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UnderGround・Dark ~ソワリスの使徒~  作者: 夏菜&アルフォンス
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プロローグ~始まりの時~

夏菜&アルフォンスが送る、全力全壊の最新作!!!


定期的に更新していくように頑張ります。


それでは!

昼は大量の人が行きかう、ニューヨークのウォール街の一角。


午後12時という一人で歩き回るには危険な時間に、カツカツカツというヒールの独特の高い音を響かせて一人の少女が息を切らしながら走っていた。


紫がかった黒い髪とグレーの目が印象的な12~5歳ほどに見える少女。


だが、いくら夜遅くといってもおかしいと言えるほど、その街には人の気配は全く無かった。


車1台はおろか、人1人も通っていないのだ。



「っ…はぁ…はぁ…はぁ…。は…やく、見つけないと……ソワリスを……」




右手には、その姿に似合わないほどの大剣持っている。


キャリキャリっという金属と、地面が擦れる音を響かせて走る彼女。


その右肩には深く抉れたような傷があり、赤い液体を流し続けていた。


走る彼女の後ろには黒い黒い闇……のような怪物だろうか?


あえて言うなら《黒き者》


それが蠢き、ゆっくりと…しかし確実に彼女を追い込んでいるように見える。





「つ…行き止まり!?」





息を切らしながらも彼女が逃げ込んだ路地は、高い壁により行き先が無くなっていた。


苦々しく、そう呟いた彼女は瞬時に頭を動かし壁際に移動した。


タイミングを見計らって、大剣を上空に掲げ…勢い良く振り下ろす。


丁度角を曲がり、彼女の後を追ってきた《黒き者》には、回避することができず……




「ギョボァアアアア!!!」




一刀両断され、なんとも不愉快な悲鳴をあげた《黒き者》はその身を次第に霧に変え霧散していく。




ダークの出現頻度と強さ(レベル)が上がってる……。早くソワリスを見つけないと」




そう呟いた彼女が、剣に向かって何かを呟いた瞬間まぶしい光が辺りを照らし、光が収まった時には彼女の姿は掻き消えていた。




*   *   *





だれかが言っていたような気がする…………。



『今の平和は薄い薄い氷の上にあるような物だ』って………。













       ~「始まりのとき」~









「ざ~んが~んけ~~~ん!!」


「……」


「な!! 今週のネギみたんか!? 拓」


「……見てねぇよ」


「かぁ~!! これだからお前は!!」


「というか、授業中に叫ぶな、話すな。バカ銀」




そう言いながら、隣でガッツポーズ?をしている悪友の脳天に拳骨を落とす。


へキャ!? という意味不明な悲鳴をあげて、机に突っ伏した銀を横目に、俺は黒板に向きなおした。


管局高校の白い数学先生に喧嘩を売るほど、俺は命しらずじゃないしな。


悪魔だの、魔王だの噂されてるし。




俺の名前は、麻南まなん拓朗たくろう


管局高校に通う高校生の16歳だ。


割と長めに伸ばしたボサボサの栗毛色の髪と、茶色の目の色以外は至って普通の青年。


似てる芸能人は……。


そうだな……。


髪を伸ばした姿が、川村隆一にそっくりなんだそうだ。


で、ゾンビだとか魔法とか忍者などに関わっている人間じゃない。


得意なことは特になし。趣味もコレといって無いといっていいだろうか?


