第三十一話 コスモスの季節
柔らかい日差しが降り注ぐ。
秋晴れ。ってやつかな?
天気がいいと気持ちも穏やかになるから不思議だ。
「久しぶりっ。元気してた?」
前回来たのは夏休みが始まった頃。
その時も晴れだったから、私晴れ女かもね。
「はいこれ。きれいな色でしょ?」
姉が好きだったコスモスをそっと置いた。
「今季節だからかな?色んな種類あったよ」
手を合わせてそっと目を閉じる。
「…もうすぐ1年半だね」
姉が私の質問に答えるかのように、風が吹いて木々を揺らす。
その時、風に乗ってふわっとコスモスの香りがした。
「この種で辺り一面コスモスだらけになったらお姉ちゃんのせいだからね」
クスっと笑いを含めて言う私の鼻に違う香りがかすめた。
…あれ…この匂いって
辺りを見渡しても目には見えない。
どこ?
その香りを漂わせる花は姉のお墓の後ろ。
まるで日が当たらない場所にあった。
「…やっぱり。何でこんなとこに」
…チョコレートコスモス。
違う…ちょっと赤っぽい。ストロベリーチョコ?
「…珍しい。初めて見た」
姉が死んでしまってからコスモスには詳しくなった。
多分、市場にはあまり出回ってないと思う。
くん。と匂いを嗅ぐと、ほのかに甘い香りが広がった。
「…日に当たらないとすぐ枯れちゃう」
お姉ちゃんにだよね…?
持ってきたのイエローガーデンの隣にそっと生ける。
赤と黄色のコントラストが綺麗だ。
「…誰だろう。お姉ちゃんの友達?」
聞いてみても答えることが出来ないのでわからない。
「コスモスが好きって知ってて…誕生日を知ってる人」
それに珍しい品種…
ストロベリーチョコの花言葉はわからない。
でもチョコレートコスモスは…
"恋の終わり"
コスモスにしては悲しい花言葉だ。
特に理由なんてないのかもしれない。
でも何だか…すごく気になってしまう。
私は誰が持ってきてくれたのかわからないコスモスをしばらく見つめていた。




