12人目『つまづく男』
「あっ!!」
ドテッ
「イテテテテッ」
またつまづいてしまった。
俺って何でこんなにつまづくんだ?
昔からそうだ。
一日に一回は必ずつまづいてる。
足場の悪いところはもちろん平坦な道でも平気でつまづく。
なんでだ?
「歩き方が悪いんだよ」
前々からわかってたみたいに言ったのは俺の友人だ。
「お前はしっかりと地面に立ってない。両足でちゃんと地面に立て」
「そうか?俺はちゃんと立ってると思うけどなあ」
「それにお前は前ばかり見ている。前ばっか見てるから足元の石ころに気づかないんだ」
「でもよう。そうすると電信柱とかに頭直撃するんだよなあ」
「足元ばかりを見ろといってるわけじゃない。前も見て、なおかつ足元に意識を持って歩く。そうすればつまづかない」
「そうかなあ」
「それとだ。砂利道みたいにつまづきそうな場所なら小股でゆっくりと慎重に歩け。平坦で安全そうな道だったら大股でしっかりと歩け。その道その道の歩き方で歩け」
「でもよお。俺ってばどこでも転ぶからどこでもゆっくり歩かないとダメって事になっちゃわない?」
「だったら早く家を出るまでだ。ゆっくり行くってわかってんだからそのために準備してればなんの問題もないだろう。それに、歩き続ければ絶対に目的地まで着くんだから」
「それだと朝もっと早く起きなきゃだめなのかあ。つらいなあ」
「っていうか。つまづいたって別にいいだろ」
「どうして」
ドテッ!!
「イテテテテ」
助言してもらってもやっぱりつまづく。
多分俺はこれからもつまづきっぱなしの人生なんだろうな。
でも、あいつの言うとおり。
つまづいたら
―立ち上がればいい―