第15話:大型連休(ゴールデンウィーク)は青天井! 四大銘柄による「リゾート開発(合弁事業)」と水着のインフレーション!
1. 4月下旬:忍び寄る「大型連休相場」
「……いいか高坂。4月も下旬、本日4月22日を過ぎれば、株式市場は特有のアノマリー(経験則)に突入する。世に言う『ゴールデンウィーク前・手仕舞い売り』からの、**『インバウンド・レジャー関連銘柄の超絶暴騰』**だ!」
うららかな春の陽気が差し込む昼休みの教室。俺、高坂優人は、購買の焼きそばパンを齧りながら、親友・佐藤の熱弁をBGMとして聞き流していた。
窓の外の桜はすっかり葉桜となり、季節は確実に初夏へと向かっている。
「手仕舞い売りねえ……。俺の周りの銘柄たちには、『売り時』なんて概念は存在しないみたいだけどな」
俺がげっそりとした顔で呟くと、佐藤はタブレットに表示された恐ろしいチャートを突きつけてきた。
「その通りだ! お前を巡る四大銘柄……神宮寺カレン、四宮アリス、橘ひまり、そして新興の怪物・如月ミア。彼女たちは今、来たるゴールデンウィーク(GW)という『特大の配当支払日』に向けて、天文学的な資金とスケジュールを調達し始めている。お前という『優良資産』の連休中の稼働時間を、1秒残らず買い占めるためにな!」
『ピコンッ!』
俺のポケットの中で、スマホが重々しいアラートを鳴らした。
【市場概況:GW相場の過熱により、学園内の「旅行パンフレット」の価格がストップ高。全投資家(女子生徒)が、高坂優人の休日のスケジュール(未公開株)を狙って血眼になっています】
「……頼むから、俺の休日を先物取引の対象にしないでくれ」
「優人。私のデータによれば、現在のあなたの血糖値は微減傾向にあり、同時に『ため息』による二酸化炭素排出量が増加しているわ。……はい、最適温度に冷却された炭酸飲料と、脳疲労を回復させるブドウ糖100%のタブレットよ」
背後から、一切の足音を立てずに現れたのは、先日「天才クオンツ」から「狂信的デレ銘柄」へと華麗なるクラスチェンジを遂げた転校生、如月ミアだった。
彼女は今日も大きめの「彼シャツ」風の制服を着崩し、感情の読めない漆黒の瞳で俺を見つめている。だが、俺の顔を見るなり、その耳の先は瞬時に真っ赤に染まった。
「お、おう。サンキュー、ミア」
俺が炭酸飲料を受け取ると、ミアはスッと俺の隣の席(空席ではないはずなのだが、彼女のハッキングにより実質的なミア専用指定席となっている)に座り、タブレットを操作し始めた。
「……当然の投資よ。あなたの健康状態を維持することは、私のポートフォリオの最大のリスクヘッジなんだから。……それより優人。GWのスケジュールだけれど、私のアルゴリズムが『最も二人きりで密着でき、かつ他者の介入確率が0.001%未満の完璧な旅行ルート』を弾き出したわ。行き先は――」
「――待ちなさい、新興の泥棒猫! 優人くんのゴールデンウィークは、神宮寺財閥がとっくに『TOB(株式公開買付)』を完了しているわよ!」
教室の前のドアがバーン!と弾け飛び、黄金のオーラを纏った神宮寺カレンが乱入してきた。その後ろからは、生徒会特注のバインダーを抱えた四宮アリスと、なぜか巨大なバーベキューコンロを担いだ橘ひまりが続いている。
「ああ……始まった。俺の連休を巡る、地獄の『公開入札』が……」
2. 四大銘柄による「GW事業計画」
教壇の前に横一列に並んだ四人の美少女たちは、全校生徒が窓越しに見守る中、それぞれの「GW事業計画」を高らかに発表し始めた。
「まずは私からよ!」
カレンが扇子をバチンと鳴らすと、背後に控えていた黒服たちが巨大なジオラマを教室に運び込んだ。
「神宮寺財閥は、優人くんとのバカンスのために、南太平洋の無人島を一つ『お買い上げ』したわ! 名付けて『カレン&優人・愛のプライベート・リゾート』! 島ごと買い取ったから、誰の邪魔も入らない。一週間、優雅なクルーザーと超高級ヴィラで、私と二人きりで……その、あんなことやこんなことを……っ!」
