表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

墓荒らし

作者: 潮路


 僕は故あって15年ぶりに、自分の母校である市立第三小学校に来ている。


 夜の闇に紛れるように、全身黒ずくめ。まあ、ばれると困ることだからね。


「ああ、ここだここだ」


 懐中電灯で照らした先には、「2013.2 6年3組開封予定」と書かれた看板。

 鶏小屋の奥、空き地のスペースに置かれたその木製の看板は、何を隠そう、タイムカプセルがそこの下にあることを示している。

 

 手に持ったスコップを使って、看板のすぐ下を掘っていく。

 数分ほどかかって、土の感触とは違う、カツンという音。


…本当はこんなことやっちゃいけないんだろうけど、これは僕の名誉の為なのだ。


 

 僕は小学生の頃、随分とマセガキを演じていた。

 先生には「どうして人間は生きていかなければならないか」なんてくだらない質問を毎日のようにしたし、

  

 勉強なんて必要ないとか、友達なんて必要ないとか、今となっては非常に恥ずかしい思想も持っていた。

 

 当然、タイムカプセルを埋める日も、無関心を装って休んでしまった。


 中学生、高校生、大学生、社会人と経て、そのことが後悔に変わったのは、何も不自然ではないはずだ。

 そして現在、同窓会の幹事を担当するまでに至ったわけである。

 

 至ったのはよかったものの、幹事とあろう者がタイムカプセルに何も入れていなかった…なんてあまりにも虚しいと感じたため、緊急策としてこのような外法を取らせてもらった。



 しかし、実際来てみると、随分異様な空間だというのがわかる。

 開封予定日の看板は、等間隔で並べられており、僕らのタイムカプセルの右隣には、「2014.2 6年3組開封予定」、その右には「2015.2 6年3組開封予定」の看板が置かれている。今日の昼に、今年分のタイムカプセルも埋めたと聞いたため、おそらく「2028.2 6年3組開封予定」の看板もあるのだろう。


 更に言うならば、左隣には「2012.2 6年3組開封予定」の看板がある。すでに掘られていて、タイムカプセル自体は取り出されてはいるものの、看板だけはそのまま残してあるらしい。

 当然、その左には…説明する必要もないだろう。


 前には、「2013.2 6年2組開封予定」の看板、後には「2013.2 6年4組開封予定」の看板。

 このように、市立第三小学校にはタイムカプセルの看板がぎっしり立っている。

 


 さて、いよいよタイムカプセルを開封する。ガムテープが厳重に貼られており、非常に苦労する。

 

 バリバリバリバリ 


 で、肝心のタイムカプセルは非常に軽い。マセガキの僕と、クラスのいじめられっ子で終盤不登校だった奴を除いても30個くらいのグッズは入っているはずだ。そこそこ重くないとおかしいのだが。


 タイムカプセルの中身を確認する。


…白い棒状のものに、マジックペンで落書きが書かれている。

 落書きの中には油性マジックで「チクリ魔」「最低野郎」などの暴言が含まれており、書いた人の名前が殴り書きにされている。


 背中に嫌な汗が流れていく。そしてその予感は、白い棒についている赤いシミを見て確証に変わった。


「これって、ほ…骨…」


 

 他のタイムカプセルも掘り進めていく。出てくるのは大小様々な骨。しかも埋めた年が最近になればなるほど、臭いもひどいものになっていく。


(そういえば今日の昼に、今年の分も埋めたって言ってたな…) 


…となれば、確かめるしかない。推測が正しければ、おそらく生々しい死体が埋まっているはずである。


 墓荒らしの罪に気が重くなりつつも、発掘作業を開始する。



 しかし、今年分のタイムカプセルには、ガムテープが貼られていなかった。

 中身を開けても、何も入っていない。どういうことなんだ…?


「これから入れるんだよ」


 後ろから、小学生の声を聞いた。



 翌日。幹事抜きで、予定通り同窓会は行われた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