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男達  作者: N澤巧T郎
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23人目『呟いた男』

リモコンを手に取り、電源ボタンを押す。


ピッ


テレビ画面に、2人の人間が映し出された。


どうやら1人がゲストで、残りの1人が司会で、40分ほどしゃべるトーク番組のようだ。


司会の女性が早口でしゃべる。


「そうですかそれは大変でしたわねえ。それでどうしたんです?え?まあまあそうなの?それはちょっと違うんじゃないの?そう?まあそうですよね、そんな場面じゃ仕方ないわよねえ。ええ」


終始女性が一方的にしゃべり倒したあと、最後の最後でゲストに長い質問をした。


「それでですね、今回のゲストの彼も小さい頃はこういう子供だったということですよねえ。それが今では世界的にも有名におなりになってねえ。ホントにすごい事だと思うんですけど。それでですね、あのちょっと質問なんですけどよろしい?あのですね。どうしたらあなたみたいになれるのかしら。多分あなたみたいになりたいとかって思ってる人って大勢いると思うんですね。私も含めてなんですけど。ですからその人たちになにかアドバイスというかメッセージがあれば言ってあげて下さらない?なんでもいいんでね。はい。お願いします」


彼は、彼女に負けないくらい長く答えた。


「どうすれば、私みたいになれるかということですけど。私がいつも心に刻んでる。根底にあるものがあって、それがどういうのかっていうと、その、なんていうんでしょうか。その……。


―私のようになってほしくないんですよ―


ええ、そうなんですよ。


昔ね。


今とは違う道を歩いてたんですよ。


それはもう、まったく違う道を……。


好きなことが、あったんですよ。


ずっと、一生をそれに費やしてもいいと思えるくらいしたいことがあったんです。


それをしているとき、私は全ての事を忘れて没頭できるんです。


時間も空間も全てを捨て去り没頭出来ることなんてこれ以外にありません。


しかし、私は違う道を進んでいた。


苦しかった。


今、私がこうしていられるのは、ただ運が良かっただけです。


だから、みなさんには自分の本当に熱中できる道を歩いてほしい。


たとえ、今、違う道を歩いていたとしても、自分の進みたい道に移ってください。


違う道に移ることがすごい苦しいと思ってても、進みたくもない道を歩くよりよっぽどマシです。


だから、まずは声に出してください。


思っていても誰も気づいてはくれません。


人は、自分以外の心の声を聞くことが出来ないから。


声に出せば、絶対に聞いてくれる人がいるから。


その人が、助けてくれるかもしれないから。


まずは、声に出してください。


それと、歩きたい道も、決して平坦な道ではないでしょう。


歩くことをやめたいと思うこともあるでしょう。


だけどそのときは、最初の気持ちを思い出してください。


初めの気持ちを忘れなければ、大丈夫ですから


私が言いたいのは


―自分に嘘をつかないで―


―自分を偽らないで―


―あきらめないで―


―あなたの人生は、他の誰でもない、あなたのためにあるんだから―




テレビ画面に自分の顔が映った。




―腰抜けめ―

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