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259 誕生日 9

「……とにかく、だ」

 あああ、まだ話が続くのか……。

「どうしてくれるのだ?」

 いや、どうする、って言われても……。

 どどど、どうしよう……。

 ベアトリスちゃんは、心配そうに黙って見ているだけ。

 昨日のデビュタント・ボールの出来自体には充分満足してくれたらしいけれど、今の話はそれとは別物だ。そしてこれはこれから先の自分の人生に関わる話だということを充分に理解しているらしい。

 そう、ベアトリスちゃんは、『ボーゼス伯爵家当主と、雷の姫巫女の真面目な話し合い』に横から口出しをするほど愚かな子じゃない。

 うう……。

 ううう…………。

 ううううううう………………。


「あなた、ミツハを苛めるのはそれくらいにしておきなさいな……」

 おおお、ここでイリス様からの援護が!


「いや、私は何も苛めたりは……。ただ、少し懲らしめているだけだ!」

 ……あ、うん、『怒って、当たり散らしている』というわけじゃなくて、私のために『叱ってくれている』んだよね。それは、何となく分かってた。

「ごめんなさい……」


     *     *


 私が謝罪したので、それ以上は叱られることはなく、とりあえず話し合うべきことを話し合うことになった。

「……まぁ、婚約の申し込みは断れば済むことではある。王家の血を引く公爵家とかからのものもあるが、何、軍港関連が大変で今はそれどころではないとか、陞爵(しょうしゃく)の内示が出そうで今は動けないとか、聖女の任に就いてすぐに婚約・結婚したのでは女神に対して申し訳が立たないとか、全てはミツハのせいだとか、口実はどうとでもなる。

 そのうち他国の未婚の上位貴族や王族とかからも来るかもしれぬが、聖女をわざわざ他国にくれてやる馬鹿はいないだろうから、そっちは王宮が阻止するだろう。

 ……問題は……」


 あ~、『聖女疑惑』の方か……。

 神殿、上位貴族や王族とかが取り込もうとするよねぇ……。

 この国の王様や貴族達は比較的まともな人が多いし、聖女を力尽くで、なんて馬鹿はいないだろう。でも、悪気ではなく、善意で『聖女様をお迎えせねば!』とか言い出す連中が出るよねぇ。

 ……特に、神殿とか、神殿とか、神殿とか……。

 以前、私もかなり粘着されたんだ。名前を登録するだけでもいいから、巫女になってくれ、って。

 どうやら、救国の英雄、『雷の姫巫女様』のネームバリューを利用したかったらしい。

 そんな名義貸しの詐欺みたいなの、関わりたくないよ。


 いや、別に悪事を働こうとしたわけじゃないらしいんだけどね。ただ、寄進やら参拝者やらの増加を狙ったり、雷の姫巫女様グッズを売ったり、何やらイベントを行ったり、とかを考えていただけらしいけど……。

 要らんわ、そんなもん!


「このままベアトリスちゃんを『なんちゃって聖女』にしちゃうか、あれは私の国の娯楽用神器によるものだと説明して誤解を解くか……。

 それぞれに利点があり、欠点もありますよねぇ。

 そして、アレについては事前に私が予告していたから、私ががっつりと関わっていることは、みんなが知っているし……」

 そして、それでもアレが『女神の奇跡』だと思ってるんだよねぇ、みんな……。


「元々、一部の者を除き、一般の王都民にはミツハは女神にコネがあると思われておるからなぁ。

 そして、ミツハと縁(ゆかり)のあるベアトリスが聖女になるとなれば、ミツハが事前に女神からそれを知らされ、祝福の奇跡で王都民が驚き混乱せぬよう根回しを任されるというのは、何の不思議もないからな……」

 あ~……。

 そう、私に『女神様とのコネがある』と思っているから、私が『女神の神意を告げる』、つまり託宣を行った、と考えているわけだ。

 それなら、私が警告というか根回しというか、『事前に告知した』ということは、どの選択肢を選ぶにしても問題とはならないわけか……。

 ならば……。


「じゃ、スルーしましょう!」

「「「え?」」」

 この場に居る、私以外の全員、つまりボーゼス伯爵夫妻とベアトリスちゃんが、驚きの声を漏らした。

「別に、わざわざ正式声明を発表する必要はないですよね? 王都の人達はみんな、事実は自分の眼で確かめたわけですから、こちらからわざわざ説明しなくてもいいんじゃないですか?

 説明すれば、それが事実だと言い張らなければならないし、もし後になってバレたり矛盾が発生するとマズいでしょう?

