表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/518

207 ソサエティー大作戦 4

 盗賊達が伏兵を配しているかもしれないので、しばらくの間前後に付いて護衛した後、もう大丈夫だと判断して、撤収。

 もう領境は目の前であり、そこまで行けば領軍が護衛のために出迎えに来てくれているはずである。夜営は、領境を越え、領軍と合流した後となるらしいので、もう心配はないであろう。

 ……そう、自領の領民が盗賊のアルバイトをしないという保障は全くないし、援助物資を自領の領民達に強奪されたなどということになれば、領地の名が地に落ち、以後の物資輸送にも多大な影響が出る。領主として、決して起こしてはならない不祥事である。そりゃ、護衛の兵士くらい出すだろう。さすがに、他領に兵士を派遣すれば、別の意味で大問題になるが……。

 ま、下手に護衛のクルマを領軍に見られたり、私に会って話を、とかいうことになると面倒だから、早めに引き揚げた方がいいだろう。


 出発前に、輸送隊のみんなの前で演説をしたけれど、髪の色と長さをウィッグで誤魔化したし、声はスピーカーを介しているし、薄暗い夕闇の中で明滅する電飾玩具の色付きの明かりでおかしな感じに照らされただけの、しかも後ろ姿しか見えていない私の正体がバレるとは思えない。

 うん、ここに現れたのは、謎の御使い様だ。ヤマノ子爵家とは、何の関係もない。

 よし、転移!


     *     *


「聞いたか、おい! ウェンナール男爵領への援助物資輸送隊の話……」

「ああ、盗賊に襲われた時、御使い様が神兵を引き連れて現れ、賊を蹴散らしたって……。盗賊は全滅、輸送隊の被害ゼロ、って話だ。護衛に付いていた奴が酒場で喋っているのを直接聞いたから、間違いない!」

