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ーーードンッ


「え……?」

ずっと見ていた俺にさえ何が起こったのかわからない。


何分か経ってから我に返った。目の前に幼馴染の晴哉が倒れている。血を流して倒れている。

「晴っ!!」

ここは滅多に車が通らない住宅街。 しかし、後から聞いた話だとつい先ほどすぐ近くで銀行強盗があったらしい。犯人は黒い車に乗って逃走しこの20キロで走行しなければならないところを80キロ程のスピードで走っていたことが分かった。俺は晴の頭を腕に乗せ、必死に晴の名前を呼んだ。

「晴!晴っ!」

もう友達を失いたくない。晴だけは死なせない。晴のうちは共働きでいまは誰も居なかった。携帯電話で救急車を呼ぶ。

「海弥……俺…弓子ちゃんのことが……好きだ……」

「あ、ああ、わかってる。お前のことなんてわかってる!喋るな!ちゃんと伝えておくから!」

こういう時はどうすればっ……。

野次馬たちが次々に来る。昔良く遊びに行ったばーば。"ユリバァ"と呼んでいる。

「晴ちゃん……どうしたんだい?大丈夫かい??」

ユリバァは買い物帰りに目に入ったらしい。俺たちのおばあちゃんではないけど昔からの友人と言うかご近所さん。

「ユリバァ……晴は悪くない。あの車が悪いんだ」

そんなことボケた人でも分かるさ。

「どいてくださいっ、どいて!」

野次馬をどかして15分経ってやっと救急車がきてくれた。俺は保護者ではないがついていくことにした。晴のことは親のようになんでも知っている。

「俺は…もう親友を失いたくない……」

救急車の中でそうぼやいた。

そう、もう一人女の子の親友がいた。その子も幼稚園からのお友達で毎日一緒だった。しかし死の病に侵され治療や精神的に苦しめられ、病院の屋上から飛び降り自殺をした。それはもう10年くらいも前の話だ。なんで俺だけこんなに元気なんだ……?俺と関わる友達は全員死んでしまうのか……?

「俺は死なない、大丈夫……裕美(ゆみ)のようにはならない」

晴は必死にそう言い聞かせた。俺を心配させないようにって。俺はまだ泣かない。絶対に裕美の時のようには泣かない。

お医者さんが晴を受け入れてくれて手術室に入った。中ではどんな手術が行われているんだろうか。俺は慌てて飛び出してきたわけで、妹を放ったらかしていたのを落ち着いたときに思い出した。すぐに携帯電話でうちに電話をかける。

「あ、弓子か……?落ち着いて話を聞けよ?」

小さな声で今病院にいるんだ。と告げた。弓子は勘違いしたのか俺になにかあったと思いこんでいる。

「違う、聞いてくれ……さっきまで一緒にいた晴が俺の目の前で交通事故に合ってな」

「えっ?!」

無理もない。弓子も晴のことが好きだからな。俺は2人が両思いなことを知っている。

「病院の名前はな……」


ーー40分後

弓子はすぐに来た。それでもまだ手術は終わらない。

「早いな。ココアでも飲むか?」

「うん……お兄ちゃん、晴くんの容態は?」

弓子は息を切らしながら言う。とても急いで来たんだな。

「まだわからん。お前……晴のこと、好き…か?」

弓子はその質問の応え方に戸惑ったみたいだ。俺の親友でもある、俺と弓子は兄妹ではあるが血は繋がっていない。

「わかんない……」

まあ、いまこんな状況だしな。その応えが正しいとおもう。


ー夜中1時頃

晴のご両親がやっと来た。

「海弥くんありがとね。晴、貴方が居ればとても心強いとおもうのよ」

……ふざけんなよ。そりゃ、俺は昔からの親友だしいつも一緒にいたが一番一緒にいてほしいのは両親だろ!

実はそう叫びたかった。だがそうするとギクシャクしてしまうかと思って出来なかった。

手術は6時間にも及んだ。先生と晴が手術室から出てきた。

「先生っ晴の手術はっ?」

一番先に叫んだのは俺だった。

「手術は成功しました、しかし……」


俺は、耳を疑った。


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