14人目『祈る男』 15人目『大きくなった男』
1話が600字以内だったため2話同時掲載
14人目『祈った男』
僕に出来ることは、これくらいしかないんです。
僕はキミを連れ出した。
キミは疲れてそうだったけど。
しっかりと笑っているのがわかって嬉しかった。
僕らはエレベーターに乗り込んだ。
ドアが閉まる。
しばらく二人だけの静かな時間が過ぎていく。
十秒か二十秒だけだったかも知れない。
だけどボクにとってこれほど濃密な時間はなかった。
それは今でも変わらない。
ドアが開くと新鮮な秋の風がエレベーターいっぱいに僕らを包んだ。
外の世界はちょうど夕暮れ時で、夕焼けが紅葉の山々を紅く燃やしていた。
山だけじゃなく、ボクらが住んでいる街全体も燃やし尽くす。
―僕は祈る―
もう少しで尽きてしまう彼女の命よ。
今にも消えてしまいそうな小さな火よ。
燃え盛れ。
世界を燃やす、あの太陽の如く。
ニコニコニコ
「なんでいつも笑うんだよ。こっちは真剣だったんだぞ」
「だって、幸せなんだもん」
そうやって微笑むキミを見て、ボクも笑うんだ。
いつものことだ。
15人目『大きくなった男』
「おつかいに行ってきてくれない?」
そういわれてぼくはメモとおサイフを渡された。
おつかいなんてへっちゃらさ。
おかあさんと一緒に何回も何回も行ったことあるもん。
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
ガラガラガラ
あれ?
道って、こんなに広かったっけ?
ぼくは、急に怖くなってきちゃったんだ。
でも、家には戻れない。
だって、ぼくは男の子なんだから!!
この道でいいんだよね。
ぼくはおどおどしながらもスーパーにやってきた。
おおきなカゴを持って店に入った。
知らない人でいっぱいだ。
きょろきょろしてるとおばちゃんに話しかけられた。
ぼくはメモに書かれてる物を言うとその場所を快く教えてくれた。
「ありがとうございました」
「道草しないで帰るんだよ」
お礼を言ってレジに行ってお金を払った。
レジで貰った袋は、ぼくには少しおおきかったけど、引きづらないように気をつけて帰っていった。
太陽がかたむく道の上を歩きながら思った。
家を出たとき、あんなに広いと思った道が、今はとても狭く感じる。
それはたぶん、おおきくおおきく伸びた影のせいだ。
ガラガラガラ
「ただいま!!」
「おかえりなさい。あら?見ないうちに
―なんだか大きくなったんじゃない?―