初めての
「俺は…俺と妹はな……すっごい心配したんだぞ!俺なんかはまた親友を失くす所だったんだ!!」
物凄いド迫力で怒鳴り散らして、晴を一発ビンタした。
「ごめんな、海……」
その直後に弓子が俺の顔をグーで殴ってきた。
「はぁっ?!」
「はぁっ?!じゃないわよ!!晴くんは病人なんだよ?なんで思いっきり叩いてるのよっ」
「俺はパーで叩いた、弓子お前はグーだ。今のはどっちが悪い?何で俺が殴られなきゃいけないんだよ」
初めての兄妹喧嘩。
「ふんっお兄ちゃんなんか大嫌い!あんたなんかお兄ちゃんじゃないしねっ」
その最後の言葉にカチンと来た。
「あぁあぁ、そーですか!じゃあもう送り迎えもしないしお前の分の家事もしないからな。さっさとこの部屋から出ていけ。二度と面見せんな」
妹は泣きそうになって部屋から出て行った。言いすぎたか……?
「海、言いすぎたんじゃないか?」
晴が申し訳なさそうに口を開く。
「知らん」
晴は時間になると家に帰って行った。俺の家から出るときは必ず左右左を見ることにした。
その日の夜、晃さんには弓子をあまり怒らないでくれと頼まれた。晃さんは娘をあまり叱ったことがなかったのだ。精神的に苦痛を与えたくないというのだ。
「はい……わかりました。以後気をつけます」
そう言うしかなかった。
仲直りは俺からしなきゃいけないのか?
俺は家では孤独だ。
母さんも新しい彼に夢中だし、俺なんか可愛がってもらえないし。
夕飯の時間になっても弓子はリビングにおりてこない。
俺は謝りに部屋まで行った。
「弓子、俺が悪かった。仲直りしよう」
部屋のドアを開けたら弓子がいなかった。
「弓子っ!」
部屋の窓があいていた。
ここから出て行ったのか……
俺が悪かった。
ごめん。
俺は駆け足でリビングに降りて親に声もかけずに出て行った。
「弓子、どこ行ったんだ……」
探す当てもなく、行きそうな所を探す。
一時間探しても見つからない。
俺の頭の中に何かが過った。
ーーー晴……
「晴の家かっ……」
俺は晴の家に向かってチャイムも鳴らさずにドアを開けた。失礼なことだとは思っている。
「海、どうした?」
晴はビックリしたような様子で俺の顔をみた。一人、リビングでご飯を食べていた。
「弓子、来てないか?」
「ん?いや、来てないぞ。弓子ちゃんどうかしたのか?」
俺の慌てような振りを見て察したようだ。
「弓子ちゃん居なくなったのか?」
「あぁ、そうなんだ。もしここに来たら俺に連絡をしてくれ!」
「あぁ……わかった」
俺はまた弓子を探し出すために走り出した。
「弓子、どこ行ったんだよ……」
弓子は俺が知らない所に居た。
今日は見つけられなかった。
いつの間にか朝になっていた。
晃さんに合わせる顔がない……
ーどこなんだよ……