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女子高生とライブ

「皆さーんっ! 今日はぁ、ありがとうございまーす! 沢山楽しんでいってぇ、くださいねーっ!」


 会場中に響いた声に、ワァァァァと割れんばかりの歓声が沸いた。暗い会場では、緑色の光が無数に揺れて幻想的な景色を作り出している。

 ここは歌姫ロチェスのライブ会場。何万人という数のファンがその歌声に熱狂していた。

 セレスはその何万人の中の一人。七段階に色を変えられるペンライトを緑色に光らせて両手に持ち、曲に合わせて振りながら、歓喜のあまりその瞳にはうっすらと涙を滲ませていた。


「えっ……泣いてるの……?」


 その姿を横目に見て引き気味に尋ねるのは、そんなセレスに無理矢理つれてこられたクリム。ロチェスの熱狂的なファンではないクリムは、親友のそんな姿を到底信じることは出来なかった。

 尚、今のセレスにはクリムの声は聞こえていない。その耳はロチェスの声とその後ろで奏でられる音楽だけを広い、その目は緑色のドレスに身を包み、ステージ上を走り回るロチェスのみを映していた。そして、その事をクリムは承知している。


「それじゃあ、次の曲ー、いっきまーす!」


 ロチェスの声を合図に曲が流れ出す。それを聞いた会場はより一層盛り上がった。

 次の曲はロチェスの代表曲。これを聞かずしてファンは名乗れない。


「『気付いて欲しくて、見て欲しくて

 だけど君の目は僕を透かしているの

 仕方がないと諦めて、言い聞かせて

 なのに胸がこんなに痛むのは何故?』」


 それはロチェス自身の恋を歌った失恋ソング。だがしんみりとした曲調ではなく、アップテンポでロックなやや激しい曲だ。


「『明けない夜は無いと言う

 いつか努力は報われるなんて

 そうじゃない、そうじゃない

 今すぐ明けて、今すぐ報われて


 君の横顔、君の瞳

 追いかけた視線、反らした未来

 胸の痛みは消えなくて

 嗚呼、こんなにも苦しいのなら……!』」


 曲は終盤に入り一段と激しさを増す。と、同時に会場中のペンライトが緑から赤へ、草原の中に赤い花が咲き乱れるように変化していく。『これが唯一、ファンである私たちに出来ることなんだよ』と、ライブ前にセレスは語っていた。


「『あの日々の君は遥か彼方へ

 抱いた想いは過去へと消えて

 あの日々の僕も消えてしまった

 淡い記憶のひとかけら残して──』」


 そうして曲が終わる。演出として、ロチェス自身も闇の中へ消えていった。会場に残ったのは、消えることのない真っ赤な光と鳴り止まない歓声。

 それから少し間をおいて、突然ステージから真っ白な光を放つ花火が噴射された。

 その光と共に飛び出してきたのは、黒いドレスに身を包んだロチェス。流れ出したのは、この会場にいる誰もがまだ聞いたことのない曲。


「『あの日のキオクにさよなら告げて

 いつかの僕を救い出せ


 瓦礫から芽吹いた光、バラバラの欠片を繋いで

 戻らないキオクの中、一筋の道探している

 白も黒も赤もすべて、信念も誇りも

 奪い合い、騙し合い、傷ついて傷つけていく


 あの日のキオクに背を向け逃げて

 いつかの僕に怯えてる

 あれもこれも投げ出せたなら

 こんな世界にはなってない!


 輪郭のボヤけたシルシ、ボロボロのココロに沈んで

 砕けない時間の中、一夜の夢刻んでいる

 儚い笑顔の傷だらけの君が、僕に向かって語りかける

 小さな背中は傷だらけの僕で、いつかの君を救えたなら……


 あの日のキオクにさよなら告げて

 いつかの僕を救い出せ

 過去も未来も抱き締めたなら

 きっと世界を創り出す


 この世界は残酷で、神様さえも弄ぶ

 それでも僕らは戦う。大切なもの守り抜くため

 白でもいい黒でもいい。赤になろう、何にでも

 信念と誇りを。貫いて誓うんだ


 あの日のキオクに背を向け逃げて

 いつかの僕に怯えてる

 あれもこれも投げ出せたなら

 こんな世界にはなってない!


 さあ、あの日の僕らにおやすみ告げて

 いつかの君に会いに行く

 夢も現も交ぜ込んだなら

 きっと結末を描き出す──』」


 今までロチェスが歌ってきたものとはまた少し違った雰囲気の新曲。歌い終わると、会場がざわつき始めた。これは、この曲は……


「とうとうー、アニメの主題歌を歌うことになりましたー!」


 そう。新曲は次期アニメの主題歌となった曲だったのだ。今までタイアップのなかったロチェスは新境地へ足を踏み入れたことになる。


「毎週、ロチェス様の曲が聞ける……!」


 そして、これをきっかけに、いちファンであるセレスはアニメの世界へと足を踏み入れたのだった。

 それにクリムが巻き込まれるのは、少し時が流れてからの話。

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