27人目『思った男』 28人目『里帰りした男』
1話600文字以下だったため2話同時掲載
27人目『思った男』
すー
すー
すー
午後の授業中に教室の後のほうで寝息を立てる男。
ビクッ
ガタンッ!!
「イタッ!!」
いきなり大きな音がしたもんだから先生もおどろいたようで。
「なんだっ?!びっくりした!!なんだよもうびっくりしたなあ。寝るにしても起きるにしても静かにしてくれ」
「あ、すんません」
そんなやりとりに笑いが漏れた。
クスクスクスクス
そして隣の席の男が話しかける。
「なあにやってんだよ。落ちた夢でも見たか?」
「あー……シュート決めた」
「あっはっはそうかそうか。そりゃ良かった」
ボケー
起きた後もノートを取ることもなくただボーっと前を向いている。
それを見兼ねて隣の席の男がまた声をかけた。
「おーい。なにボケーっとしてんだよ。ノートとれ。見せてやらんぞ」
男はまだボーっとしながら答えた。
「いやー……なんてえか……」
―しあわせだなあって思って―
「……そりゃ良かった」
幸せをかみ締める時なんてのは、何の変哲もない、何でもないふとした瞬間なんだ
28人目『里帰りした男』
山に囲まれた村にある一軒の家。
その縁側。
風鈴が綺麗な音色を独特のリズムで奏で、遠くのほうから川のせせらぎも静かに加わる。
セミがその伴奏に合わせて合唱する。
蚊取り線香の香りを出す豚の置物と、綺麗にスイカの皮だけ残した皿の隣。
気持ちよさそうに眠る男と、その隣で同じようにすやすや眠る子供。
白くもこもことした雲と、燦々と輝く太陽の日差しが二人を照らす。
川で冷やされた心地よい風がそよそよ吹き、すれ違い様に火照った体を冷ましてゆく。
相変わらず空は優しく包み込む。
夜、満天の星空。
「もっと近くで見たい」
二人は昼間とは違う虫の音色を楽しみながら山を登る。
「うわ〜」
そこからは、街が一望できた。
「ボク達って星屑の中に住んでたんだね」
男はペットボトルを取り出して子供に渡した。
子供は空にかざして中を覗き込んだ。
そしてふたを開けて中の水をゴクゴク飲んだ。
「すごいやっ。ボク、お星様飲んじゃった!!」
そのせいかどうかわからない
しかし、子供の目はキラキラと輝やいていた。