第17話:ジューンブライドの敵対的買収(M&A)! ヴァージンロードは上場廃止への片道切符!?
1. 6月相場のアノマリー「ジューンブライド(究極のM&A)」
「……いいか高坂。市場において6月というのは、衣替え(サマータイム導入)によるポートフォリオの入れ替えが行われる重要な月だ。だが、それ以上に投資家たちの血を沸き立たせる、恐るべき季節特有のアノマリー(経験則)が存在する」
2026年、6月初旬。
梅雨入り前の少し湿気を帯びた風が吹き込む教室で、夏服に衣替えした親友・佐藤は、タブレットの画面を俺の鼻先に突きつけてきた。
画面には、ウェディングドレスとタキシードのイラストと共に、学園の公式ロゴがデカデカと表示されている。
「世に言う『ジューンブライド』だ。そして、我が八重洲学園の生徒会と家庭科部が合同で主催する一大イベント……『第1回・八重洲ブライダル・フェスティバル』の開催が発表された!」
佐藤が芝居がかった手つきで天を仰ぐ。
「……ブライダル・フェスティバル? ただのファッションショーか何かか?」
俺、高坂優人は、嫌な予感しかしないまま首を傾げた。
「甘い。甘すぎるぞ高坂。このイベントのメインは『模擬結婚式』だ。男女ペアでランウェイ(ヴァージンロード)を歩き、最も『将来の資産価値(ベストカップル度)』が高いと判定されたペアには、理事会から『ベスト・パートナー証明書』が授与される」
佐藤はニヤリと笑い、俺の肩をポンと叩いた。
「考えてもみろ。お前を巡って血みどろの『株式公開買付(TOB)』を繰り広げている四大銘柄……神宮寺カレン、四宮アリス、橘ひまり、そして如月ミア。彼女たちが、この『公式な合併(結婚)の予行演習』という超特大の好材料を見逃すはずがない。……高坂、お前の人生は今日、事実上の『上場廃止(プライベート化)』を迎えるぞ」
『ピコンッ!』
【市場速報:6月相場、開幕。学園内の「ゼクシィ」および「婚姻届(白紙)」の先物価格がストップ高! 全投資家が、高坂優人の『最終的な合併先(結婚相手)』に全財産をベットし始めました】
「頼むから、高校生のイベントに『上場廃止』なんて物騒な経済用語を持ち込まないでくれ!!」
俺の悲痛な叫びは、初夏の空へと虚しく吸い込まれていった。
2. 四大銘柄の「合併契約書」
予感は、一瞬にして現実のものとなった。
昼休み。俺の机の上には、四枚の重々しい「書類」が叩きつけられていた。
「……優人くん。これは神宮寺財閥の顧問弁護団が徹夜で作成した『永久合併契約書』よ」
神宮寺カレンが、金箔押しのクリアファイルから取り出したのは、どう見ても本物の「婚姻届」だった。(※ただし、証人欄にはすでに総理大臣の名前がサインされている)
「このフェスティバルで私とヴァージンロードを歩きなさい。優勝賞品の証明書なんてただの紙切れよ。私の真の目的は、この場で既成事実を作り、あなたという優良資産を神宮寺グループの『完全子会社』にすることよ!」
「待ちなさい、神宮寺さん! そんな独占禁止法スレスレの買収は、生徒会が認可しないわ!」
四宮アリスが、分厚いバインダーを机にドンッと置く。
「高坂くん、私の書類を見なさい。これは『相互扶助および資産共同管理に関する基本合意書』よ。私とパートナーになれば、将来的な配偶者控除から年金の分割まで、最も合理的なタックスプランニング(節税)が約束されるわ。……さあ、ここに実印を押しなさい!」
「二人とも難しすぎるよー! 結婚って、もっとポカポカしたものなんだよ!」
橘ひまりが、ピンク色の可愛らしい封筒から取り出したのは、手描きの『将来の家族計画表』だった。
「見て優人くん! 子供は三人で、犬を二匹飼って、日曜日は絶対みんなでハンバーグを食べるの! わたしたちの『配当(幸せ)』は、毎日の食卓にあるんだよ! だからわたしと一緒にドレス着ようね!」
