第142話:絶対的安定相場(ブルーチップ)の幕開け! 橘ひまりの晴れ着姿(特別配当)と、新年の初詣(ニューイヤー・マーケット)!
1. 10:00:狂乱の終わりと、穏やかなる「大発会(新年最初の取引)」
「……新年あけましておめでとう、高坂。いや、もう『橘陣営の専属投資家』と呼ぶべきか」
1月1日、元旦の朝。
俺、高坂優人が真新しいコートに袖を通していると、インカムから親友・佐藤の、憑き物が落ちたような穏やかな声が響いた。
「昨年末のクリスマス決戦を経て、学園の市場は完全に沈静化した。乱高下を繰り返していたお前の感情のチャートも、今や『橘ひまり』という最強のインフラ銘柄に全額投資され、見事なまでの安定成長期に入っている」
佐藤の声には、アナリストとしての満足感と、親友に対する温かい祝福が込められていた。
「今日は元旦……市場における『大発会(その年の最初の取引日)』だ。お前が『ただの幼馴染』から『彼氏』へと昇格して初めて迎える、公式な公開市場(初詣)でのデート。……さあ高坂、お前の選んだ『絶対的本命』が、外で待っているぞ」
「ああ、分かってる。……行ってくるよ、佐藤」
俺はインカムの通信を切り、マフラーを巻いてアパートのドアを開けた。
冬の冷たい空気が頬を撫でるが、俺の心は信じられないほどに温かかった。
2. 10:15:晴れ着姿の「特大配当」と、公式な「独占契約(手つなぎ)」
アパートの下に降りると、そこには目を疑うほど美しい光景(ストップ高)が広がっていた。
「……あ、優人くん! あけましておめでとう!」
吐く息を白く弾ませながら俺を待っていたのは、淡いピンク色を基調とした、華やかな晴れ着(振袖)に身を包んだ橘ひまりだった。
いつもは下ろしている髪も綺麗に結い上げられ、うなじが白く透き通って見える。普段の「家庭的な幼馴染」とは全く違う、息を呑むような「大人の女性」としての圧倒的な魅力(特別配当)。
「ひまり……お前、その着物……」
「えへへ。お母さんの昔の着物をお直ししてもらったの。……どうかな? 優人くんの『彼女』として、隣を歩いても恥ずかしくない……?」
ひまりは頬をほんのりと赤く染め、少し恥ずかしそうに袖を合わせて上目遣いで俺を見つめてきた。
破壊力が規格外すぎる。クリスマスに独占契約を結んだとはいえ、俺の心臓のチャートは一瞬で天井を突き破った。
「恥ずかしいわけないだろ。……本気で、すげえ綺麗だ。見惚れたよ」
俺が正直に伝えると、ひまりはパァッと顔を輝かせ、嬉しそうに俺の隣に並び立った。
「……じゃあ、行こっか。優人くん」
彼女はそう言って、着物の袖からそっと手を伸ばし、俺の右手に自分の左手を絡ませてきた。
これまでは「幼馴染の距離感」として誤魔化していた接触も、今日からは違う。これは市場全体に向けた、正式な「完全独占契約(合弁事業)」の誇示だ。
俺は彼女の少し冷えた小さな手をしっかりと握り返し、俺たちは初詣の神社へと歩き出した。
3. 11:30:神社での「友好的外部監査(元ライバルたちとの遭遇)」
初詣の神社は、多くの参拝客(一般投資家)でごった返していた。
俺たちははぐれないようにしっかりと手を繋いだまま、参道の列に並んでいた。
「――あら。新年早々、見せつけてくれるじゃないの」
不意に背後から声を掛けられ、振り返ると。
そこには、凛とした着物姿の四宮アリスと、最高級のファーコートを羽織った神宮寺カレンが並んで立っていた。
「アリス先輩! カレン先輩!」
ひまりが驚いて声を上げる。どうやら二人で初詣に来ていたらしい。
「あけましておめでとう、二人とも。……ふふっ、橘さんの晴れ着姿、とっても素敵よ。高坂くんにはもったいないくらいの『優良資産』ね」
カレンが黄金の扇子で口元を隠し、妖艶に微笑む。その瞳に、かつてのような刺々しい敵対心(TOBの野望)はない。
「ええ。高坂くん、もしあなたが彼女を少しでも泣かせるようなこと(業績悪化)があれば、私たちが黙っていないわよ。いつでも『友好的な外部監査役』として、あなたの素行をチェックするから覚悟しておきなさい」
アリスが、厳しくも温かい風紀委員長としてのエールを送ってくる。
「……ああ、分かってる。絶対に泣かせない。俺の人生(全財産)を懸けて、ひまりを幸せにするよ」
俺が力強く宣言すると、アリスとカレンは顔を見合わせ、満足そうに小さく笑った。