カレンの顔が沸騰したように赤くなり、ジオラマの上のミニチュア火山がボンッ!と煙を噴いた。
「バカバカしい! 莫大な資本の無駄遣いよ!」
アリスが眼鏡を光らせて前に出る。
「高坂くん、大型連休こそ自己研鑽(人的資本の蓄積)の絶好の機会よ! 生徒会は、山奥にある電波の届かない『完全隔離型・特別学習施設』を押さえたわ! ここで10日間、私と二人きりで、朝から晩まで密室で……徹底的に、私の『個人授業(意味深)』を受けさせてあげる……っ!」
アリスの震える手からバインダーが滑り落ち、彼女の頭頂部からマンガのような湯気が立ち上る。
「二人とも不健康だよー! 連休といえばアウトドアでしょ!」
ひまりがドンッ!とバーベキューコンロを床に置いた。
「わたしはお父さんと一緒に、山でイノシシを仕留めてきたよ! 優人くん! わたしと一緒に山に籠もって、満天の星空の下で、一つの寝袋で一緒に寝よう! わたしの体温で、優人くんをポカポカにしてあげるからね!」
「……非合理的ね。旧世代の物理的なアプローチには反吐が出るわ」
ミアが冷たい声で一蹴する。
「優人。私の計画は『完全なるVR(仮想現実)ダイブ』よ。私の部屋のサーバーをフル稼働させ、仮想空間に『私たち二人しか存在しない世界』を構築したわ。そこでなら、物理法則を無視して、24時間、1秒の隙間もなくあなたと接続し続けられる。……現実世界の肉体なんて、もはや不要よ」
ミアの瞳孔がガンギマリになり、タブレットの画面に「YUTO_LOVE.exe」というヤバそうなプログラムが起動しているのが見えた。
『ビーッ! ビーッ! ビーッ!』
【市場崩壊の危機:四大銘柄の独占欲が臨界点を突破! 高坂優人の身体が四つに引き裂かれる『物理的分散投資』の危機が迫っています!】
「お前ら、いい加減にしろぉぉぉっ!!」
俺は立ち上がり、机を両手で叩いた。
「海外の無人島だの、隔離シェルターだの、イノシシだのVRだの……俺の休日はサバイバルかSF映画か!? 俺はただ、普通に遊びに行って、普通に休みたいだけなんだよ!」
俺の悲痛な叫びに、四人の動きがピタリと止まった。
「ふ、普通……。優人くんが、普通を望んでいる……?」カレンが呟く。
「私の計算式に『普通』という変数が欠落していたなんて……!」アリスが愕然とする。
「優人くん、ごめんね……。イノシシ、怖かった?」ひまりがしょんぼりする。
「……アップデートが必要ね。優人の『普通』の定義を再定義するわ」ミアが高速でコードを打ち直す。
俺はため息をつき、一つの「妥協案」を提示した。
「……俺の体は一つしかない。お前たちの計画を全部バラバラに実行したら、俺は過労死(上場廃止)する。だから……」
俺は四人の顔を交互に見据えた。
「今年のGWは、お前ら四人と俺、全員で一緒に、日帰りの『大型レジャープール&温泉リゾート』に行く! これなら全員平等だろ! 文句あるか!」
一瞬の静寂。
そして。
「「「「……行く!!!!(行きます!/行くわ!/インプット完了!)」」」」
『ギュイイイイイイイイイインッ!!!!!』
【相場爆発:前代未聞の『五社合弁事業』が成立! 学園経済史上、最も巨大で、最もカオスな「GWリゾート市場」が爆誕しました!!】
こうして、俺の平穏な休日は、四人の美少女たちの業火のような愛に包まれた「地獄のレジャー相場」へと変貌を遂げたのだった。
3. 開園! ジョイント・リゾートと水着の「新商品発表会」
GW初日。
俺たちがやってきたのは、都内近郊に新しくオープンしたばかりの超大型全天候型リゾート施設『ヤエス・メガ・ウォーターパーク&スパ』だった。
「……なあ神宮寺。これ、ただの市民プールじゃないよな?」
俺は、目の前にそびえ立つ、中世ヨーロッパのお城のようなエントランスを見上げて汗を拭った。
「ええ。昨日の夜、神宮寺財閥がこの施設の親会社を『敵対的買収』して、本日限定で『完全貸切』にしたわ。優人くん以外のオスは、アリ一匹たりとも入場できないよう、周囲3キロを財閥の私兵が封鎖しているわ」