「……非論理的な妄想の押し付け合いね。反吐が出るわ」
如月ミアが、無表情のまま俺のスマホに直接データを転送してきた。
「……優人。私はすでに、あなたのDNAデータと私のDNAデータをシミュレーションし、遺伝子レベルで『最も優秀な後継者(次世代の優良銘柄)』が誕生する確率を弾き出したわ。私たちの結合は、人類の進化に対する不可逆的な『アップデート』よ。このデータを見れば、誰を選ぶべきかは一目瞭然ね」
四人の美少女が、俺の机を囲んで凄まじい火花を散らしている。
俺は頭を抱えた。
「……お前らな。これはただの学校のイベントだろ! なんで『完全子会社』だの『タックスプランニング』だの『遺伝子シミュレーション』だの、人生の最終決算みたいな話になってるんだよ!」
『ピピピピピピピピピピッ!!』
【緊急警報:四大銘柄による「高坂優人の生涯独占権」を巡るプロキシファイト(委任状争奪戦)が勃発! 教室内の気圧が愛の重圧で低下し、窓ガラスにヒビが入りました!】
「もうどうにでもなれ! 誰と組むかは、衣装合わせの時に俺が決める! だから今は一旦落ち着け!」
俺がそう宣言すると、四人は一斉に不敵な笑みを浮かべた。
「……言ったわね、優人くん? 衣装合わせで決める、と」
カレンの瞳が、投資家のそれに変わった。
3. ブライダルサロンの「敵対的買収」
放課後。
俺は、四人に両腕と背中と腰を完全にホールドされた状態で、都内の一等地にそびえ立つ超高級ブライダルサロンへと連行されていた。
「……おい、神宮寺。ここは学園の家庭科室じゃないぞ」
「当然よ。学校の安っぽいレンタルドレスで『私と優人くんの初めての共同作業』を汚すわけにはいかないわ。昨日のうちに、このビルごと神宮寺財閥が買収(M&A)しておいたから、好きなだけ試着できるわよ」
「ビルごと!? お前の金銭感覚、バグにも程があるだろ!」
サロンの中には、世界中のハイブランドから集められたウェディングドレスがズラリと並び、数十人の専属スタイリスト(なぜか全員サングラスのSP)が待機していた。
「さあ、優人くん! 私たちの『決算発表(ウェディングドレス姿)』、とくとその目に焼き付けなさい!」
四人が一斉に試着室へと消えていく。
俺はふかふかのソファに座らされ、出された高級ダージリンティーを啜りながら、これから起こるであろう「視覚的暴力」に備えていた。
数分後。
「……優人くん。どうかしら」
最初にカーテンが開いた。
そこに立っていたのは、純白のシルクに最高級のレースがあしらわれた、王道かつ圧倒的なオーラを放つウェディングドレスを身に纏った神宮寺カレンだった。
プラチナブロンドの髪は美しく結い上げられ、頭上には本物のダイヤモンドが輝くティアラが乗っている。普段の強気な態度はどこへやら、彼女は頬を真っ赤に染め、ブーケで口元を隠すようにしてはにかんでいた。
『ドゴォォォォォン!!!』
【神宮寺カレン株:ストップ高! 圧倒的資本力と美貌の相乗効果により、高坂優人の理性が暴落寸前!】
「か、カレン……お前、それ……めちゃくちゃ綺麗だぞ」
「っ……! ほ、本当? よかった……。私、あなたにそう言ってもらうために、このドレスを……っ。……責任、取ってよね」
カレンの破壊力に、俺のHP(精神力)は一瞬で半分削られた。
「高坂くん! 監査の時間よ!」
続いて別のカーテンが開く。
現れた四宮アリスは、カレンの豪華さとは対極の、清楚でスレンダーなマーメイドラインのドレスだった。余計な装飾を削ぎ落とした合理的なデザインが、彼女のスタイルの良さを残酷なまでに際立たせている。さらに、ウェディングベールの下から覗く、普段と同じ「赤いアンダーリムの眼鏡」が、とてつもないギャップ萌え(プレミアム)を発生させていた。
『ギュイイイイイイイインッ!!』
