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男達  作者: N澤巧T郎
18/52

22人目『泣いている男』

男は泣いていた。


なぜ泣いているのか。


―その理由はわからない―





もしかしたら、自分には何の関係もないと思っていたところで大地震が起こり、そこに偶然居合わせた恋人が死んでしまったのかもしれない。


いつもそばにいたあの人が、もう顔を見ることも、触れることもできないところへ行ってしまったのだと実感したのかもしれない。


未来の自分が現れて、これからの人生何一ついい事など待っていないと告げられたのかもしれない。


男は泣いている。


―その理由はわからない―




明日、地球が崩壊してしまうのかもしれない。


もう止めることが出来ない争いが勃発したのかもしれない。


その原因が自分だったのかもしれない。



生まれてきた事を呪ったのかもしれない。


生まれてきた事を否定したのかもしれない。


それを自分ではない、誰かにしたのかもしれない。



男はなおも泣いている。


―その理由はわからない―




それはほんの小さな、ささいなことなのかもしれない。


明日、雨が降るからかもしれない。


占いの結果が悪かったのかもしれない。


靴下に穴が開いていたのかもしれない。


とてつもない花粉症なのかもしれない。


どこかで誰かが死んだのかもしれない。


―その理由はわからない―





何も考えずにした行動が、多くの人たちを不幸にしているという事実を知ってしまったのかもしれない。


良いと思ってしたことが、逆にその人を追い込んでしまい、後戻りが出来ないところまで行ってしまったのかもしれない。


言ってはいけないと知っていたのに言ってしまい、あとでいくら謝っても許してもらえずに離れ離れになってしまい、とうとう二度と笑顔を見ることなく永遠のさよならをしたのかもしれない。


この世で最も大切な人を殺され、仕返しにその人を殺したら、その人が他の誰かにとって、この世で最も大切な人だったのかもしれない。


なぜ男が泣いているのか。


―その理由はわからない―





ただ、一つわかっていることは。


この世には、泣いてしまうような事が


―あまりにも多いということだけ―


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