第二十九話 やっぱり鈍い
「それって新刊?」
私のカバンからひょっこり見えている文庫本を指して沙希が言った。
「そう」
「やっぱりね。まだカバーがきれいだもん」
「昨日買ったばかり。読み終わったら貸そうか?」
「ううん、いい。私読まないから」
沙希のこういうハッキリしているところは好きだ。
形だけの
「貸して〜♪」で、読まないで返す人より断然いい。
「それより土曜はゴメンね?思い出したら私ずっと彰くんといたからさぁ」
そうだよね。私かなり放置プレイだもんね。
ま、そんなに怒ってませんけど。
「いいよもう。そりゃ誰だってカレシと回りたいもんね」
「さすが杏サマ。わかってらっしゃる」
「ケーキ食べたいかも。もちろん奢ってくれるよね?」
「…さすが杏サマ。ただじゃ転ばないヤツめ」
当然♪もらえるものはもらわないとね。
「じゃあいつものファミレス…」
「の近くのアンティークな喫茶店♪」
「…ですよね」
「ん!やばいオイシイ!!」
季節のフルーツをふんだんに使ったフルーツタルト。
中のカスタードが甘さ控えめでバッチリ私好みだ。
「ホント!こっちも絶品!!」
沙希はベイクドチーズケーキ。
ベリーソースと生クリーム。ミントの葉がアクセントになっている。
一通りケーキを堪能した後はひたすらお喋タイムだ。
女の子は好きですよね。こいういの。
「杏も彼氏つくればいいのに」
すっかり冷めてしまった紅茶を飲んでいる私に唐突な話題。
「…って言われてもねぇ。作ろうと思って作れるもん?」
「どうかな?タイミングもあると思うけど。本人の気持ち次第でもある」
ごくり。と沙希はカフェオレを飲み干す。
「私前から思ってたんだけどさ」
何よ?
「杏って帰国子女のわりに奥手だよね」
普通だよ。って前から思ってたの!?
「私恭介くんは絶対杏と合うと思うんだけど」
…だから何でここでアイツが出てくるの?
「少なくとも向こうは絶対嫌ってないよ。じゃなきゃ壁なんか頼まないし」
「…あのさぁ。結局壁って何だったわけ?女避けっていうのは分かったよ?
でも大して威力のない私に頼むなんて一体どういうつもりだったんだろ…」
って、ん?何でそんなにポカンとした顔してるの??
「…杏ってやっぱ鈍い」
かちん。
「それアイツにも言われたんだけど何!?私ってそんな鈍い!?」
「言われたの?他には何て?」
他!?他には…
「…視線2倍。とか…面倒くさいことのオンパレード。とか…」
思い出したらちょっと腹が立ってきたかも。
「ってことは恭介くんはわかってるってことだね」
え?何で納得?どこに納得なの??
「ま、青春楽しめ!ってことよ♪」
…だめだ。沙希ちゃん暴走中。




