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322 アイドル大作戦 3

 そして、あっという間にやってきた、演奏会当日。

 場所は、王都の中央大広場。

 そう、王宮や神殿とかに面している、王都の中心部にある大広場だ。

 貴族だけでなく平民にも門戸を開いた大きなイベントなのだから、建物の中に収まるわけがない。

 料金も無料らしいしね。

 お金儲けのイベントではなく、お祭り……、音楽の祭典とでもいうようなものらしい。

 だから、貴族と平民の垣根もないとか。


 確かに、音楽家はみんな貴族だというわけじゃない。

 普通の平民は若いときから音楽の練習をする余裕なんかないから、音楽家には貴族の3男以下とかが多いらしいけどね。

 まぁ、そういうわけで、音楽好きな平民の中からダイヤの原石を見つけ出してパトロンに、とかいうのも、このイベントの目的のひとつらしい。

 だから、平民の中には、この演奏会に命を懸けてるような者もいるらしいのだ。

 ……ヘビーだねぇ……。


 でも、ソサエティー(わたしたち)は、お気楽に。

 目的はただの宣伝、売名行為であり、別に入賞とかを目指しているわけじゃない。

 幼年組のお披露目と、元気で楽しそうな様子を大勢の一般の人達に……ついでに、御両親とかにも……見せられれば、それでいい。

 だから、ミスとかも気にしない。

 その方針のおかげで、練習も楽しくやれたのだ。


 ノーミスを目指す大変さに較べ、何回かミスしても構わないなら、練習量も難易度も大きく下がる。こんなことで、幼年組の子に辛い思いをさせたくないからね。

 辛く苦しい練習を嫌々やらされたんじゃあ、好きなものも嫌いになっちゃうよ。


 さて、間もなく本番、みんなの晴れ舞台だ!


     *     *


 会場は、大広場に作られた仮設ステージ。

 その周囲を、大勢の観客が取り囲んでいる。

 一般の人達は立ったままだけど、貴族の皆さんは、隔離された場所で椅子に座っている。

 勿論、その区画は警備兵が囲んでいるし、それぞれの貴族の側には護衛の者が付いている。

 いくらお祭りとはいえ、そのあたりはしっかりしている。貴族には敵が多いからねぇ。国内にも、そして国外にも……。


 私達の出番は、後の方だ。一番最後、ってわけじゃないけど。

 最初とか最後とかの美味しい枠は、有力貴族の子女や、それらの貴族がパトロンとなっている音楽家が取っている。

 そう、順番はくじ引きとかじゃなく、主催者が勝手に決めてるんだよね。

 でも、それに文句を言う者はいない。

 何事も貴族が優先されるのは当たり前のことだし、貴族だけでなく平民も参加させてもらえるというだけで、この演奏会は平民を大事だいじにしてくれる、ありがたいもよおしなのだ。


 そしてソサエティー(うち)はパトロンとか主催者へのコネとかはないけれど、まあ、アレだ。

 聖女とか呼ばれて貴族からも平民からも絶大な人気を誇っているから、一番いいトコ(最初や、最後トリ)じゃないものの、最後から4番目という、かなりいい順番とこに割り振ってもらえたのだ。


 あ、うちは2チームでの参加だから、正確には『最後から5番目と、4番目』か。

 別チームにして申し込まないと持ち時間が1チーム分になってしまうから2チームで申し込んだのだけど、ちゃんと要望通りに順番をくっつけてもらえた。

 でないと、2度も楽器の設置や撤収作業をしなきゃなんないし、準備やら待機やらで時間がかかっちゃうからね。観に来たメンバーの御家族の人達も、ずっといなきゃなんないし……。


 子供達の出番が終わったら、すぐに一緒に会場から引き上げて、子供達と打ち上げパーティーを開いて褒めてあげたいだろうし、この機に他のメンバーの御両親との親睦を深めたいとか思っているだろうからね。

 ……勿論、ただの父兄としての仲良し会じゃなくて、『ソサエティーメンバーの親同士』としての、そして貴族としての繋がりやコネ作りという、営業活動(・・・・)なのだろうけど……。


 あ、主催者の挨拶……自分達の宣伝と、寄付のお願い入り……が終わった。

 そして、トップバッターの楽器が運び込まれ、いよいよ演奏会が開始される。


     *     *


 うむむ……。

 他の出場者達の演奏や歌は、何というか、……古典的?

