42人目『眠れない男』 43人目『見つける男』
1話600文字以下のため2話同時掲載
42人目『眠れない男』
夜、時計は12時をとっくに回っている。
ガバッ
男はまたもや起き上がり部屋の中を歩き回る。
そしてトイレに行ったりホットミルクを飲んだりしてまた布団に入り眼をつむる。
しかし少し経つとパチッと目を開けてガバッと起き上がって歩き回る。
さっきからその繰り返しだ。
早く寝ないと体に悪いぞ。
次の日
「うわっ、どうしたんだよお前。眼の下にクマ出来てんじゃん。大丈夫かよ」
ほら、言わんこっちゃない。
そうやって体に異変が起きるってことは体に良くないって証拠なんだから。
ちゃ〜んと睡眠は十分取ること。
それにしてもなんでそんなに眠れないのかねえ。
なんか不安でも抱えてんじゃないの?
「いやあ、なんていうかさあ。寝ようと思って眼をつむるだろ?そんでさあ、明日のこととか、将来のこととか考えんだよ。そうするとさ、目を瞑ってるはずなのにさ
―目の前が輝きだして、眩しすぎて眠れないんだよ―」
安心しました。
精神的には健康そのものみたいですな。
43人目『見つける男』
今日もいつものようにつり革に捕まりながらぎゅうぎゅうの満員電車に揺られている。
あっつ苦しくてしかたがない。
こういう微妙な季節は冷房を入れて欲しいものだ。
プシュー
ここでようやく満員から解放される。
「はあ……」
そりゃため息も出るよ。
―問題が山積みだ―
今日行く営業先には何をおみあげに持っていけばいいのかとか。
会議で頭の固い上司をどう説得しようとか。
出来の悪い部下をどうしようとか。
その他もろもろこの世は問題で溢れかえっていると痛感してしまう。
「ふは〜あ……」
ガタンゴトーン
ガタンゴトーン
ふと、広告に目をやると新しいケーキ屋がオープンするらしい。
ああ、そういえば、取引先の人は甘いものが好きだと言ってたような……。
お、ちょうど通るから買っていこう。
ガタンゴトーン
ガタンゴトーン
ピロリロリーン
ピロリロリーン
誰かが携帯を鳴らしてるな。
ピッ
「はい、もしもし」
平然と電話に出て、悪いことだなんてこれっぽっちも考えてないんだろうな。
「なにっ!!??」
なんだ!?
びっくりしたなあ。
「そ、そ、そ、それは一体どういうことだ!?」
そうとう大事件が起きたんだな。
「もう一回落ち着いて言ってくれ。ゆっくりとわかるように。ちゃんと順序良く言ってくれないとわからん」
結構相手は慌ててる様子だな。
そういえば、会議のとき俺って結構テンパリながらプレゼンしてたかもなあ。
ちゃんと上司にわかるようにゆっくりと順序良くしゃべろう。
でもどうすればテンパらなくなるのだろう。
「バカヤロウ!!あれほど準備はしっかりしておけって言ってただろう!!」
ああそうか。
事前の準備が大切なんだよな。
他の仕事が忙しくてあんまりプレゼンの準備に時間を割いてなかったなあ。
ガタンゴトーン
ガタンゴトーン
お、マラソンをやってるなあ。
そういえば部下も大学ではマラソンをやってたって言ってたなあ。
しかし、よくもまあこんな長い距離を
走れるよなあ。
走る前からうなだれちゃうよなあこれじゃ。
……。
ああそうか。
スタートはみんな同じなんだった。
俺の方が先にスタートを切っていたんだ。
俺も最初は出来が悪かったもんなあ。
長い目で見ることにしよう。
ゴールはまだまだ先なんだから。
ガタンゴトーン
ガタンゴトーン
あれ?
なんだか問題が解決してるぞ。
ガタンゴトーン
ああそうか。
ガタンゴトーン
世界には
―答えが隠されている―