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男達  作者: N澤巧T郎
25/52

30人目『泣いている男2』

男は泣いていた。


なぜ泣いているのか。


―その理由はわからない―



思いもよらない幸運が舞い降りたのかもしれない。


今までしてきた努力が実を結んだのかもしれない。


永遠とも思える長い長い苦しみとプレッシャーを栄光と賛美に変えたのかもしれない。


今まで人生を否定され、自分でも生きていてはいけないと考えていたのに、些細なことがきっかけて生きててもいいと実感したのかもしれない。


男は泣いている


―その理由はわからない―




朝日がとても美しかったのかもしれない。


晴天に降った雨粒がキラキラ輝いて、まるで光の粒が降ってるみたいだったのかもしれない。


雨上がりに架かった虹が、あまりにも荘厳だったのかもしれない。


何日も雨が降り、人間も動物も植物も凍えていたとき、雲の隙間から光が差し込み、今まで忘れていた太陽の暖かさを知ったからかもしれない。



目が覚めて、一番最初にしゃべった人がいつもと同じように、この世で一番愛してる人だったのかもしれない。


この世で最も尊い存在が、いつものように笑っているからかもしれない。


笑いすぎたのかもしれない。


うれしすぎたのかもしれない。


幸せすぎたのかもしれない。


男は涙を流す。


―その理由はわからない―




それはほんの小さな、ささいなことなのかもしれない。


朝、目が覚めたからかもしれない。


今、生きているからかもしれない。


どこかで新しい命が誕生したのかもしれない。


なぜ男が泣いているのか。


―その理由はわからない―




みんなから無理だ無理だと言われたことを、とうとう成し遂げたのかもしれない。


辛く過酷な旅路の果てに、世界に平和をもたらしたのかもしれない。


思わず拳を握り、雄たけびを上げたくなるようなことをやって見せたのかもしれない。


さんざん迷い苦しみ、必死で探し歩き続けた先に、魂をゆさぶられる光景が待っていたのかもしれない。





ただ、一つわかっていることは。


この世には、泣いてしまうような事が


―あまりにも多いということだけ―



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