 いや、そりゃまあ、この世界の未来において『古典クラシック音楽』と呼ばれるようになるであろう作品が生まれている時代なんだから、そりゃ当たり前だ。

 楽器的にも演奏者グループの人数的にも、そして屋外であるため音響効果も悪くてあまり重厚な音は出せていないけれど、まぁ、条件が良くない割には、みんなかなり健闘している。

 日頃の娯楽が少ないためか、無料ただで貴族の娯楽が味わえるからか、観客達には大受けだ。


 ……確かに、音楽的にも演奏技術的にも優れたものが多く、地球のクラシックマニアなら喜びそうだとは思う。

 でも、ソサエティー本体のメンバーはともかく、幼年組の子達は、退屈しちゃいそうだよねぇ……。

 そして、私達が練習し、本日披露する曲は、古典的なやつ(・・・・・・)じゃない。


     *     *


 そして演奏の順番は進み、もうすぐ私達ソサエティーの番だ。

 先発は、本体の方。幼年組は、後発だ。

 幼年組の時には、本体の方が色々とお手伝い(サポート)をする必要があるから、自分達の本番が終わっていないと、色々と気になって注意力が散漫になり、思わぬ失敗をするかもしれないからね。

 自分達のミスならばともかく、お手伝いの先輩に失敗されてメチャクチャになったのでは、子供達が可哀想過ぎる。なので、この順番は変えられないのだ。


 ふたつ前のチームが終了。

 ひとつ前のチームが準備にはいったところで、私達も楽器の最終確認。間もなくだ……。


「よし、準備開始!」

 前のチームの演奏が終わり、ステージからの撤収作業が始まった。

 それと併行して、うちの器材の運び込みとセッティング開始!

 このあたりは予行演習をしていたので、スムーズに進んだ。

 ……そして、私が司会役でチームの紹介をして、我がソサエティー本体組、演奏開始!


 曲は、地球のクラシックの名曲。

 映像なしで曲だけ何曲か聴かせて、投票で演奏曲を決定。そして耳コピで私以外のメンバーが譜面に書き起こし、練習したものだ。

 曲名は勝手に変えて、『天上の調しらべ』にしている。元の曲名は、この世界では意味不明なので……。


 当然のことながら、この世界では初公開となるため、観客達はこの曲を作曲したのは私達のうちの誰かだと思っている。

 だから、演奏技術は多少(つたな)くとも、曲の素晴らしさで充分カバーできるのだ。


 ……そして、当然のことながら、大好評! 拍手喝采、大騒ぎ!

 まあ、演奏とは関係なく、我がソサエティーは元々大人気だからね。

 それを、実際にその姿を目にすることができたというだけで、これくらいの反響は当然だろう。

 よしよし、PR効果は抜群だ!


 次は、いよいよ私にとっての大本命、本日のメインイベント、幼女組……、いやいや、幼年組のデビューだだだ!

 楽器の撤収も本体メンバーがハケることもなく、すっとステージ後方に下がり、中央から前方にかけての部分を空ける。

 そして、私の司会で、ソサエティー本体組の演奏は終わり、その次のチーム、ソサエティー幼年組の番であることを知らせた。……なのに本体組がステージ上からハケないのは、伴奏支援のため、と説明して。


「では、ソサエティー幼年組、でびゅー!!」

 私の声に、裾の方からステージ中央に駆け寄ってきた、幼年組のメンバー達。

 全員、お揃いの可愛いフリフリ衣装に、ネコミミカチューシャとシッポを装備!

 衣装は勿論、貴腐人店長が心血を注いで作った作品だ。

 さすがに数が多かったため手が足りず、同業者に応援を頼んだらしいけど……。

 そして……。


「さぁ、行くよ~! ワン、ツー、あワンツースリーフォー!」

 流れ始めたポップで軽快、かつ元気いっぱいな音楽……日本の有名アニメの劇中歌……に合わせて、息のあったダンスを披露する、幼年組の子供達。


 ……これは『演奏会』だって?

 い~んだよ、細けぇこたー!!

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― 新着の感想 ―
モルダウ、ジュピター、パッヘルベルのカノン、四季の春 アイネクライネ……想像するのも楽しいですね(^^) 1.2.1234. アニメだからヘビロテじゃないし……なんだろ?^^;
[一言] 曲名は勝手に変えて、『天上の調べ』にしている。 …元は何だったんだろう? こっちのクラシック…、 ワルキューレの騎行?運命?魔王?月光? ドラゴンクエスト?(最後のは単に趣味)
[気になる点] アニメ化の時は、この場面どうするんやろなあ…(ニヤニヤ) [一言] 少女隊ならぬ幼女隊か!
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