21人目『抱きしめた男』
えんえんえん
えんえんえん
誰かの泣き声が聞こえてきたんだ。
その声は、とても辛そうで、苦しそうで、かわいそうで。
ボクは周りを見回した。
だけど泣いてる人なんて誰もいなかった。
おんおんおん
おんおんおん
泣き声はどんどんどんどんおおきくなってきた。
ボクはたまらなくなって耳を塞いでしゃがみこんだ。
だけど泣き声はボクの手のひらを通り抜けて耳に入り込んで来る。
その声は、とても辛そうで、苦しそうで、かわいそうで。
ボクはどんどんどんどん悲しくなってきた。
「えーん!!えんえんえん!!」
ボクはたまらなくなって泣いちゃったんだ。
えんえんえん!!
えんえんえん!!
泣き声はどんどんどんどん大きくなってきた。
周りの人も耳に手を塞いでしゃがみこんだ。
だけど泣き声は手を通り抜けて耳の中に入ってくる。
その声は、とても辛そうで、苦しそうで、かわいそうで。
みんなどんどんどんどん悲しくなってきた。
「えーん!!えんえんえん!!」
「おーん!!おんおんおん!!」
みんなたまらなくなって泣いちゃったんだ。
えんえんえん!!
おんおんおん!!
えんえんえん!!
おんおんおん!!
泣き声はどんどんどんどん大きくなってきた。
ボクはもう立ってられなくなって、腰を下ろして両手を地面につけたんだ。
そしたら手をつたって泣き声が聞こえてきたんだ。
えんえんえん!!
えーんえんえんえん!!
おんおんおん!!
おーんおんおんおん!1
やっぱりそうだ。
泣き声は腕を伝って聞こえてくる。
―キミだったんだね―
―辛かったんだね―
―苦しかったんだね―
―今まで―
―ごめんね―
ボクは手を広げて、地面にうつぶせになった。
ボクは
―地球を抱きしめた―
みんなも
―地球を抱きしめた―
泣き声はどんどんどんどん小さくなってきた。
ボクは耳を地面につける。
だけど、泣き声は聞こえない。
その声は、とても嬉しそうで、楽しそうで、幸せそうで。
ボク達はどんどんどんどん嬉しくなってきた。
あははは
うふふふ
みんな笑った。
ボクも笑った。
地球も笑った。
ボクは思った。
こんな小さなボクだって、
―地球を抱きしめてあげることが出来るんだ―
ボクは笑顔で地球に語りかける。
「悲しくなったらいつでも言ってね」
―僕がいつでも抱きしめてあげるから―