第三十話 一生友達
人は悲しいことがあっても必ず乗り切れる。
時間が傷を癒してくれる。
…なんてキレイゴトをいうわけじゃないけれど
少なくとも私はそうだと思う。
少し肌寒くなってきた秋頃。
沙希が嫌な予感を感じさせる発言をした。
「遊園地行きたくない?」
「イヤ」
0.1秒の速さで瞬殺。
沙希の眉間にシワが寄るのが見えた気がするけどほっておこう。
「来週の土曜。1時。ワンダーランド」
って無視!?
「…人の話を聞こうよ。しかも二人で行って下さい」
「だってチケットもらったんだもん。4枚」
4枚ってあと一人どうする気よっっ!!
ん?来週の土曜?
「…って何日?」
「15日」
「ごめん。その日は行けない」
15日は絶対譲れない大切な日。
「用事?先約かぁ」
沙希はあからさまに、チッという表情だ。
…別にいいんだけどね。うん。
「その日はね、会いに行くんの。お姉ちゃんに」
そう言った瞬間、沙希の顔が少しだけ曇った気がした。
ばかだな沙希は。そんな顔しなくてもいいよ。
でも沙希らしいか…
「…そっか。優さん誕生日だっけ」
"優"と言うのは私の死んでしまった姉の名前だ。
フルネームは今井 優。
"今井"は母の旧姓です。
命日と誕生日。
その日は必ずお墓参りに行く。
父と母は知らない。私が決めたこと。
「うん、ごめん。無理には誘わない」
沙希は幼馴染みだからよく姉とも遊んでいた。
私の家庭事情をよく知る数少ない人だ。
「ありがと」
私が今こうして笑って姉のことを話せるのは
そんな沙希の存在も大きな要因だ。
たまに暴走するし、自分勝手だし、おせっかいなところもある。
でも…
私はこういう沙希と一生友達やっていくんだろうな。




