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男達  作者: N澤巧T郎
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52人目『悩む男』

最近息子の様子がおかしい。


学校から帰ってっくると、すかさず「はあ……」と、ため息をつくのだ。


そんなこと今までなかったのに、一体どうしたというのだろうか。


ガチャッ


「ただいまあ。はあ……」


ほら、やっぱりため息だ。


一体どうしたのだ我が息子よ。


何か悩み事でもあるのか?


「いってきまあす」


ガタンッ


でも普通に遊びには行くんだよなあこれが。


う〜む。


一緒に風呂でも入って聞きだしてみるか。


こういうときはお互い裸になって話すのが一番だからな、うん。


「今日はお父さんとお風呂に入ろうか」


「うん。いいよ。はあ……」


う〜む。


これはかなり深刻な悩みに違いない。


心してかからねばならん。


ザパーン


「ふう。いい湯だあ」


「はあ……」


むむむっ。


体を洗っていてもため息ですか。


ここは無理に聞き出そうとはせずに、周りから攻めていくことにしよう。


「どうだ、最近学校は、楽しいか?」


やっぱり子供の悩みといえば学校にあるはずだ。


「普通だよ。楽しいよ」


「あ、そうか。ならいいんだよ」


う〜む。


違ったか。


なら、これならどうだ?


「友達とは仲よくやってるか?」


「うん。仲良いよ」


う〜ん。


そりゃそうだよなあ。


だって今日も遊びに行ってんだもんなあ。


ん〜。


そうかっ!!


アレか?


「どうだ。好きな子の一人や二人、できたんじゃないのか?ん?どうなんだ?そこらへんは。ん?」


あのため息は、恋の病に違いない。


さあ息子よ。


遠慮せずに話して御覧。


「ええ?好きな子〜?ん〜よくわかんないよ。今はみんなと遊んでるのが一番楽しいから」


違ったか……。


「ん。ん。ならいいんだ。ん。楽しいのが一番だ。ん」


さて、どうしたものか。


これは直接聞くしかないか?


でもなあ……。


「はあ……」


そうだな。


いつまでも悩んでる息子なんて、親として見ていられるもんか。


いち早く元気を取り戻して、元気な笑顔を見せてくれ。


「なあ。最近、ため息ばっかりしてるけど。どうした?何か悩みがあるんなら、相談していいんだぞ」


さあ、教えてくれ。


どんなことでも、力になってやるから。


「お父さん」


おっ。


「ん?なんだ?」


「僕は、なんのために生きてるんだろう」




はい?




「僕は、なんのために生まれたの?」



え?



「ねえ、お父さん。教えてよ」


最近の子供は成長が早いというか、大人っぽいっていうけど、まさかこんな小さい子供がそんな事を考えてるなんて。


普通、中学高校あたりだろう。


そういう悩みを持つのは。


でもまあ、教えられることでよかったよ。


「ああ、わかったよ。教えてやる」


なんだか思い出すなあ。


あの時は俺も若かった。


「あのな、別に、お金持ちにならなくったっていいんだよ。テレビに出るくらい、有名にだってならなくていい。偉くだってならなくていい。ただ、


―人のために生きればいいんだ―


それだけでいいんだ。自分以外の、誰かのために生まれて、生きてるんだよ」


そう。


そうなんだよ。


「うん!!わかった!!」


お前も、お父さんも。


今、目の前にいる人のために生まれたんだよ。


そして、これから出会う人のために。


一生出会わなくても、共に同じ時間を生きている人のために。


生きてるんだ。


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