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男達  作者: N澤巧T郎
16/52

20人目『伝えたい男』

「それでは、皆さんお待ちかね。拍手でお迎えください。どうぞ!!」


司会の人がそういうと、壇上の中央のマイクへ1人の男が歩み寄り、皆さんは拍手で迎えた。

拍手が少々弱まり、男は口を開いた。


「ええ、この度は、このような世界的にも有名な映画賞を、ええ、受賞しまして。ええ、それでですね。一つ、なんて言うんですかねえ。質問といいますか、疑問といいますか。まあそのですね。


―言いたいことがある―


んですよ、ね。


……みなさんはこの映画をご覧になって、どう思われましたか?


どう、受け取りましたか?


私が思うに……私の思いといいますか、考えといいますか。


―伝わってない―


みたいですね。


……ええこの映画賞。


どういう映画が、受賞されるのかっていう、コンセプトと言いますか、ええ、何て言うですかね、テーマですか。


それにですね。


―生まれ変わっても見たい映画―


とかですね。


―死ぬ前にもう一度見たい映画―


と、いうのがあるんですね。


それでですね。


その映画に、今回私の映画が選ばれたというわけなんですけど。


……これは、


―私を侮辱しているとしか思えない―


んですよ。


みなさんはすでに映画を見たと思うんですけど。


あなたたちは、


―一体何をしてるんですか―


そこで座って、何をしてる?


―今、何をしている―


この映画で伝えたかったことはただ一つ。


―今、なにをすべきか―


映画の中に嫌というほどちりばめたメッセージです!!


―今、なにをすべきか―


―今、なにをするべきか―


映画を見たのなら絶対に気づくはずだ!!


しかし、今、あなたたちはなにをしている!?


そこに座って、


―何をしている―


そこに座って、私の話を聞く。


それが、あなたの


―今するべきことですか―


賞の授賞式を見る。


それがあなたの


―今しなくてはいけないことですか―


映画のラストシーン。


あの二人のやり取りの中に、私の伝えたかったことの全てがつまってます。



―俺が今しなくてはいけないことってなんだ?―

―それじゃあ今してはいけないことってなんだ?―


―俺は何のために生きてんだ?―

―それじゃあ何のために生きたいんだ?―


―生きてることに意味なんてあんのか?―

―それじゃあどんな意味があれば生きたいんだ?―



人間は不完全な生き物です!!


時には間違いを選択するときもあります!!


しかし!!


一番してはいけないことを考えれば!!


―最悪の結果だけは回避することが出来る!!―



それだけじゃない!!


してはいけないことがわかれば!!


おのずと、


―今、なにをするべきか見えてくる!!―




もう一度、言います。



―今!!―




―あなたは!!―




―なにをしている!?―






もし、このメッセージが伝わっていれば、


―もう二度と―



―この映画を―



―見ることはない!!―









……これで……終わります」







パチ




パチ




パチパチ




パチパチパチ!!

パチパチパチパチパチ!!

パチパチパチパチパチパチ!!

パチパチパチパチパチパチパチ!!!!

パチパチパチパチパチパチパチ!!!!

パチパチパチパチパチパチパチ!!!!

パチパチパチパチパチパチパチ!!!!


会場はスタンディングオベーレーションとなった。


誰もが拍手をしながら立ちつくし、動こうとするものはいなかった。


その光景を見て、男が力なく呟いた。




―なにしてんだよ―




その言葉は会場全体に響き渡る拍手によってかき消された。


メッセージは伝わったのか、それとも伝わらなかったのか。



あなたには



―伝わるか―


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