ああ、3歳の頃から行っている剣術だけは誰にも負けないと自負できるが……。


あとは、まぁ……普通だ。


まぁ……。あることを除いてなんだが。




「いってぇ~…。痛すぎて脳味噌が蕩けそうやで……」





で、こんなバカな発言をしているのは、俺の悪友、黒葉くろは銀次ぎんじ


愛称は銀で、中途半端な関西弁がトレードマークだ。


小学生の頃からの友達で、お隣さんだ。


黒眼黒髪で短い髪の自称オタクなんだが……。


意外に肉体派らしく、『格闘に憧れた!!』と言った次の日には、複数の武術の弟子入りをしていた強者(つわものでもある。


しかも、どれも中途半端にしておらず、半数以上が免許皆伝という化け物付でな。


あと…そうだな。俺の能力を知ってる唯一の奴。





「で……授業中に会話たっぷりと楽しめた?銀次君、拓朗君」


「「げ…奈々(魔王)先生」」


「…………2人とも、たっぷりお話が必要みたいね。今日中に反省文を10枚提出!!」


「ふぉおおおおお!!」


「俺は、無罪だぁあああああ!!」





今日も、管局高校は平和だと……思う。




*   *   *  






「はい、きっちり10枚の反省文ですね。お疲れ様♪」





時間は午後6時。俺達は放課後の全ての時間を使い切って反省文を書き上げた。


後半の殆どは『ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ』で占められていたような気がするけど、この際気にしないでおこう。




