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男達  作者: N澤巧T郎
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4人目『見つけた男』 5人目『飛んだ男』

1話が600字以内だったため2話同時掲載

4人目『見つけた男』




今日、親が風邪を引いた。


今まで風邪なんか引いたことなくて、風邪なんかひくはずないと思っていた。


いつもあんなにうるさいことを言っているけど、今日はとてもいつものように、はむかう気にはなれなかった。


「今日の夕飯は俺が作るしかないか……」


オレが台所に入ると、遠くのほうから小さい声がした。


俺は母が寝てる部屋に入った。


「なに?」


「私にも作って」


「え〜。めんどくさい」


「朝から何も食べてないんだよ。このままだと飢え死にだよ」


「あ〜はいはい、わかりましたよ」


料理と格闘すること1時間12分。


なんて疲れるんだ……。


ちょっと味見をしてみる。


「うん。まずい!!」


飯を母の元に持っていく。


「あいよ」


「ああ、ありがとね」


パクッ


「うん、おいしい」


最近は母の怒った顔しか見ていなかった。


熱のせいだったかも知れないけど、確かに母はオレの料理をおいしいといった。


今まで見たこともない笑顔で。


次の日、母は前以上に元気になった気がした。


俺はあの顔をもっと見たいと思った。


今、俺は料理の勉強をしている。


自分の料理で幸せそうに笑う顔を見たいから。


あの時の母のように。


あの日、俺は


―本当の笑顔と夢を見つけた―











5人目『飛んだ男』



何で俺は走ってんだ?


ハアハアハアッ


そうだ。


これは全員リレー。


俺はアンカーだったんだな。


いつものようにホームルームをサボってて、次の日学校に来たらアンカーにされてたんだ。


全く迷惑なことだ。


何でオレが?


まあ1年のときは速かったさ。


だけど、もう部活もやめて何の運動もしてないんですよ。


タバコだってやってるし、酒だって飲んでる。


っていうか昨日も飲んでてちょっと二日酔い気味だし。


だけどなんでアンカーは2周なんだよ。


もう足がうごかねえっての。


ああ、もう駄目だ〜。


どんどん離されてってるよ。


足がうごかね〜。


重え……。




遠のく意識の中、小さな声が聞こえてきた。


「ガンバレー」


ハッ!!


俺は声がするほうに目を向ける。


するとクラス全員が叫んでいた。


「行け〜!!」


「がんばれ〜!!」


「そこだ〜!!」


一歩、また一歩、俺の脚が前に進んでいく。


前のヤツの背中がどんどんと近づいてくる。


あと一歩。


―抜ける―





ゴオオォォォォォオル!!


実況が叫んだ。


ハアッハアッハアッ……。


ま……負けた……。


ハア……ハア……。


……ふぅ……。


ま、いいか。


久しぶりに全力疾走した爽快感。


流した汗が地面に落ちる。


今まで胸の奥にあったいやな気持ちが汗とともに、この広い大地に流されおちた。


リレーでは負けたけど、総合得点では見事に優勝することができた。



その時、俺は胴上げされた。



俺の体は重力から開放され、青空に吸い込まれていった。



―人間は翼を持たなくても空を飛べることが出来るんだ―


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