【四宮アリス株:連れ高からの大暴騰! 堅物委員長の「花嫁姿」というギャップが、市場に劇的なリバウンドを引き起こしました!】
「し、四宮……お前、スタイル良すぎないか……?」
「な、何を見ているのよ! これは布の面積を最小化し、機動性を重視した結果であって、決してあなたを誘惑するためじゃ……っ! ……でも、あなたがずっと見てくれるなら、このまま脱がなくても……いいわよ」
アリスが目を潤ませて上目遣いをしてくる。俺の心肺機能が停止しかける。
「優人くーん! わたしも着たよー!」
元気な声と共に飛び出してきた橘ひまりは、ふんわりとしたプリンセスラインのドレスだった。フリルとリボンがふんだんに使われており、彼女の底抜けの明るさを象徴するような、見ているだけで幸せになるデザインだ。
『ピロリンッ♪』
【橘ひまり株:青天井の安定成長! 日常の延長線上にある「究極の家庭の味(幸せ)」に、投資家(優人)の心が安らぎのストップ高!】
「ひまり……似合ってる。本物のお姫様みたいだ」
「えへへー! 嬉しい! 優人くん、わたしをお嫁さんにしてくれる? 毎日、優人くんの隣でご飯食べて、一緒に笑って、一緒におやすみしたいな!」
ひまりが全開の笑顔で俺の腕に抱きついてくる。その柔らかすぎる感触に、俺の理性は崩壊の一歩手前だ。
「……私のアップデート(ドレス)も、評価しなさい」
最後に静かに現れた如月ミア。
彼女のドレスは、常識を覆すデザインだった。純白ではなく、淡い青白い光を帯びた「パールホワイト」のドレス。アシンメトリーなスカートの裾には、微弱なLEDファイバーが織り込まれており、近未来的な美しさを放っている。
『ピ――――――――ッ!!!!!』
【如月ミア株:上場来高値更新! データと官能の融合が、高坂優人の脳内アルゴリズムを完全にハッキングしました!】
「み、ミア……それ、どうなってるんだ?」
「……このドレスの光の明滅は、私の心拍数と同期しているわ。……見て。あなたの顔を見るだけで、私の心臓の回転数(クロック周波数)が異常な数値を叩き出している。……高坂優人。あなたの存在そのものが、私のシステムに対する最強の『バグ(恋)』なのよ」
ミアが、無表情のまま俺のネクタイを引っ張り、顔を近づけてくる。
「お前ら……俺を過労死(上場廃止)させる気か……っ!!」
四人の致死量を超える「花嫁姿」の連続攻撃に、俺はついに白目を剥いてソファに崩れ落ちた。
4. ヴァージンロードの「敵対的買収合戦」
そして迎えた、ブライダル・フェスティバル当日。
学園の体育館は、巨大なランウェイ(ヴァージンロード)と、豪華なステンドグラスのセットが組まれ、さながら本物の大聖堂のようになっていた。
ギャラリー席には、全校生徒だけでなく、なぜか保護者や(神宮寺財閥の)株主たちまでが詰めかけ、スマホのカメラを一斉に構えている。
「……いいか高坂。お前は今から、あのランウェイを歩く。だが、相手は一人じゃない。四大銘柄による『同時多発的な合併承認決議』だ。生き延びろよ」
タキシード姿(無理やり着せられた)の俺の背中を、運営側に回った佐藤が叩く。
「佐藤、お前も一緒に歩いてくれないか……」
「馬鹿を言え。俺は今から、お前が誰の手を取るかの『賭け(デリバティブ取引)』の元締めとして忙しいんだ」
ファンファーレが鳴り響き、俺はランウェイのスタート地点に押し出された。
ランウェイの反対側、ステンドグラスの前には、純白のドレスに身を包んだカレン、アリス、ひまり、ミアの四人が並んで立っていた。
その姿は、文字通り「女神」たちの競演だった。
全校生徒の熱狂的な歓声(怒号)が体育館を包む。
「さあ、優人くん! 私の元へ来なさい! あなたの人生ごと、私が買い取ってあげる!」
カレンが両手を広げる。
「高坂くん! 生徒会の規定に基づき、私の隣に整列しなさい! 永遠にね!」