「やりすぎだろ!! 経済回せよ!」
「ふん、神宮寺さんの成金趣味には呆れるけれど、セキュリティ網は私のアルゴリズムで再構築しておいたわ。これで、優人の視界に入る不確定要素はゼロよ」
ミアがスマホを片手に、施設のAI制御システムを完全に掌握している。
「施設内の飲食物のケータリングは、橘家の実家の総力を挙げて用意したよ! 優人くん、後で特大ステーキ串食べようね!」
ひまりが元気よく笑う。
「……私は、この特区内における風紀の取り締まりを行うわ。高坂くん、決して破廉恥な行動を起こさないように。……特に、これから起こる『変動』に対してはね」
アリスが、なぜか真っ赤な顔で眼鏡を押し上げた。
そう。これから起こる最大のイベント。
それは、更衣室から出てくる彼女たちの、**「水着」という名の『新商品発表会』**だった。
「優人くん! 待たせたわね!」
最初に現れたのは、カレンだった。
『ピコンッ!』
【神宮寺カレン株:ストップ高! ハイブランドの破壊力!】
カレンが身に纏っていたのは、純白を基調とし、金の装飾があしらわれたエレガント極まりないビキニだった。透き通るような白い肌と、驚くほど豊かなプロポーションが、暴力的なまでの「資産価値」を見せつけている。
「ど、どうかしら……。その、胸のあたり、少しキツくて……変じゃないかしら……っ」
カレンが恥じらいながら胸元を隠す仕草に、俺の心臓の株価が急騰する。
「高坂くん。……監査の時間よ」
続いて現れたのは、アリス。
『ドゴォォォン!』
【四宮アリス株:連れ高による大暴騰! ギャップ萌えの極み!】
アリスは「風紀を守る」と宣言していた通り、濃紺のスクール水着……に見せかけた、身体のラインが恐ろしいほどクッキリと出る、競泳用のハイレグ・ワンピース水着だった。普段の堅物な制服姿からは想像もつかない、引き締まったウエストとスラリと伸びた足。
「な、何を見ているのよ! これは流体力学的に最も合理的な形状であって、決してあなたを誘惑するためじゃ……っ!」
アリスは真っ赤になって、手にしたビート板で俺の視線を遮ろうとする。
「優人くーん! おまたせー!」
弾けるように飛び出してきたのは、ひまりだ。
『ギュイイイイイン!』
【橘ひまり株:青天井! 健康的セクシーのストロング・バイ(強気買い)!】
ひまりの水着は、鮮やかなひまわり色のスポーティーなビキニ。だが、その健康的なはつらつさとは裏腹に、彼女の「発育の良すぎる」胸元は、ビキニの布面積を明らかにオーバーフローしており、動くたびに危うい揺れ(ボラティリティ)を発生させている。
「えへへー! 新しい水着買っちゃった! 優人くん、似合う? 似合うよね! ぎゅーってしていいよ!」
無防備すぎるひまりが俺に抱きつこうとして、カレンとアリスが慌てて制止に入る。
「……騒がしいわね。旧世代の布の面積に一喜一憂するなんて」
最後に、静かに更衣室から現れたミア。
『ピ――――――――ッ!!!!!』
【如月ミア株:上場来高値更新! テクノロジーと官能の特異点!】
ミアが着ていたのは、サイバーパンク映画から抜け出してきたような、漆黒の極小ビキニだった。布面積は四人の中で最小。さらに、水着のラインには微弱なLEDの青い光が走り、彼女の冷たくも艶かしい肌の質感を、悪魔的なまでに引き立てている。
「……私の生体データ(スリーサイズ)は、あなたの理想値を1ミリの狂いもなくトレースしているわ。……どう? 私の『UI』は、あなたの操作を待っているわよ」
ミアが無表情のまま、俺の耳元で甘く囁く。
「お前ら……俺を殺す気か……っ!!」
俺の視覚情報と理性は、入場してわずか5分で完全にメルトダウンを起こしていた。
4. 波乱のウォータースライダーと「多重債務」
「さあ優人くん! まずはあの『メガ・デス・スライダー』に乗りましょう! もちろん、私と二人乗りの浮き輪でね!」
カレンが俺の腕を強引に引っ張る。
「待ちなさい! 物理的な密着度が高すぎるわ! 安全確認のため、私が同乗するべきよ!」アリスが反対の腕を掴む。
