34人目『大コウカイした男』
どのくらい経ったんだろう。
もう夜を数えるのはやめてしまった。
自分の甘さがとことんわかった。
―海って、こんなに大きかったんだ―
誰もボクの事を知らない世界に行きたかったんだ。
ただ、それだけ。
逃げ場所はもう、海しかなかったんだ。
よかったことといえば、魚が釣れまくるって事。
悪かったことといえば、水が飲めないって事。
ボクと同じで、海の水か甘ければよかったのにな。
―今日も帰っちゃうの?―
「また明日」
夕日がまた海の中へ帰っていった。
そういえば、太陽は燃えてるって聞いたな。
だから海の中へ入って火を消すのか。
確かに一日中燃えてたら熱くて仕方ないもんね。
また夜が来た。
海に出るまで気がつかなかったけど
―夜ってすっごい眩しい―
海に夜が反射してどこもかしこも星だらけ。
それと太陽みたいにギラギラと光る月。
太陽が月じゃないってことぐらい知ってるよ。
だって、太陽はちゃんと海の中にあるんだから。
ほら、揺れてるけどちゃんとあるでしょ?
ん?
ちょっと待ってよ。
光ってるっとことは火が消えてないじゃん!!
こんなにたくさんの水でも消えないのか。
すごいなあ太陽って。
また海から太陽が出て来た。
ボクの頬が光ってるって?
別に泣いてなんかないよ。
ただ
―涙を流してるだけだい―
嘘じゃないぞ。
ちょっと涙を流そうと思っただけだい。
別に帰りたいなんて思ってないよ。
淋しいわけじゃないって。
ホントだって。
ほんと……。
―そんなに見るなよ―
太陽はボクを見続ける。
いつものように魚を釣る。
「あ、島だ」
……
……
……
やったああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
これでやっと水が飲める!!!
布団で寝れる!!!!
人としゃべれるぞおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!
あっはっはっはっはっ!!!
港が見えてきたぞ。
あれ?
なんか見たことある建物があるなあ。
ん?
なんか人がわらわら集まってきて……。
ああ……そうだった……。
―地球って丸いんだっけ―
ゴチンッ
「まったくバカなんだから!!これじゃあみんなに恥を大公開したようなもんじゃないか!!」
「たしかに見せてもらったぞ。大航海だったじゃないか」
「褒めないでちょうだい!!すぐ調子に乗るんだから」
「えへへへへ」
「ほらっ、笑わない!!」
「う〜〜」
「ったく……心配したんだから」
―おかえり―
―ただいま―
お母さんを抱きしめながら思った。
涙を流して大後悔したことは、黙っておこうっと。