2人目『気づいた男』 3人目『伝説の男』
一話が600字以内だったため2話同時掲載
今日、名前も知らない女の子から告白された。
顔は何度か見た記憶があった。
明日返事をするという約束をして、俺はその場を去った。
家に帰ってから、彼女の顔が頭から離れない。
いつもより3時間速く床に就いて、いつもより6時間遅く寝た。
朝起きると、全てのものが変わっていた。
いつもウザイと思っていた小鳥達の声も、見ているとムカついてくる青空も、なんだかいつもと変わっていた。
すべてが綺麗に見えた。
すべてが美しく見えた。
いつも吐き気がする母親の小言も、なぜか耳を傾けていた。
いつも消えてなくなればいいと思っていた母親が、なぜかいつまでも長生きしてほしいと思っていた。
まさかこんなに物事の見方が変わるなんて。
自分はとても複雑で、他のクラスの奴らとは違う。
そう思っていた。
別に何も変わらなかった。
オレも単純だった。
バカだと思ってた奴らと同じで、俺もバカだったんだ。
今日は
―初めて人と腹を割って話せるかもしれない―
3人目『伝説の男』
いま、俺の周りで流行っている遊びがある。
それは道路を走ってる車の前に飛び出すというものだ。
これは点数制になっている。
車の車種や大きさ、走ってきた車の速さなどによって変わる。
他にもぶつかるかぶつからないか、骨を折った折らないか、死ぬか死ななかったか。
いまだに死んだやつはいない。
死ねば10億点入る。
一気にトップだ。
今のトップは前田の1億点。
今、病院のベットの上でずっと眠っている。
トラックの前に出てそのまま跳ねられた。
運転手は雑誌を読んでいた。
そして今日は俺の番だ。
何の刺激もなかった俺の人生。
毎日が同じことの繰り返し。
学校の話題はいつも同じ。
もう飽きた。
道路の横に立つ。
周りでは他の奴らがしゃべってる。
一人の男がしゃべりかけてきた。
「あの車なんていいんじゃないか?」
ワゴン車
俺は横に首を振る。
「じゃあアレか?」
乗用車
首を振る。
「なんだ?怖いのか?じゃあアレか?」
原付バイク
無視した。
「うわっ、暴走トラックだ」
向こうから誰が見てもスピード違反のトラックがやってきた。
俺は思わず笑ってしまった。
のこり50m
「おいおい、なに笑ってんだよ」
40m
「いやさ」
30m
「びっくりしたんだよ」
20m
「何に?」
10m
「オレが……」
5m
「待ってたのは……」
1m
こいつだ
僕の学校には伝説がある。
「知ってるか?」
「ん?」
「あの伝説」
「ああ、あの」
「そう、あのバカの話」
「ホントバカだよな」
「命賭けるなんてアホだよな」
「ホント、ただの遊びだっつのに」
「でもさ」
「ん?」
―ちょっとカッコいいよな―