「わたしも乗るー! 全員で一つの浮き輪に乗ろうよ!」ひまりが背中に乗っかってくる。
「……重量オーバーで物理演算が崩壊するわ。私がアルゴリズムで摩擦係数をゼロにしてあげるから、私と優人だけで滑るべきよ」ミアが冷たく分析する。
結局、貸切の特権を活かし、俺たちは「四人乗りの巨大ゴムボート」で、施設最大のウォータースライダーに挑戦することになった。
「いくわよー!」
急流に押し出され、ボートが漆黒のトンネルの中へと落下していく。
「きゃあああああっ!」
猛烈なスピードと遠心力。
その中で、俺はかつてない恐怖……いや、別の意味の「死の危険」に直面していた。
狭いボートの中で、水着姿の美少女四人が、G(重力)に耐えきれずに俺の体に密着してくるのだ。
「ゆ、優人くん……っ! 怖いっ!」
カレンの柔らかな胸が、俺の右腕に押し付けられる。
「こ、高坂くん! 離れないで! これは不可抗力よ!」
アリスの滑らかな太ももが、俺の足に絡みつく。
「優人くん、たのしいー!!」
ひまりが俺の首に正面から抱きつき、その圧倒的な質量が俺の胸板を圧迫する。
「……優人。心拍数、上昇中ね。私も……この『密着係数』は、嫌いじゃないわ……っ」
ミアが背後から俺の腰に腕を回し、その冷たい肌を俺の背中に預けてくる。
『ピピピピピピピピピピッ!!』
【市場大パニック:高坂優人の理性が限界突破! 四大銘柄の「過剰な現物支給」により、強制ロスカットの危機!】
「あ、あああああ……っ!!(色んな意味で)助けてくれええええっ!!」
俺の叫び声は、水しぶきと彼女たちの歓声にかき消され、スライダーのゴールへと吸い込まれていった。
5. AIプールの暴走と、筆頭株主の決断
スライダーを終え、俺たちは巨大な「造波プール」で一息ついていた。
四人は俺を囲むように浮き輪でぷかぷかと浮いており、水着の面積の少なさと相まって、まるで「美少女のハーレム温泉」のような状態になっている。
「……疲れた。俺、もう帰って寝たい……」
俺がプールの縁で項垂れていると、突然、異変が起きた。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!』
巨大な造波プールの中央から、不気味な機械音が鳴り響き、水面が異常なうねりを上げ始めたのだ。
「な、何これ!? 波が大きすぎるわ!」カレンが叫ぶ。
「おかしいわ! 施設のAIシステムが、私のハッキングを弾き返して暴走している……!」ミアが防水仕様のタブレットを叩きながら顔を青ざめさせる。
「エラーよ! 誰かが外部からシステムに干渉を仕掛けたのよ!」アリスが眼鏡を濡らしながら警告する。
ズドォォォォン!!
突如、高さ5メートルはあろうかという「異常な高波」が、四人のいるプール中央に向かって発生した。
「きゃあああああっ!!」
「優人くん!!」
四人の美少女たちが、波に飲まれそうになる。
貸切のため、周囲にライフセーバーはいない。機械の暴走が、彼女たちを飲み込もうとしている。
「カレン! アリス! ひまり! ミア!」
俺は考えるよりも先に、プールの水の中へと飛び込んでいた。
俺の体力の「ファンダメンタルズ(基礎能力)」は、毎日彼女たちの重すぎる愛に振り回され続けた結果、並の男子高校生を遥かに凌駕するレベルにまで鍛え上げられていた。
「俺の優良銘柄たちに……傷一つ、つけさせるかよぉぉぉっ!!」
俺は猛烈な勢いで泳ぎ、波に飲まれそうになっていたひまりの腕を掴み、そのままアリスの浮き輪を引き寄せた。
「優人くん!」
「高坂くん!」
さらに、波の頂点付近でバランスを崩していたカレンとミアの元へ飛び込み、両腕で二人をしっかりと抱え込んだ。
「優人くん……っ!」
「優人……ばか、こんな非合理な……!」
「全員、俺にしがみつけ!!」
俺は四人の体重(総資産)を全て受け止め、迫り来る巨大な波の衝撃に対して、プールの底を強く蹴り上げて耐え抜いた。
ザザァァァァァァァァァンッ!!!!!
