500 ヤマノ領の開発 4
「よし、それで行こう! 石鹸大作戦だ!!
とりあえず、日本で石鹸の作り方を調べよう!」
「……あ、うん……」
よし、転移!
* *
日本邸で石鹸に関するデータをネットからダウンロードして、領地邸のノートパソコンでゆっくりと調べている。
日本邸でひとりで調べるのは、何だか寂しいんだよね。
領地邸なら、自室には私ひとりでも、家の中にはみんなの気配があるから、何だか少し安心するんだ。
……日本邸……、山野家は、お父さん、お母さん、お兄ちゃんがいないと、私ひとりじゃ……。
日本邸は、『山野光波』としての私の居場所であって、『ミツハ』としての私の居場所は、領地邸と雑貨屋ミツハだよ、やっぱり……。
よし、調べ物に集中しよう!
……うむうむ、最初の石鹸は軟らかかったり、液体だったりしたのか。
そういえば以前、ベアトリスちゃんが『ブヨブヨの石鹸は、すぐになくなる』って言ってたな、確か……。それで、私があげた石鹸に大喜びしてくれたっけ。
今は身体はボディシャンプーを使っているから、固形石鹸は手洗いにしか使っていないだろうけどね。
あ、そういえば、地球では硬い石鹸ができたのは12世紀頃らしい。中世の終わり頃だな。
よし、うちが作るのは、最初から硬いやつにしよう。
原料は、……木を燃やした灰を水に浸して濾過する? 貴重な森林資源を消費することになるのか……。
え? 海藻や塩生植物を焼いて得られる灰から作る方法?
これだあああぁっっ!!
こういう時のために、海に面した領地を選んだのだ!
食べられない海藻は、石鹸に生まれ変わって、更に金貨に生まれ変わるのだだだ!!
足りなくなれば、ボーゼス領やアレクシス様の子爵領からも海藻を頂こう。
何、『日頃お世話になっていますから、うちの領民に海岸のお掃除をさせますよ。集めた海藻は、ヤマノ領に持ち帰って焼いておきますね!』とでも言えば、無料どころか、いくらかの礼金すら貰えるかも……。
本当に焼くのだから、嘘じゃない。灰を役立てるだけで……。
「そんな怪しい申し出、絶対に疑われるよ。
石鹸の販売が始まったら、すぐにバレるね」
「ボーゼス侯爵様は、いい人だけど遣り手だって聞いてるよ。ミツハじゃ騙し通せないよ」
「そうよね。お父様は領民には優しいけれど、貴族間での取引や領地の増収に関してはかなり厳しいわよ?」
「うむむ、やはりそうか……、って、いつの間に!
サビーネちゃんとコレットちゃんはともかく、どうしてベアトリスちゃんが聞いてるのよおおおぉ〜〜っっ!!」
「いえ、ここに私の執務室があるから、しょっちゅう来てるじゃないの。何を今更……」
「そうだったあぁ〜〜!」
「それと、姉様、その考え事を口に出す癖、貴族としては致命的だよ。何度も言ってるけど……」
「あああああっ! ボーゼス家の手の者に、作戦が漏れたあああっ!!」
「いや、漏れたも何も、全部自分で喋ったんじゃないの……」
ううう……。
「いえ、ミツハの邸でお世話になっていて聞いた話だから、喋らないわよ、お父様にもアレク兄様にも……。
まあ、アレク兄様なら、ミツハが『海藻頂戴!』って言えば、自分で掻き集めてここまで持ってきてくれるでしょうけど……。勿論、無料で」
「えええっ、本当? じゃあ、侯爵様も……」
「お父様は、作業させた領民への日当と輸送料、そして海藻の代金を請求するでしょうね、手数料込みで。
そして更に、石鹸の製造販売に参入させろと言ってくるわね、間違いなく」
「侯爵様、キビシイィ!!」
「貴族としては、普通よ」
「製造法から販路まで、全ての権利を奪い乗っ取ろうとしないだけ、ボーゼス侯爵は善人だよ」
「ぐはぁ!」
ベアトリスちゃんとサビーネちゃんの説明に、貴族の怖さを思い知らされた。
今まで私と取引してくれていた人達は、みんな、良い人ばかりだったんだなぁ……。
「まあ、姉様には『姫巫女様効果』や『救国の大英雄効果』があるからね。それと、王族のお気に入り、っていう盾があるし……。
それがなければ、とっくに色々と騙され、毟られてるよ」
「それと、ミツハは爵位持ちで婚約者がいないから、自分の息子と娶せて、とか考えている連中は、ミツハに嫌われるようなことはしないからね。
だから、婚約者が決まった後は、他の派閥の貴族には気を許しちゃ駄目よ?
まあ、ミツハに喧嘩を売るような者は少ないとは思うけれどね」
そうか……。
別に、私の周りにいる人達が、たまたま良い人ばかりだったというわけじゃなかったのか。
ただ、利用価値があるから機嫌を取ってくれているだけ、と……。
「ううう、貴族、怖いよぉ……」
「いやいや、皆が皆、そういう者達ばかりってわけじゃないよ。
中には、本当に良い人もいるからね、貴族の中にも。
……1割弱くらいは……」
サビーネちゃんがそう言ってフォローしてくれたけど、……全然フォローになっとらんわ!
「少なっ! 善人の貴族、少なっ!!
何だよ、その低確率は……」
「いや、だって、上層部が善人ばかりの国なんて、あっという間に他国の餌食になっちゃうよ?」
「……確かに、それはそうだけど……」
サビーネちゃんが言う通り、善人の政治家や大商人は、あまりいないよねえ……。
いや、『政治家や大商人の中に善人が少ない』と言うより、『善人は政治家や大商人になれない』と言う方が正しいのか?
まあ、確かに、結婚相手の親である義両親は善人であってほしいけれど、自国の王様がお人好しの善人だと、ちょっと心配だよねえ……。
「それに、良い人かどうかは、相手によって変わるものだよ。
アイブリンガー侯爵も、王家やボーゼス家、ミツハとかにとっては誠実で良い人だけど、敵対派閥や敵国にとっては悪党だよ?
相手が自分にとって誠実で良い人かどうかは、自分の価値と立場、そして人柄によって決まるんだよ」
「ううっ、確かに……」
サビーネちゃんの説明に、反論できないよ……。
拙作、『ポーション頼みで生き延びます!』書籍12巻、刊行されました!
よろしくお願いいたします!!(^^)/
……そして、遂に本作『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』、500話です!!
私の『小説家になろう』デビュー作であり、どこからもお声掛け戴けず、一度は75話で完結した、本作。
それが、書籍10巻超え、コミックス14巻超えで、更にアニメ化まで……。
本当に、夢を見ているようでした。
本作を拾い上げて下さいました担当編集様、コミカライズを引き受けて下さいましたモトエ先生、出版・流通・販売に携わって下さいました多くの方々、そして本作を読んで戴きました読者の皆様に、心からお礼申し上げます。
引き続き、『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』、よろしくお願いいたします!(^^)/
FUNA




