第十五話 アイツのこと
「恭介は自分から声かけることはしない。
向こうから勝手に来るんだ。恭介の外見目当てで。
恭介は波風立てないように断ってるんだけど…中にはそれだけじゃ聞かない人もいるし。
恭介はああやって笑って言うけど、俺から見たら被害者だよ。
俺は幼稚園から恭介を見てるけど、さっき立花さんが言ったようなことは絶対にない。」
どうしよう。
彰くんが言ってることは本当なんだと思う。
嘘をついてるようには見えないし、ついてると思いたくない。
これを聞いてしまった私はどうするべきか…
そんなの簡単だ
謝る…しかないのはわかってる
「あんまり気にしないで。曖昧な言い方したのは恭介だし。
今度会うときはケロっとしてるよ」
彰くんは笑って言ったけど、どのツラ下げて会えば…
「電話すればいいじゃない。知ってるんでしょ?」
かる〜く言ったのは沙希。
それはそうかもしれないけど…
「んなの無理。この前出るのにも気引けたんだからっ…!」
「…ふぅん。恭介が電話ね」
…墓穴を掘った私。
あれはただの…業務連絡だ。
ていうか、そんなとこツッコまなくていいよ灘波 慶!
…今日は厄日かもしれない。
まぁ私が悪いんだけど…
携帯電話を握り締めながらそんなことを思った。




