」
「いいのよ。男子ロッジは隣ね」
もちろん。もちろんのことですけど男女別のロッジだ。
「はい、杏。ウェア」
「ん、ありがと」
至れり尽くせりだなぁ…
「恵麻ちゃん滑ったことある?」
「ありますよ。結構得意です」
「私小学生以来だよ。それにスノボは初めてだし」
「彰くん上手いらしいですから教えてもらえますね」
沙希と恵麻ちゃんは気が合うみたい。ま、沙希は人見知りしないしね。
その時コンコン、とドアを叩く音。
「はい?」
私は玄関まで小走りしてドアを開けた。
ガチャ。
と、そこにはあったのは例の3人の姿。
そして当たり前だけどアイツも…
「何?お前らまだ着替えてねぇの?」
ドキ
…って私もしかして緊張してる!?柄じゃない!!
朝はすぐに車に乗り込んだから話してないしな…
「…早いよ。今着いたとこじゃん」
「とにかく一滑りしようよ!せっかく来たんだから」
彰くんはハイテンションだ。
好きなんだろうなスノボ。
隣には眠そうな目の慶くん。対照的だなぁ。
「んじゃリフトの前で待ってるからな」
わかった。と答えると一目散に駆けて行く2人+マイペース1人。
プッ。小学生みたいだ。
その姿を見て自然に笑えてしまった。
「杏、何て?あれ、なんか笑ってる?」
帽子を被った沙希が部屋からひょっこり顔を出した。
妙に似合う。
「何でもないっ。早く用意しよっ」
「どうしたのいきなりやる気?」
「別に〜。彰くん達リフト前で待ってるって」
「そ。あ、そういえば杏はさぁ…」
ん?
「やったことある?スノボ」
…ん?
「…ないんだねその顔は」
…ま、何とかなるよね?運動神経はいいほうだし。
…甘い?




