第三十五話 嫌よ嫌よも…!?
外見だけで"好き"とか言ってるコは理解できないし
優しくされたからって好きになるわけじゃない。
「そういう点では私ってやっぱ"例外"なのかな?」
目の前で堂々と人のノートを写している沙希に尋ねた。
「はい?」
こっちを見ずにひたすらペンを動かしている。
…聞いてます?
「…だからこの前沙希が聞いたでしょ?私は"一般的"か"例外"かって」
「あぁ。そんなのまだ考えてたの?」
おバカ?とさらに付け加えた。
…どうせバカですよ。
「それに、杏が一般か例外かなんてどっちでもいいしね」
えぇ!?
写し終えたのかノートをパンと閉じた。
「つまり。恭介くんをどう思ったかってこと」
「…どう、って?」
字を書くという仕事を終えたペン先を私に向けてくる。
「最悪だと思ってたアイツが、意外といい奴で、チャラいタイプでもなかった。
間違いないよね?」
…うん。確かにね。
「しかもさりげなく一緒に待ってくれた。自分は関係ないのに」
…その通りです。
「で、よくよく考えたら何で私苦手意識あったんだろう?みたいな?」
驚きだ。ここまで沙希がわかってるなんて。
私は目を見開いたままになってしまう。
「さらにそのあとよ」
「あと?」
「恭介くんってモテるタイプだけど、それに乗っかる人じゃないよね?
それに女の子の親しい友達は作らないんだと思う。誤解されても困るし、相手に悪いから」
「…そうかも」
「その恭介くんが杏にはどう?」
どう?…って
「…普通?」
なぜか疑問形になってしまった。
「だよね。遠ざけたり壁作ったりしてない。むしろ好意的に見えるよ私には」
「…それって私が回りにいるバカ女みたいなタイプじゃないからでしょ?」
「それもあると思う。でも本当にそれだけ?」
ってそんなの私に聞かれても…本人じゃないし
「じゃあ杏の話に戻る。ぶっちゃけ気にならない?気持ち傾いたりしない?」
その言葉に一瞬フリーズ。
「杏の嫌いなタイプじゃないってもうわかるよね?」
「…それはわかるけど…でも、え?」
何だか頭が軽くパニックだ。
「それで少しも気にならないなんて例外通り越して女じゃない」
…そこまで言う?
「それに私の質問に方向は間違ってても考えてたってことは
イコール恭介くんのこと考えてたってことでしょ?」
…そうなるの!?
「ま、"嫌よ嫌よも好きのうち"って言うしね♪」
沙希の言葉に唖然・愕然。
それってつまり…
私がアイツを好きだってこと…!?




