第三十七話 美少女再来
トンネルを抜けるとそこは雪一色の世界でした。
というナレーションがぴったり合う窓の外。
車に揺られること2時間。
あと少しで目的地に着くらしい。
私はとにかく無の境地。
何も言わざる何も考えざる…
って何で私がそんな修行みたいなことしなきゃなんないの!?
その理由は本日のメンバー構成にある。
確かに沙希が言ったとおり5人ではない。
ただ、5人じゃなく6人なだけだ。
「杏さん何かブツブツ唱えてません?」
みなさんお察しの通り、5人とは例の5人です。
今喋ったのは私の隣に座る6人目の美少女。
超ブラコンの水嶋 恵麻ちゃん。アイツの妹だ。
「いいのほっといて。今情緒不安定なのよ杏は」
助手席に座っている沙希が振り向いて言った。
…誰のせいだと思ってんのよ。
はぁ…
心の中でため息をついた時、運転席から声が発せられた。
「彰と沙希さんは付き合ってどのくらいになるの?」
運転手を快く引き受けてくれた彰くんの親戚のおばさんだ。
「えっと、まだ3ヶ月くらいなんです」
「そう。まだまだ楽しい時期ね」
「そりゃ、まだ2人じゃ旅行行けませんよねっ♪」
恵麻ちゃんはからかうように言う。
「…最近の中学生って怖いわぁ」
…私も同感です沙希。
「で、杏さんは?どっちなの?」
「…はい?」
えっと…どういう意味でしょうか?
「どっちもいい男でしょ?」
おばさんはあの2人に何度か会ったことがあるらしい。
っておばさんまで何言い出すんですかっ!!
私は違います。って答えようとした時、声が被さる。
「どっちかって言うと慶くんだよね?ね?」
…最後の"ね?"にやけに力がこもってる。
…さすがブラコン。
「ふふ。恵麻ちゃんは恭介くんが大好きなのね」
「私ブラコンじゃないですよっ!」
自爆…誰もブラコンとか言ってないのに。
やや扱いづらいけど憎めないタイプだ。
ふと窓の外に目をやる。
少し前を走っているシルバーの車。
運転手は彰くんの親戚のおじさん。
つまり私たちの運転手のおばさんの旦那さんだ。
乗車人数は運転手含め計4人。
…どんな2日間になるんだろう。




