第三十二話 曖昧な空
一昨日、昨日はあんなに晴れていたのに
秋の天気は崩れやすっていうのは本当だな。
今日は朝からどんよりした空気だった。
「あ…雨だ」
教室の窓にポツポツと雨があたっている。
「うそぉ。私傘持って来てないよ…」
それはお気の毒…まぁ私が入れてあげることになるんだろう。
この分じゃ花枯れちゃうな…
「ねぇ沙希」
「うん?」
「花をね。人にあげるときって花言葉気にしたりする?」
「花言葉?うーん…そうだなぁ。
相手が好きな花なら気にしないけど、選んであげる場合なら気にするかも」
というか花はもらう側だし。と笑いながら答えてくれた。
そっか…じゃあやっぱり私の気にしすぎかな…
「チョコ食べる?」
「えぇ??」
「好きでしょ?新作だよ」
びっくりした…タイミング良すぎだってば。
一粒もらったチョコレートを口に入れるとほろ苦い味がした。
「すいません。チョコレートコスモスありますか?」
「申し訳ありません。当店では取り扱ってないんですよ…」
「そうですか…ありがとうございます」
沙希と一緒に駅まで帰った後
私は一人、来た道を引き返していた。
さっきから雨は降ったり止んだり。曖昧な天気だ。
私はなぜか心に引っかかるチョコレートコスモスを買おうと花屋に寄ったんだけど…
「やっぱりないよねぇ…しかもストロベリーチョコ」
…取り寄せなきゃだめかな
でもわざわざ?…一体誰なんだろう
そんなことを考えているとまた雨が落ちてくる。
「…帰ろっかな」
「結構濡れちゃったし…」
雨は止む気配をなくして強くなる一方。台風?って思うほどだ。
駅まではちゃんと傘を差して来たのに。意味ないじゃん。
その時突然に名前を呼ばれた。
「杏?」
え?
「やっぱり。って傘持ってんのにめっちゃ濡れてるし」
顔を上げたらそこにアイツ…水嶋恭介が立っていた。
「ダサッ」
…悪かったわね。でも何か今言い返す気分じゃない。
「…一人?いつもの連れは?」
「残念ながらいつも一緒じゃないんでね。そっちこそ?」
「…駅までは一緒だった…よ」
「ふぅん…
「お客様にアナウンス致します」」
アイツの言葉を遮るように構内にアナウンスが響いた。
「現在豪雨と暴風の為、川沿いを通ります"西浦線"は運休となっております」
…ありえない。それ私が乗る線なんですけど。
落胆している私の表情を察したのか
「お前西浦?」とアイツに聞かれた。
力なく頷く私。…ほんと最悪だ。
「茶でもいきますか」
…は?
驚く私をよそに水嶋恭介は歩き出している。
「どうせ動かないんじゃ帰れないだろ」
…そうだけど。え?
「杏チャン早く♪」
だからいい加減それやめてってば!!