大量の水しぶきが舞い上がり、プールの水が弾け飛ぶ。
数秒後。波が引き、プールのAI制御がミアの緊急プログラムによって強制シャットダウンされ、水面は嘘のように静けさを取り戻した。
「……ぷはっ! お、お前ら、無事か……?」
俺が咳き込みながら四人の顔を確認すると。
四人は、ずぶ濡れになりながらも、俺の腕と体にしっかりと抱きついたまま、呆然と俺の顔を見上げていた。
「……優人くん。あなたって人は……本当に……」
カレンの瞳から、水滴なのか涙なのかわからないものが溢れ、彼女は俺の胸に顔を埋めた。
「……計算外よ。……私の命の価値を、あなたが身を挺して担保してくれるなんて……っ」
アリスが、真っ赤な顔で俺の肩に額をこすりつける。
「優人くん! 怖かったよぉ……! ずっと離れないからね!」
ひまりが、俺の首にきつくしがみつく。
「……バグだわ。私の胸の奥のアルゴリズムが、あなたの体温で完全に書き換えられちゃったじゃない……。責任、取ってよね」
ミアが、俺の頬にそっとキスを落とした。
『ピ――――――――――――ッ!!!!!』
【市場状況:伝説のヒーロー配当発生!】
【四大銘柄の好感度が、測定不能な次元の彼方へとストップ高を記録! 学園経済は完全に、高坂優人という「神」の支配下に置かれました!】
6. エピローグ:連休はまだ終わらない
その日の夕方。
疲れ果てた俺たちは、帰りの神宮寺家専用クルーザー(なぜかプールから直行できる水路が作られていた)の豪華なソファで横になっていた。
カレン、アリス、ひまり、ミアの四人は、遊び疲れたのと、俺への「愛の過剰摂取」による安心感からか、俺の体にもたれかかるようにしてスヤスヤと眠りに落ちている。
右腕にカレンとアリス、左腕にひまりとミア。完全に身動きが取れない。
「……なあ佐藤。聞こえるか」
俺は、スマホの通信アプリを開き、小声で呟いた。
『ああ、聞こえてるぞ高坂。お前のGPSと生体データから、現在お前が「世界一幸福な拘束状態」にあることは把握済みだ』
通信の向こう側で、佐藤がコーヒーを啜る音が聞こえる。
「……なあ。俺の体力、もう限界なんだけど。俺のゴールデンウィーク、これで終わりだよな?」
佐藤は、少しの沈黙の後、非情な宣告を下した。
『……何を言っているんだ高坂。カレンダーを見てみろ』
「……え?」
『今日はまだ、GW初日の「昭和の日」だ。明日からは平日を挟んで、怒涛の4連休が待っている。……彼女たちの「旅行のしおり(事業計画書)」は、まだ1ページ目を開いたばかりだぞ』
俺は、絶望と、そして腕の中で心地よさそうに眠る四人の美少女たちの寝顔を見て、深く、深くため息をついた。
「……そうかよ。……上等だ。俺の人生、どこまでも付き合ってやるよ……」
俺の2026年、ゴールデンウィーク。
市場は決して眠らない。四人の少女たちからの、青天井の愛の買い注文は、連休の終わりまで、いや、永遠に続くのだ。
(第15話・完)
おまけ:本日の市場ニュース
神宮寺カレン: プールでの救出劇に感動し、プールの波を起こした機械のメーカーを即座に買収。解体して溶鉱炉に投げ込んだ。
四宮アリス: 濡れた水着姿の優人を至近距離で見た記憶を、脳内で「国宝級データ」として厳重にロック。今夜の夢の素材とする予定。
橘ひまり: プールで流された唐揚げ弁当の悲しみを乗り越え、明日は「優人くんの身長と同じサイズのバームクーヘン」を焼く決意を固めた。
如月ミア: 優人にキスをした瞬間の自分の心拍数データを「生涯の宝物(NFT)」としてブロックチェーン上に刻み込んだ。
高坂優人: 四人の水着姿の残像が脳裏に焼き付き、今夜は一睡もできそうにない。GWの残り日数に絶望しつつも、実は少し楽しみにしている自分がいることに気づいてしまった。




