俺と母さんの心境の変化
俺は若林海弥18歳高校3年生になる。今年、大学受験生だがアニメを観たりゲームやエロゲをしたりと忙しい日々を送っている。部屋にはポスターやフィギュアがたくさんある。たくさんあるが汚くはしていない。宝物だからな。ハタキを使って毎日磨いたりしている。そんな俺が受験生だと?勉強なんかしている暇なんてないのだ。しかし母さんがついに堪忍袋の尾がきれたみたいで、勉強しないとこんなの捨ててやると大切な大切なフィギュアちゃんを一体床に投げつけたのだ。捨てられるのは困るし投げつけたのも困る。しかたなく机に向かう。俺の机にはフィギュアがガラスケースに入って置いてある。
フィギュアを眺めながら勉強。
「なんて幸せなんだぁあぁぁあ!」
なんで今までこうしてやってこなかったんだろうか。勉強もできて一石二鳥じゃないか。
俺は一人舞い上がっていた。ふと部屋のドアから視線を感じる。恐る恐る振り返ると……可愛らしい女の子がずっと俺の方を見ていた。
「誰…?」
俺は不安気に話しかける。
「……なにも聞かされてないの?」
なにもってなんだよ。なにも知らんよ俺は。それより先に名乗れ!
「お兄ちゃん」
「…え?」
「お兄ちゃん」
「……え?」
何度も繰り返す。しばらくすると我に返った。
「えぇぇえぇえぇぇっっ?!」
どういうことだ?母さん?貴女は一体なにを考えていらっしゃる?俺は急いで女の子を連れて母さんがいるリビングに向かった。
「どういうことだよ母さんっ」
「あれ?言ってなかったかしら?」
と、呑気に料理をしている。リビングにはもう一人知らない人がいた。男性だ。
そう、母さんは5年前くらいに俺の父さんと離婚をしていた。母子家庭だった。今の再婚相手と娘さんの話を何も聞かされてない上に会わせてももらっていなかったから俺は口をあんぐりと開けていた。
「私の名前は弓子。よろしくね変態お兄ちゃん」
「こらこら、弓子。そんな風に言ったらダメだろ。ご挨拶が遅れました私、戸根澤晃と申します」
これが妹というやつか。一人っ子だった俺には好都合だが、ちょっとだけウザい。
ん?待て。再婚ということは苗字が変わるんだよな?戸根澤海弥になるのか。なんか慣れるまでは変だな。この人はお医者さんをしていてかなり稼いでいるらしい。母さんはパートをしていたがそのお陰でしなくても良くなった。俺も裕福な家庭に恵まれることになった。
一通り自己紹介も済んだ所で夕食の準備が出来たみたいだ。母さんは俺なんかより弓子の方が可愛いのだ。三人で楽しそうに会話をしている。他所の子に負けてしまうという悲しさ。俺は居ない方がいいのか?急いでご飯を食べ食器を片し、部屋に戻ろうとした。
「あ、海弥~お風呂沸かして来てちょうだい」
母さんの一言でなんか俺の頭がおかしくなってしまった。なにも会話をしないで早くここから抜け出したかったのに。
「なんなんだよ……俺なんか邪魔なんだろ?消えてやるよっ消えりゃいいんだろ?!」
俺は母さんの頼みごとを聞かずに自分の部屋に走って行った。
「くそっくそ……くそっ」
俺はベッドに潜り込んでマクラを殴っていた。
母さんを取られたのが悔しくて仕方なかった。いや、別にマザコンとかではない。そういう意味で言ったのではない。ただただ悔しかったのだ。受験生の息子がいるというのにも関わらず母さんは他の男とイチャコラしていたのか。勉強なんてしてなかったけどそういうことならとても腹が立った。
俺は決意した。ここから出て行く。こんなマンションから出て行ってやる。
決意をしたのは良いが、このフィギュアたちどうやってどこに運べば良いのだ。友達のうちに行くのは有りだがこんなにあると迷惑だろうし……一人暮らしするお金なんてないし。
部屋を暗くして考え込んでいたら部屋のドアが開いた気がした。
だれだ?
暗くてなにも見えない。
少しだけ恐いから息を潜めた。