アリスが眼鏡を光らせる。
「優人くん! 早くこっち来てー! 一緒に鐘を鳴らそう!」
ひまりがピョンピョンと跳ねる。
「……優人。あなたの歩幅、歩行速度、全て計算済みよ。私の軌道から外れることは許さないわ」
ミアが静かに微笑む。
俺がランウェイを歩き出した、その瞬間だった。
『ちょっと待ったぁぁぁぁぁっ!!』
体育館の入り口から、野太い声が響いた。
現れたのは、隣の男子校の制服を着た、柄の悪そうな集団。彼らは「他校の暴走投資家」たちだった。
「八重洲学園の美少女たちを、一人の男が独占するなんて許せねえ! 俺たちがその『優良資産(花嫁)』たちを、敵対的買収してやるぜ!」
乱入者たちが、ランウェイに乗り込もうと走り出す。
会場は一転してパニックになった。
「な、なんだあいつら! 警備員は何をしてるんだ!」
俺が叫んだが、暴走投資家たちは容赦無くランウェイを駆け上がってくる。
だが。
俺の愛する四大銘柄たちは、そんな三流のハイエナ(レイダー)たちに屈するようなヤワな女たちではなかった。
「……身の程を知りなさい、下賤な空売り屋どもが!」
カレンがドレスの裾を翻し、隠し持っていた『神宮寺財閥・無記名小切手(数億円)』の束を、乱入者たちの顔面に叩きつけた。
「ぐはっ!? 札束のビンタ……だと!?」
「学園の風紀を乱す者は、容赦しないわ!」
アリスが、ウェディングベールの下から『スタンガン内蔵・防犯ブザー』を取り出し、的確に乱入者の急所を突く。
「ぎゃあああっ! 合理的すぎる電撃……!」
「優人くんの邪魔しないでー!」
ひまりが、どこから取り出したのか(おそらく装飾用の)巨大なウェディングケーキの段を引っこ抜き、ハンマーのように振り回してなぎ払う。
「どごぉっ!? カロリーの暴力……!」
「……システム、ハッキング完了。対象のスマホの秘蔵画像(黒歴史)を全校放送のモニターに投影するわ」
ミアがタブレットを叩くと、巨大モニターに乱入者たちの恥ずかしいポエムや検索履歴がデカデカと映し出された。
「や、やめろぉぉぉ! 社会的信用がストップ安だぁぁぁっ!」
ものの数十秒。
四人の花嫁による「圧倒的な資本と暴力と情報の防衛策」により、乱入者たちは文字通り塵となって消え去った。
「……強すぎるだろ、俺の嫁(予定)たち……」
俺はランウェイの真ん中で、唖然として立ち尽くしていた。
5. フォワードガイダンス(将来の約束)と基本合意書
乱入者が一掃され、静寂を取り戻した体育館。
カレン、アリス、ひまり、ミアの四人が、息を弾ませながら俺の元へと歩み寄ってきた。
「……優人くん。邪魔者は消えたわ。さあ、私を選びなさい」
カレンが、少しだけ不安そうに、けれど真っ直ぐに俺の目を見る。
四人の瞳には、俺への隠しきれない愛情と、選ばれなかった時の恐怖が混ざり合っていた。
俺は、大きく息を吸い込んだ。
ここで誰か一人を選ぶ? そんなこと、できるわけがない。
俺のポートフォリオは、この四人がいて初めて成立するんだから。
俺はマイクを手に取り、全校生徒(投資家たち)に向けて宣言した。
「聞いてくれ、全員!!」
体育館が水を打ったように静まり返る。
「カレン、アリス、ひまり、ミア。お前たち四人は、俺の人生にとって、どれか一つなんて選べない、最高の『ブルーチップ(超優良銘柄)』だ!」
四人の肩が、ビクッと震える。
「俺たちはまだ高校生だ。今すぐ『完全な合併(結婚)』なんてできない。……でも、俺は約束する! これから先、俺の人生という名のチャートがどんなに乱高下しようと、俺はお前たち全員の手を、絶対に離さない!」
俺は、四人の手を順番に、力強く握りしめた。
「これは、俺からお前たちへの『フォワードガイダンス(将来の約束)』だ! 俺の心は、お前ら四人と共に、永遠にストップ高を更新し続ける!! だから……これからも、俺の隣にいてくれ!」
