表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男達  作者: N澤巧T郎
32/52

38人目『雨男』

 降水確率0%の蒸し暑い夏の日。雲ひとつない青空でも、この男には関係ない。

 この男が一歩外に出ればどこからともなく積乱雲がもくもくと立ちこめ、ギンギンの太陽を覆い隠し、薄暗い世界にしてしまう。

 そして、まるでジャングルのスコールのごとく豪雨を降らすのだ。

 今日もまた、男が外へ出かけようとしている。もちろん傘を忘れることはない。男も自分の性格?を十分承知している。


ガチャ


ゴロゴロゴロ


 案の定、雷雲が現れてセミのミンミンという音に変わってザーザーという音があたりを包む。

 晴天から一変しての大雨。

 洗濯物を出したまま出かけていった人のことを考えれば少し胸が痛むが、男は言う。


「まあ、そんな日もあるさ」


 自分はちゃんとふとんや洗濯物を家に入れているが、そんなことは気にしない。人生何があるかわからないもんだ。

 男は大雨の中を傘を差して歩く。しかし、他の人は傘なんて持ってないからビショビショになりながら走っていたり、雨宿りをして困っている。そんな人たちを見ると少し胸が痛むが、男は言う。


「雨に打たれるのもいいもんさ」


 自分は傘を差しているが、そんなことは関係ない。人生晴天ばかりじゃないもんだ。雨には打たれておいたほうがいい。そして、それを楽しむのも一つの手だ。

 そうこうしているうちに男は買い物を済ませ家へと帰る。しかし、さっき来た道ではなく、見晴らしのいい公園へとやってきた。

 なぜなら男は十分に自分の特性?に気づいているから、どのくらいで雨が上がるのか十分承知しているというわけだ。

 ほら、雨脚が一気に遅くなって雨が止んだみたいだ。するとどうだろう。目の前に広がっていた薄暗い雲の隙間から、太陽光が我先にと飛び出して来た。

 ゆっくりと動く空模様をじっくりと見ながら男は言う。


「いきなりの大雨が降ったっていいじゃないか。こんな景色が見れるんだから」


 実際この景色を見ている人がどのくらいいるかわからないが、そんな事この際どうでもいい。

 一生続くような晴天が、突如として大雨に変わる。大雨は一生続くんじゃないかと思ってしまうほど激しく降る。しかし、一生晴天が続くことがないように、一生大雨が続くこともない。

 大抵、身震いするような光景ってのは、そんな大雨の後に待ってるもんだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