俺と親友の友情
「なあ、お前んとこ高級車あったよな!」
こいつは俺の幼馴染であり親友でもある。名前は亜矢崎晴哉といい、黒メガネをしていて背が高く、いわゆるイケメンというやつである。
教室に入ると同時にいきなり話しかけられた。挨拶も無しにな。俺は3-Aでこんなんでも一応特進クラスに所属している。そう、こいつは車が大好きで昔から詳しい。うちがお向かいさんだからすぐに見えたのだろう。
「いんや、そんなの買って無いぞ?見間違えじゃないか?」
この俺が見間違える筈はない。という顔をしているのでクラスメートがあまり居ない場所、屋上へ連れ出した。
「実はな……俺の母さんはお金持ちと再婚したんだ」
この事はクラスメートには言っていない。仲が良いお前だけにしか言っていない。晴哉の通称は晴。晴は驚いた顔をしていた。当たり前だよな。寧ろ聞いた時は俺のが驚いたわ。
「妹も出来たんだ……」
「そうだったのか。色々大変なんだな。悪かったよ、車の事大声で言ってしまって」
晴は俺のが肩に手をついて頭を下げた。そんな事しなくていい。
「水くせぇな〜そんな事すんなよ〜」
俺は笑ってみせた。俺たちの友情は一生切れないだろう、とこの時感じた。
「この事はクラスメートに知られたくないんだ」
そろそろホームルーム始まるなと言いながら屋上をあとにする。
俺は授業が終わったらすぐに妹のお迎えに行く。それに晴も着いて行きたいというのだ。仕方ないので後部座席に乗せた。晴はとても興奮しているようだ。
「あ、ここ……あの有名な禄之桜花女子校じゃないか」
「ああ、そうだよ。俺の妹はここの中等部にいる」
晴もやはり“すげ〜”という顔をしている。普通に見たらみんな驚くだろうな。
「お兄ちゃんお待たせ〜」
「おう、乗れ乗れ!あ、こいつ俺の親友なんだ」
弓子が座った途端に自己紹介が始まり、弓子は後部座席の方を向いて、
「初めまして!戸根澤弓子と申します!どうかお見知り置きを」
と、頭を下げてお嬢様風に言う。
「は、初めましてっ!亜矢崎晴哉と申します!!」
なんか元気が良いなこいつ。
「さあ、帰るか」
車を走らせること15分。うちに着き、晴を自分のうちに帰そうとしたが遊びに来るという。晴には俺の本性ということは知ってもらっている。
「なあ、海弥。お前可愛い妹さんもらったな。あの子共学に行けばモテモテだぜ」
待て待て。人の妹に手を出すのか?それは許さんぞ?いくら血が繋がっていないと言っても。
「お前、狙ったりしてないだろうな?」
「いやいやまさか!!友達の妹には手なんて出せませんよっ」
何かを察したのか手を横に振り、そう応える。
ートントン
と、俺の部屋のドアを叩く音が聞こえる。
「はーい」
「お兄ちゃん、お茶持ってきたよ」
俺は妹に晴は"コーヒーが好きだ"と伝え持ってきてもらった。女子なら普通そうするだろ?こいつは違うんだ。なにひとつ家事をやらずなにひとつ女らしいことをやらない。これじゃダメだと思ったからやらせたんだ。後でアイスのハーベンダッツ奢りという条件付きでな。
「ありがとう、君は優しいね。いただきます」
晴は一口飲んで「美味しい」とにっこり笑って言った。弓子はこの晴の言葉に照れたのか赤面していた。これで少しやってくれるようになったらありがたいんだけどな。俺にばっかり家事が向いてくるからな。
「そ、それじゃーねお兄ちゃん!」
何故かとても慌てて晴に「ごゆっくり♪」と伝え、部屋から出て行った。男には晴の魅力なんてこれっぽっちも分かりやしない。妹【女の子】にはイケメン何だろうなぁ。
「なぁ、ところで試験勉強してるのか?」
「あぁ。し始めてるよ。この前母さんにフィギュア投げられたからな」
高3から勉強を始めた俺はクラストップを守りつつも、遅れを取っていた。
「そうか。また同じ大学に入れれば良いよな〜。変な意味じゃなくてよ?幼稚園の時からの友達だから家族みたいなんだよなお前とは」
「ああ、そーだなぁ。喧嘩もしたことあったっけ」
昔の友人が側にいると昔を思い出す。当たり前なんだろうか。色々な事を思い出していたらあっという間に時間が過ぎて行った。
「じゃあ、俺帰るわ。お邪魔しました〜」
「また学校でなー」
晴は手を振って目の前にある自分ちへ向かって行った。靴がきちんと履けていなかったのか道路を出たあたりで靴をきちんと履く。
妹はまだ照れているのか部屋に篭ったままだった。
ーーードンッ
「え……?」
ずっと見ていた俺にさえ何が起こったのかわからない。