それは、実質的な「全員まとめて愛し抜く(多重債務宣言)」という、経済的にも倫理的にも常軌を逸した、特大の『基本合意書(MOU)』の発表だった。
一瞬の静寂の後。
『ドォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!』
【市場状況:伝説の『クアッド・マージ(四重合併)』成立!!!】
【高坂優人の圧倒的な「包容力(ガチホ宣言)」により、四大銘柄の好感度が宇宙の果てを突破! 学園の歴史上、最も幸福なバブル崩壊が発生しました!!】
「優人くん……っ! ばか、欲張り……っ! でも……愛してるわ!」
カレンが涙を流しながら俺の首に抱きつく。
「高坂くん……! あなたのその非合理な決断、一生かけて監査(愛)してあげるから……っ!」
アリスが俺の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。
「優人くん! わたしも、ずーっとずーっと大好きだよぉ!」
ひまりが俺の背中に飛び乗り、頬擦りをする。
「……優人。あなたの『永遠』という名のバグ、私のシステムに完全にインストールされたわ。……逃がさないからね」
ミアが俺の腕に絡みつき、静かに微笑む。
四人の純白のドレスに包まれ、俺の視界は真っ白な(そして重すぎる)愛で完全に埋め尽くされた。
6. エピローグ:ジューンブライドの終わりと、終わらない青天井
数日後。
学園の掲示板には、「ベストカップル賞:高坂優人 & 神宮寺カレン & 四宮アリス & 橘ひまり & 如月ミア(※特例措置)」という、前代未聞の表彰状が飾られていた。
「……なあ、佐藤。俺、本当に四人まとめて面倒見ることになったんだけど。これ、法的に大丈夫なのか?」
昼休みの屋上。俺がげっそりとした顔(でもどこか幸せそう)で呟くと、佐藤はタブレットで自身の莫大な利益(賭けの配当金)を確認しながら、爽やかに笑った。
「安心しろ高坂。お前の抱えた『資産(愛)』は、法律や常識を超えた特異点だ。それに、神宮寺財閥が本気を出せば、一夫多妻制の国の一つや二つ、明日には建国されているだろうさ」
「……笑えない冗談だな」
屋上のドアが開き、夏服姿の四人の少女たちが、俺の弁当(それぞれが作ってきた重箱)を持って現れた。
「優人くん! 今日は私のA5ランク和牛よ!」
「高坂くん、私の栄養管理弁当を先に食べなさい!」
「優人くん、唐揚げあーんしてあげる!」
「優人。私のデータで、あなたの胃袋をハックしてあげるわ」
「わかった、わかったから! 順番にな! 喧嘩するなよ!」
俺の高校生活、6月相場。
「セル・イン・メイ」を乗り越え、「ジューンブライド」という名の究極のM&Aを成立させた俺のポートフォリオ。
今日もまた、誰にも止められない「ストップ高(青天井)」の空に向かって、騒がしく、そして最高に幸せな乱高下を続けているのだった。
(第17話・完)
おまけ:本日の市場ニュース
神宮寺カレン: ヴァージンロードを歩いた興奮が冷めやらず、将来の結婚式場として「月の土地」を購入する手続きを開始した。
四宮アリス: 自分が着たウェディングドレスを、真空パックにして生徒会の秘密金庫に厳重保管。「将来の現物支給」に備えるとのこと。
橘ひまり: 「将来の家族計画」の子供の人数を、優人の体力を考慮して「三人」から「野球チーム(九人)」に上方修正した。
如月ミア: 優人の「俺の隣にいてくれ」という宣言音声を、AIで無限リピート再生するウィルスを作成し、自分の脳内に直接送信し続けている。
高坂優人: 四人分のウェディングドレスの総額(数十億円)を知り、一時的に呼吸困難に陥った。胃薬と養命酒が手放せない。
佐藤: 今回のイベントの賭け(胴元)で稼いだ資金を元手に、ウォール街への進出を真剣に検討し始めた。