「おおふっ…今日の6時アニメを見過ごしやないか」




隣で相も変わらず、携帯のワンセグでアニメに熱中している銀を横目に、俺は鞄の中に入っている紙を取り出して見つめた。





「拓…まじで楽しみなんやな。何度もその手紙を見つめて……顔がマジで気持ち悪すぎやで?」


「ああ……。やっとだからな。あと、ウルせー、顔が悪いのは生まれつきだ」


「約2年か……。明日の10時に駅前だよな?」


「ああ」




アニメに熱中していた銀が、いつのまにか俺の持ってる手紙を横目で見ており、そう言ってきた。


何時もと変わらないくだらない話を銀としつつも、俺は約2年前にアメリカに留学していった幼馴染との出来事を思い出していた。




*   *   *   




「ねぇ? 拓ちゃんは将来どうしようと思ってるの?」




何時もと同じ中学校の帰り道。


俺の左には銀が携帯でアニメを見て『うひぃ~!』やら『かっけー!』やら言って熱中し、右には幼馴染の麻衣が歩いている。




「……拓ちゃん、聞いてる?」


「ああ!! ごめんごめん!!……で、なんだっけ?」




まったく麻衣の話を聞いていなかったと俺が謝ると、ぷくぅ~っと両頬を膨らませて怒る麻衣。





「だ・か・ら!! 進路について!!」


「ああ!! 進路か~……」




今日のHRで先生から言われた将来の進路という題名に、麻衣は今も真剣に考えているようだ。


明日から冬休みに入る。


中学2年の冬休み前に受験の意識もしてない俺には、終業式のHRの言葉なんてこれっぽっちも覚えていなかった。


一切考えていなかった俺は、生返事を返した後、言葉を濁らせながら苦笑するしかなかった。




「私ね……アメリカに留学しようと思ってるの。明日から……ね」


「なっ……」




驚き……。


その感情しか出てこない。


小学生の頃から、俺達3人は何時も一緒だったんだ。


だから……いつまでもそれが変わらないと、思っていたんだ。


その後、留学について色々話を聞いた。


麻衣の両親は研究の関係でアメリカにいる。


麻衣一人で生活していたんだが、高校進学と英語の成績に不安に思った両親が、麻衣をアメリカに呼んだらしいのだ。


麻衣本人としては桜時市を離れるつもりはないらしく、2年という限定付で従ったらしい。




「絶対、ぜ~ったい帰ってくるからね!! 私がいないからって学校サボっちゃ駄目だぞ!!」




お互いの家へと続く分かれ道。


そう言って、笑顔で手を振って、自分の家のある方向に足を進めた麻衣の頬には、少しだけ涙の後筋が見えた気がしていたんだ。





*   *   *  




「で……拓はまた妄想の中かいなっ」


「うるせー…。思い出に浸っていたって言え」


「拓は……案外、乙女思考やしな♪」


「乙女思考って……なんだよ銀」


「『拓は…拓は…寂しいの!! でも……幸せな思い出があれば、少しだけ耐えれるの!!』って考えだ」


「なんだ……その……。お前の女言葉は気持ちわりぃ」


「おう……」




変わらないバカ話をしながら、お互いの家前までついた俺達は、無造作にドアを開けた。




「ただいま~って、誰もいないんだよな」




そう呟いて、玄関の床に乱暴に通学カバンを投げつける。


バフンという音を響かせて、階段下に転がったカバンをよそ目に俺は、居間に足を進めた。


ちなみに、俺の両親はいない。


いや、殆どいないと言った方がいいか。


父親は3年前に中東に出張している時、死別した。


理由は不明。死体は見つかったが、どんな殺され方をされたらそうなるんだという状態だったらしい。


母親は現在もアメリカで赴任中。


遺伝子専門学の権威である母は、息子の顔を見に帰ってくるのは1年に2~3回だ。




「まぁ、気楽だからいいんだが……。メシが困る」




こんな言葉に誰も返してくる事もなく、空しく独り言を言った俺は、帰りがけに買ってきた惣菜を纏めてレンジに放り込んだ。





「麻衣がいた頃は、しょっちゅう作りに来てもらったよな。……はぁ、マジで手料理食いてぇ」




生暖かくなって不味いサラダと、熱々すぎるサバの塩焼きを食べながら、昔の事を思い出す俺の顔は、にやけているんだろう。


銀のいう乙女思考っていうのも、こういう場面を見ると自分でも頷けるから仕方ない。


食べた食器を適当に洗った俺は、宿題と入浴をさっさと済ませて寝床についたんだ。


明日……。


麻衣に会えるという嬉しさを噛み締めながら。




*    *    *




翌日


チュンチュンという雀の鳴き声とに俺の意識が浮上する。


カーテンの隙間から見える明るい光を背に、ガリガリと乱暴に頭を掻きながら起き上がった。




「…………レイポイントって、なんなんだよ?」




頭にこびり付いた不思議な声に少しだけ眉間に皺を寄せ、そう呟く。


意味不明な言葉に思考の大半が囚われる。




「なんか不調だな。で、居間何時だ?」




思考が上手に動かないのに加えて、倦怠感を感じる体を無理やり動かしつつ、ベッドの淵においてあった時計を見た。




「おぃおぃおぃおぃ……マジか!?」




麻衣との合流時間まで、あと30分間という事に驚いた俺は、頭から血の気が引いていくのを無視して、急いで用意をして家を飛び出した。




「遅すぎやで……。って無視してダッシュはあかんやろぉおおお!!」




玄関の塀に体を預けて休んでいる銀をあえて無視し、俺は駅へと走り続ける。


後ろから『ありえへんわぁああ!!!』という声が聞こえてくるが、これもあえて無視しといた。




「ぜぇはぁ……あかん。……HPが残り1や……」





相変わらず、2次元的な発言をしている銀が追いついてきたのは、俺が駅前についた時だった。


時間は9時56分。


5分前行動を常としている俺としては、すこしアウトな時間だったが、気にしないようにして約束の場に足を進める。


数メートル後ろを、息を荒くさせながら歩いてくる銀を確認しながら。




その時だった。










ゴゴゴゴゴという大地が鳴る音と共に、足元が大きく揺れる。




「地、地震だ!!」


「あ、あかん!! こ、これは、デッカいで!?」




足元の地面に皹が入り地割れが起き、地割れを作る。


遠くに見えていたビルのガラスが、パリン!!、ガシャーン!!という音と共に砕け散り、地上に降り注いだ。





「くそっ……銀!! 何かにつかまれ!!」





多数の悲鳴が聞こえる中、俺は未だ止まることの無い激震と、俺の声を飲み込んだゴゴゴゴゴという音に耐え続けた。







9時56分


その時、俺達の世界を支えていた薄氷が、カシャンという軽い音と共にたしかに壊れた気がした。





…………It still Continues

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