 何も説明しなければ、こちらには何の責任も発生しませんよ。アレを観た人達が勝手に思い込んだことにまでは責任を負う必要はないですよね?」

「「「…………」」」

 そしてそれならば、『うちの娘のデビュタント・ボールにも、是非あの「花火」とやらを!』とか言ってねじ込まれる心配もない。『御自分で、女神にお願いしてください』と言えば済む。

 しばらく考えた末に私の説明に納得したらしき3人は、珍しく冴えたことを言った私に、こくりと頷いたのであった……。


「あ、でも、聞かれた場合はどう答えればいいの? さすがに、国王陛下や大司教様に聞かれたら、無視するわけにはいかないでしょう?」

 ベアトリスちゃんが、至極尤もなことを聞いてきた。

 うん、問題は、そこだ。

「……黙って、指で口にバッテンをして、『それ、秘密です!』とか言ってればいいんじゃないかな? そうすれば、女神様から口止めされているのかも、とか勝手に考えてくれて、それ以上突っ込めなくなるだろうから。

 あ、貴族や神殿関係者は聞いてくるかもしれないけれど、陛下や宰相様がそれを聞いてくることはないから、そこは大丈夫だよ」


 陛下と宰相様には、王宮を花火の打ち上げ場所に使わせてもらえるよう頼んだから、その時に花火については説明してある。当然、警備兵の皆さんにも……。

 だから、王宮関係者は、ある程度の人数は事実を知っている。これもまた、ベアトリスちゃんを聖女にでっちあげることができない理由のひとつだ。

 まぁ、聖女様なんて祭り上げられたら、まともな人生は歩めそうにないからねぇ。

 そういうのは、王太子殿下との結婚を狙う平民の少女とかに任せればいいよ、うん。

「……あれだけ派手に祝福の奇跡を起こしておいて、口止めも何もないでしょ! まるで、女神様が馬(ば)……少々思索能力にご不自由なさっているみたいじゃないの!」

 ベアトリスちゃんがそう言って文句を言ってきたけど……、うん、その通りだな……。

 でもまぁ、存在しない女神様が多少馬……『思索能力に不自由な方』と思われても、問題ない。

 表立って女神様を侮辱することができるような勇者はいないだろう。こういう文明レベル、宗教観で、しかも『女神の奇跡』が起きた後では。

 よし、これにて、一件落着!




「……で、第三王女殿下と第二王子殿下のための演(だ)し物は用意できるのであろうな、昨日のを遥かに上回るやつを……」

 うっ……。

 引き続き、次の、そして最大の問題が……。

「い、一応、『飛竜による空中演舞』、『地竜によるドラゴンブレス一斉発射』とかを考えてはいますけど……」

「「「なっ!!」」」

 伯爵様、イリス様、そしてベアトリスちゃんが、眼を剥いて絶句した。

 ……うん、大急ぎでさっき、色々と考えたのだ。


 前者は対潜哨戒機の編隊飛行、航空自衛隊の戦技研究班(ブルーインパルス)や米空軍のサンダーバーズのようなチームによる曲技(アクロバット)飛行、そしてスピーカーから最大音量で『ワルキューレの騎行』を流しながら飛ぶ戦闘ヘリの編隊とかを。

 事前に現地訓練をやるわけにはいかないから、曲技(アクロバット)飛行では地上目標の把握ができないけれど、事前に航空写真を撮ってチャートを作成してもらうか。高難易度の技はプログラムから外せば、何とかやってくれるだろう。……『その道のプロ』なんだからね。


 後者は戦車や自走砲、迫撃砲、誘導弾とかの、……まぁ、日本の総合火力演習を数十分の一にしたくらいのやつを考えてる。

 勿論、お願いするのは日本じゃなくて、融通が利く他国にするけれど。

 異世界懇談会(イセコン)のルートからどこかの国の軍に頼めば、おそらく引き受けてくれるはず。

 ……それなりの対価は要求されるだろうけど、ま、バケツ一杯の海水だとか、ハルキゲニアみたいなやつを2~3匹あげれば引き受けてくれるだろうと思う。


 そして、実はもうひとつ、今思い付いた必殺のアイディアがあるのだ。

 夜空にレーザーで絵を描く『レーザーショー』や、建物や空中に散布したガス、水の微粒子等をスクリーン代わりにした『プロジェクションマッピング』である。夜空にそびえるお城の外壁と、塔の尖端部から空中に特殊機材で水を撒布すれば、何とかなるんじゃなかろうか……。

 何、観客は初見の素人衆だ。多少粗(あら)が目立っても、問題ない。

 これで、みっつ。これだけ案があれば、何とか……。


「……そ、それは、王宮で実施できるものなのか?」

 あ……。

 飛行展示とレーザーショー、プロジェクションマッピングは大丈夫だろうけど、総合火力演習(ドラゴンブレス)は、絶対無理だ! どこかの広大な荒れ地にでも行かないと……。

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― 新着の感想 ―
王族だし国を見渡せる飛行機内でパーティーするとかダメなのかな 月にシェルター転移させて地球は青かったさせるのも面白そう
もう諦めてアレで打ち止めですしなよ。みつは
何時も楽しく読んでいます。 ルーヘン王子には、空手・合気道・柔道の試合と、殺陣で「一対一」と「一対多数」とかは? 後は、マグロの解体……まあ、これは「転スラ」でも使っているけど、本物の「マグロ」を使…
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