46人目『解いた男』 47人目『駆け抜ける男』
1話600文字以下のため2話同時掲載
46人目『解いた男』
カリカリカリ
1人の男が机に向かってちびた鉛筆を動かしていた。
カリカリカリ
カリカリカリ
カリカリカリ
カリ……
男の鉛筆を動かしていた手が止まり、男は鉛筆を置いた。
「出来た……」
机の上に置かれた一枚の紙を囲みこむようにして、たくさんの人が覗き込んでいた。
「なんて言えばいいのか……ただ……ただただ素晴らしいとしか言いようがない」
「ココまで完璧な式は見たことがないよ」
「美しい……」
「しかし、ココまで導き出すのは至難の業だったんじゃないのかい?」
机から少し離れたところに立っていた男に向けて聞いた。
すると男は机に近づきながら答え始めた。
「確かに大変だった。ここまでたどり着くのにたくさんの時間を使った」
机に手をついて続けて言った。
「それでわかったんだ。
―答えを見つけるより、式を考えるほうがはるかに難しいってね―」
あらためて机の上に置かれた紙をみんなで覗き込む。
黒い文字が何行にも渡って書かれているその紙の一部分にみんなの視線は集まっていた。
一番右下に書かれていた最後の結論部分。
∴やる気=才能
47人目『駆け抜ける男』
夜空に咲き乱れる花
開花の瞬間、爆音炸裂
爆音は熱気に乗って体に激突
俺の魂を振るわせる
滴る汗
こもった湿気に冷めない気温
背中にぶつかる音の感触
またどこかで花が咲く
上がる息に火照る体
騒がしい夜の中
誰もが花を見上げる中
数々の思いを馳せる中
夜の街を駆け抜ける
俺は走る
そして今年も
夏が終わる