第十九話 トドメのたこ焼き
壁…空間を仕切り区画を形成するために設けられる、垂直方向に立つ構造物である。
以上、
「壁」に関する知識でした。
思わず調べてしまった自分がアホらしい。
…考えないことにしよう。
屋台の匂いに老若男女様々な人々。
北高文化祭は昨日と今日行われ、今日が最終日だ。
「沙希ちゃんどこ行く?」
「んっと、彰くんのクラス行きたいな♪」
「了解〜♪」
…ここでもバカップルぶりを大いに発揮している二人と、その二人の少し後方を歩く私。
…完璧邪魔な人だ。
「ここがウチのクラス。たこ焼きなんだっ」
「あ、おいしそう!」
…本当。おいしそうな匂いがする。
「自分のクラスだからって割引しねぇからな」
ん?
「恭介ケチ。いいよ払うから」
よく見れば焼いているのは頭にタオルを巻いた水嶋恭介だ。中には灘波慶の姿も見える。
「あれ?三人同じクラスなんだ?」
私も今同じこと思ったよ沙希。
「そうだよ。すごい偶然でしょ」
偶然なのか!?…って私と沙希も同じクラスだけどね。
「杏、お前もいるんだろ?」
「うぇ!?あ…じゃあもらう」
久しぶりに名前で呼ばれたからびっくりした…!!
「慶。具取って」
「ん」
見事な連携プレーで丸型に具を落としていく。
出来上がったたこ焼きはお世辞にもプロ級とは言えないけど、文化祭らしい味がしておいしい。
「おれそろそろ時間終わるから抜けるぞ」
水嶋恭介が灘波慶に言う。
返事はないけど伝わってるんだろう。
そんなことを考えていると、水嶋恭介がこっちを見て一言。
「たこ焼きと招待券の礼。きっちりしろよ?」
…あ!そういえば私お金払ってないっ!!もう食べちゃってるし!!
「"壁"よろしくっ」
だから壁って何!?
このあと私は違う
「壁」の意味を知ることになる。