「少女達の想いが、女神のお心をも動かしたのか……。凄い、凄すぎるだろ……」

 最初の、つまり『ソサエティー』が用意した輸送隊が王都に戻り、そしてあっという間に噂が広まった。


     *     *


「ミツハさん、とんでもないことになってますよっ! 戻ってきた輸送隊と護衛の人達が英雄扱い、『ソサエティー』の御令嬢達は、聖女呼ばわりされてますよっっ!!」

 レフィリア貿易に顔を出すと、レフィリアが飛んできて、そんなことを叫びまくった。派手にツバを飛ばしながら……。

「お願い、ツバを飛ばさないで……」

「あ……」

 さすがに耐えきれずお願いすると、すぐに顔を赤らめて落ち着いてくれた、レフィリア。


「で、どういうことかな?」

 まぁ、聞かなくても大体のことは予想がつくけれど、『予想』と『事実』の擦り合わせを行うのは大事だ。

「は、はい、昨日輸送隊が帰還しまして、そ、その、往路で盗賊に襲われたところを御使い様と神兵様にお助け戴いたと……。

 眉唾物まゆつばものの話ですが、指揮官の商人を始め、全員が同じことを……。

 そして当然のことながら、仕事を終えて報酬を受け取った護衛や御者達が飲み屋に繰り出さないわけがなく、そしてそのような超特大ニュースを喋りまくらないわけもなく……」

 うん、想定の範囲内だ。

「そして、今朝の時点で王都のほぼ全域に噂が広まり、既にそのニュースをたずさえた商人達が各地へ散っていきましたから、国中に広まるには、ほんの数日もあれば……」

 ……う、うん、そ、想定の範囲内だ……。

 べ、別に、やり過ぎたかな、とか、大丈夫だろうか、とか心配して焦っているわけじゃない。うん……。

「ミツハ、自分に正直になろうよ……」

 コレットちゃん、どうしてそんなに私の考えていることが分かるのかな……。

「ちょっと、やりすぎましたあぁ~~!!」


     *     *


「ミツハさん、偽物パチモンが現れました!」

「え……」

 ちなみに、偽物パチモン非正規ルート品(バッタもん)については、以前レフィリアに説明したことがある。

 しかし、うちの商品の偽物なんか、こんなに早く作れるわけがない。一応は、それらしいものにする必要があるだろうに……。

「で、真似られたのは、どの商品? お酒? 高級食材? まさか、化粧品とかじゃあ……」

 化粧品は、ヤバい。

 いや、うちの儲けが、という意味じゃなくて、昔の化粧品には人体に有害なものが結構使われていたんだ。そんなのが、うちの商品の名前で出回ったら……。


「あ、いえ、現れた偽物パチモンは、商品ではなく、親睦団体の方です。

 とある侯爵家御令嬢が主宰する、貴族の御令嬢達の親睦団体『ソロリティ』。

 とある伯爵夫人が主宰する、同じく貴族の御婦人方の親睦団体、『勇敢ゆうかん倶楽部くらぶ』。男性達にも負けない、勇敢な御婦人方の集まりだそうですが……。

 共に、完全にミツハさんの『ソサエティー』のパクリですよっ!」


 あ~……。

 それは、文句は言えないなぁ……。

 自分達以外の親睦団体は認めない、パクリだ、なんて言えるはずがない。

 まぁ、『ソサエティー』の評判にあやかって、ということなんだろうけど、それは別に悪いことじゃないし、各々(おのおの)の自由だ。私達が文句を言える筋合いのものじゃないし、言うつもりもない。

 ま、仲良くやってね、と思うだけだ。


 よし、これで『ソサエティー』の方は大丈夫だ。

 世論を味方に付けた美少女達、しかも権力も財産もある貴族の少女達。敵に回そうとする者が現れるとは思えない。

 幸い、後発の『モドキ』が現れてくれたらしいから、『ソサエティー(うち)』のような団体の存在を危険視したり問題視したりしてどうこう、という話にもならないだろう。

 それらの団体は、おそらく本人達が発案したわけではなく、貴族家当主が企画して妻や娘にやらせたものだろう。そして、もしうちにその手のクレームを付けようとすれば、全ての親睦団体の関係者全体を攻撃することになる。うちと違って、ガチガチの上級貴族ばかりで固められた団体の関係者達、全てを……。

 そう、この手の団体の存在がおおやけに認められたに等しい、というわけだ。

 そしてその事実は、『ソサエティー』以外の、他の団体が潰れ、解散しても変わらない。


 他の団体は、おそらくうちのような『揉め事を起こさないであろう者』という条件での人選ではなく、ただ単に上級貴族家の者であり権力者の家族であること、というような選考基準なのであろう。

 ……そう、それは自己顕示欲、承認欲求、そしてお金や利権に食らい付くような連中が大勢含まれているということだ。

 運営資金や珍しい品々、美味しい食べ物を無償提供し、有料とはいえヤマノ子爵領産の商品を優先的に購入でき、その他にも様々な特典があり、……そして窮地には互いに無償で、いや、それどころか、自らの持ち物を売り払ってでも助け合う、真の仲間達。

『ソサエティー』のそういう噂が流れる中で、他の親睦団体に勧誘されて加入した者達が、自分が入った親睦団体の居心地やメリット等についてどう思い、どう感じるか。

 うん、レフィリア貿易もヤマノ子爵領も関わらない普通の親睦団体で、名声目当て、利害関係バリバリの皆さんが仲良くやれることをお祈りしておこう……。


     *     *


「ん?」

「どうかしたの?」

 思わず声を出した私に、コレットちゃんがそう聞いてきた。

「いや、何でもないよ。ちょっと、書類に知らない名前が出てきたから疑問に思っただけだよ」

「なんだ……」

 そう言って、再び読書に戻るコレットちゃん。読んでいる本は、日本の小学生高学年向けの小説。

 ……うん、もう、そんなところまで日本語の勉強が進んでいるんだ。英語と新大陸の言葉、そしてその他の色々な家臣教育と日本の教材による数学や物理学、その他諸々の勉強をしながら……。

 天才かっっ!!

 多分、もう既にコレットちゃんはサビーネちゃんを遥かに上回る知識を身に付けている。

 もし私の身に何かあった場合には、コレットちゃんを参謀として雇ってもらえるよう、サビーネちゃんに根回ししておこうかな……。

 私が死んだからといって、コレットちゃんを元のあの田舎村で埋もれさせるには、あまりにも勿体ない。

 ……というか、もう既に、コレットちゃんはあんな村では暮らせない身体になっちゃってるだろうからねぇ。

 そう、アレだ。

 贅沢は、『素』敵だ!

 人間、一度味わった贅沢は捨てられない。

 ……ってやつ。

 いや、ゴメン……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] とん!とん! 「回覧板ですよ」 とん! 「はーい」 からり、と、 『スパイに気をつけよう!あやしい奴を見かけたら告発を!』 隣組 (「〇丁目の△□さん、空襲警報の時に明かりがついたままだった…
[一言] 贅沢は、『素』敵だ! 40年以上前の雑誌ブルータスの表紙にも同じフレーズがありました。 懐かしいです。
[一言] ソロリティーだなんて、入ったら婚期が遠退きそうですね…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