「……言質、取ったわよ。じゃあ私たちは先に行くわ。二人とも、お幸せにね」
「また学園(市場)で会いましょう。……せいぜい、T大の受験勉強も頑張りなさいよ?」
かつての最大資本たちは、俺たちの「安定成長」を心から祝福し、人混みの中へと消えていった。
くるみ、ミア、オリビアからも、朝一番で「あけおめ(と、少しのジェラシー)」のメッセージが届いている。
彼女たち五人の想い(投資)を無駄にしないためにも、俺はひまりとの未来を絶対に手放してはいけないのだ。
4. 12:00:絵馬に託す「年次事業計画(未来の誓い)」
本殿での参拝を終えた後。
俺たちは神社の境内で、二人で一つの絵馬(木製の事業計画書)を買った。
「優人くん、何て書く?」
「決まってるだろ。まずは今年の最大の目標(KPI)だ」
俺は油性ペンを受け取り、力強い文字で書き込んだ。
『T大合格!』
「うん、そうだね! ……じゃあ、その隣に、わたしも書いていい?」
ひまりがペンを受け取り、少し照れくさそうに、俺の文字のすぐ横に書き足す。
『優人くんと、これからもずっと一緒に、笑顔でいられますように』
それは、どんな強固なインフラ投資よりも温かく、どんな巨額の資本よりも尊い、彼女の純粋な「生涯ホールド宣言」だった。
「……ひまり」
「優人くんがT大に行っても、その先の社会人になっても。……わたし、ずっと優人くんの一番近く(絶対的インフラ)で、優人くんの背中を支え続けるからね」
ひまりの真っ直ぐな瞳に見つめられ、俺は絵馬を掛ける場所の前で、周囲の目も気にせず、彼女の肩を優しく抱き寄せた。
「ああ。俺も、お前が帰ってくる場所を、一生かけて守り抜くよ。……今年もよろしくな、ひまり」
「……うんっ! よろしくお願いします、優人くん!」
俺たちは絵馬掛けに二人の想い(共同事業計画)をしっかりと結びつけ、青空の下で最高に幸せな笑顔を交わした。
5. エピローグ:T大受験(最終決算)へのカウントダウン
「――コホン。新年早々、甘すぎる相場展開だな」
帰り道、俺たちが甘酒を分け合いながら歩いていると、インカムから再び佐藤の冷静な声が響いた。
「だが、忘れるなよ高坂。お前たちの『恋愛市場』は完全な安定期に入ったが、学園という市場における最大のイベント……『T大入学試験(最終決算)』が、あと1ヶ月後に迫っている!」
佐藤の声が、再びアナリストとしての鋭さを取り戻す。
「ひまりという最強のインフラ(彼女)を手に入れた今、お前のファンダメンタルズ(基礎学力)は揺るぎないものになっているはずだ! この1ヶ月間は、お前とひまりの『愛の力(相乗効果)』を学力という数値に変換し、T大合格という『最高の利益確定』に向けてラストスパートをかける期間だ!」
卒業(第150話)に向けたカウントダウン。残り8話。
狂乱のラブコメ相場を制し、愛する彼女との絶対的な安定を手に入れた俺、高坂優人。
ここから先は、己の未来を切り拓くため、そしてひまりの隣に立ち続ける男になるため……己の知力のすべてを懸けた、T大受験(最終決戦)へと突入していくのだった。
(第142話・完)
本日の市場ニュース(ニューイヤー・レポート)
【市場の安定化】高坂優人と橘ひまり、公式に『独占契約(交際)』を市場にアピール!: 元旦の初詣において、晴れ着姿の橘ひまりと高坂優人が手を繋いで現れ、周囲の一般投資家(参拝客)に強烈な「リア充オーラ(特別配当)」を見せつけた。
【元六大資本の動向】四宮アリスと神宮寺カレンが『友好的外部監査役』に就任: 敗れたかつての資本たちは、二人の交際を祝福しつつも「泣かせたら許さない」と宣言。市場の健全性を保つための強力なセーフティネットとして機能している。
佐藤のアナリスト・レポート: 「恋人関係の成立は、ゴールではなく『新たな長期投資の始まり』である。精神的な安定を確保した高坂は、次なる巨大目標である『T大合格』に向けて、圧倒的な集中力を発揮するだろう。投資家諸君、いよいよ物語は受験という名の最終局面へと向かう」
高坂優人の現在の状況: 晴れ着姿の彼女との甘すぎる初詣を経て、モチベーション(株価)が限界突破。「……俺、絶対にT大に受かって、ひまりを幸せにする」と誓いを新たにする、最強の『彼女絶対防衛モード』へと移行している。明日からの猛勉強に備え、参考書を開き始めた。




