俺たちの日常
なにかが俺のベッドに潜り込んで来た。なんなんだ?一体。早く正体を現せ!
「お兄ちゃん」
「え?」
妹、なのか?確かに弓子のように髪の毛が長くて黒い。声も聞き覚えはある。
「弓子、なのか……?」
恐る恐る声をかけてみる。
「お兄ちゃん!びっくりした?」
弓子はルンルン気分になっていた。
「そりゃ、びっくりしたわ!」
俺を驚かせようとしていたみたいだった。俺は当たり前なことを言わせるなと言う。
「なにしてんのー?拗ねてんのー?」
くそ……馬鹿にしやがって。真っ暗だったのが部屋が明るくなった。眩しい……とにかく俺には関わらないでくれ。と、本当は言いたい。
そんなこと言ったら弓子は大泣きするだろう。いや、しないか?今日初めて出会ったんだから性格なんて分からない。分かるもんか。
「お兄ちゃんが居なくなったら…やだよ……」
弓子が何かを察したのか。そんなことを言い始めた。
「……居なくならないよ」
心配かけまいと嘘をつく。今すぐにはでていかない。が、そのうちは。
俺はその後の記憶がまったくない。眠ってしまったようだ。
ーー翌朝
俺の左に気配を感じる。そーっと左を見てみると……
「ぎゃああぁああぁあああぁあ‼」
「えっ?なになに?!」
「なになに?!じゃねーよ!こっちが聞きたいわ!なんでお前がここで寝てるんだよ……?あぁん?」
俺は上目遣いみたいで弓子を睨む。俺の大声で弓子はとても驚いていたようだ。自分の胸を撫で下ろしている。
「え、だって、お兄ちゃん先に寝ちゃうんだもん。つまんなくて横になりながらお兄ちゃん観察してたら寝ちゃったみたい」
観察ってなんなんだよ。俺はずっと見られていたのか?
弓子は「怒らないで……」と言わんばかりの顔をしている。
時計を見たら7時。弓子はそう、中学生なのだ。中学2年生。中学はあの有名なお金持ち学校。
禄之桜花女子中学部高等部俺は免許を持っている。車は高級車がうちにはある。そりゃ晃さんのだけど弓子の送り迎えは俺に任された。一度こんな高級車を運転してみたかったんだよな。弓子は可愛らしい制服に着替え朝ごはんを食べにリビングに行った。晃さんはすでに仕事に行っている。俺の母さんは朝ごはんを作ってからまた眠ったみたいだ。
「いただきます」
手を合わせて挨拶をする弓子。髪型も床に付きそうなくらい長く、二つ結びにしてまさにお嬢様学校のような雰囲気が漂った。
朝ごはんは母親の手作りをほとんど食べたことがないようだ。晃さんの奥さんは病で倒れ亡くなったそうだ。弓子はほとんど母親の愛情を知らない。俺だって父親の愛情なんか受けたことない。
俺は高校は弓子を送ってから行く。その時は勿論俺も制服だ。俺の高校は至って普通。しかし私立なんだぞ!母親が頑張って俺を育ててくれたんだ。最初はその期待に応えてお金ではなく試験の点数で入学した。制服代、体操着代、入学費、給食費、全て無料で入学させてもらった。入学してから友達にアニメを進められて見るようになった。二年までは普通に学年トップで行けたが今回は危うい。
とかなんとか考えていたら弓子に話しかけられた。
「私、もう行くけど」
「あ、ああ、ごめん」
もう食べ終わっていたみたいだった。俺はほとんど食べずに車を出す。
「私の学校知ってるの?」
「そりゃあな。有名だからな」
この街に住んでいればいずれ耳に入ってくる。
禄之桜花は百合校とも言われている。
学校に到着した。
妹は「お兄ちゃんありがと」と言ってそそくさと車から降りた。
「あ、あぁ……」
学校の大きさに俺は驚きを隠せなかった。東京ドーム2,3個分くらいありそうなくらいだ……
お、俺も急がないと遅刻する!
時間に気がついた俺はすぐに家に戻り自転車で学校へ向かった。
「はぁはぁ……はぁ……」