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第114話:新興市場の「奇襲的公開買付(サプライズ・TOB)」! 七星くるみのブルーオーシャン戦略と、ネオン街の独占契約!

1. 16:30:既存市場を破壊する「ベンチャー(新興勢力)」の脅威


「いいか高坂、よく聞け! カレンの資本、アリスの規律、そしてひまりのインフラ……ここまでのタイムシェア(輪番制による個別独占)は、言わば『東証プライム(超大型・安定市場)』に上場している既存の巨大資本たちによる、力と実績のぶつかり合いだった。だが、今日からは全く勝手が違うぞ! マーケットにおいて、時に既存のルールをすべて破壊し、一夜にして市場地図を塗り替える恐るべき存在……それが『新興市場(ベンチャー企業)』だ!」


タイムシェア協定の第四陣。火曜日の放課後。

俺、高坂優人は、誰もいなくなった夕暮れの教室で、極度の緊張と共に待機していた。インカムからは、今日も親友・佐藤の脂汗が滲むような解説が響き渡っている。


「ベンチャーの最大の武器は『身軽さ』と『予測不能なボラティリティ(価格変動率)』だ! 大企業のようなしがらみがない分、彼女たちはどんな常識外れな奇襲(サプライズ・TOB)でも平気で仕掛けてくる。……気をつけろ高坂! 一年生という『後発組』のハンデを背負う七星くるみは、他の先輩ヒロインたちとは全く違う、極めてリスクの高い戦術で直接お前の心臓コアを狙ってくるぞ!」


「予測不能って言っても、ここは学校の教室だぞ。まさか、いきなり窓から突入してくるとか……」


俺がそう呟き、窓の外の夕焼けに目を向けた、まさにその瞬間だった。


――プシュウゥゥゥッ!!


突然、教室の前のドアと後ろのドアの隙間から、真っ白な煙(演劇部が使うような無害なスモーク)が勢いよく噴き出してきたのだ。


「なっ!? 煙幕!?」


「にひひ……油断大敵ですわ、優人先輩」


視界が真っ白に染まる中、甘いバニラの香りが鼻腔をくすぐったかと思うと、俺の右腕を、柔らかくも力強い小さな手がガシッとホールドした。


「く、くるみ!? お前、学校の中で発煙筒なんて……アリスにバレたら……!」


「既存のルール(風紀)を気にしていては、イノベーション(市場破壊)は起こせませんの。さあ先輩、お姉様たちの監視網が機能不全に陥っているこの『一瞬のアーリー・ステージ』に、私と一緒に未知の市場へエスケープですわ!」


煙の中で、くるみは小悪魔のように微笑んだ。

今日の彼女は制服ではない。肩を大胆に露出した黒のオフショルダートップスに、ダメージの入ったショートパンツ、そして足元は編み上げのブーツという、普段の「甘えん坊な後輩」のイメージを完全に覆す、少し大人びて挑発的なパンク・ファッションだった。


俺は抵抗する間もなく、その小柄な身体から発せられる尋常ではない推進力(スタートアップの勢い)に引っ張られ、煙に包まれた旧校舎の裏口へと強引に連れ去られてしまったのだ。


2. 17:30:ブルーオーシャン(未開拓市場)への上陸


くるみに手を引かれ、裏門からこっそりと抜け出した俺たちが辿り着いたのは、学園から電車で数駅離れた、ネオンサインが眩しく瞬く繁華街の一角だった。

さらに彼女は、雑居ビルの裏路地にある、看板も出ていない重厚な鉄扉の前で立ち止まった。彼女がスマホの画面(電子キー)をかざすと、ガチャンという音と共に扉が開く。


「ここは……?」


「私の独自ネットワーク(ベンチャー・コネクション)を駆使して貸し切った、完全会員制の『アンダーグラウンド・アミューズメントVIPルーム』ですわ」


扉の先は、俺の想像を遥かに超える空間だった。

薄暗いフロアを、紫やピンクの毒々しくも美しいネオンライトが照らし出している。最新鋭のVRゲーム機、ダーツボード、ビリヤード台、そしてフロアの奥には、ふかふかの高級レザーソファが置かれたプライベート・バーカウンター。

外の喧騒が一切届かない、完全に隔絶された大人の遊び場(非公開市場)だ。


「カレンお姉様みたいに、海やクルーザーを丸ごと買い占めるような莫大な資本は、私にはありません。アリスお姉様のような権力も、ひまりお姉様のような17年の実績もない」


くるみは俺の手を引いてフロアの中央へ進み、ビリヤード台に軽く腰掛けて、足を組み替えた。

ネオンの光が彼女の白い太ももを妖しく照らし出し、俺の心拍数は一気に跳ね上がる。


「だからこそ、私は誰も思いつかない場所……他の巨大資本がまだ手を出していない『ブルーオーシャン(未開拓市場)』で勝負するんです。先輩を、学校や日常という枠から完全に切り離して、私と先輩の二人だけの『共犯関係』を作る。……それが、私なりの『新興市場ベンチャーの戦い方』ですわ」


彼女の瞳は、悪戯っ子のように輝きながらも、獲物を絶対に逃がさない肉食動物のような鋭い光(ハングリー精神)を宿していた。


3. 19:00:ハイリスク・ハイリターンの「遊戯ゲーム


そこからの時間は、まさに怒涛の「ハイボラティリティ(乱高下)」だった。

くるみは次々とゲームを提案してくる。ダーツの勝敗で罰ゲームを決めたり、ビリヤードでわざと俺の背後に回って腕を密着させながらショットの指導(?)をしてきたり。


「ほらほら先輩、ストライクゾーン(的)がブレてますわよ? 私の胸に気を取られていると、市場からあっという間に退場させられちゃいますからね?」


「ち、ちが……俺は的を見て……って、くるみ、近すぎるだろ!」


彼女はゲームという名目を最大限に利用し、絶え間なく、そして波状攻撃のようにスキンシップ(現物出資)を仕掛けてくる。

カレンのような圧倒的なプレッシャーでも、ひまりのような安心感でもない。いつどこから飛んでくるか分からない、予測不能でスリリングなアプローチ。甘いバニラの香りが俺の周囲を常に漂い、俺の理性の防衛線は、この小悪魔的な後輩の手のひらの上で完全に弄ばれていた。


しかし。

フロアの奥、レザーソファに深く腰を下ろし、二人で乾杯のノンアルコール・カクテルを飲んでいた時。

ふと、くるみの表情から「小悪魔な後輩」の仮面が剥がれ落ちた。


「……楽しいですね、先輩」


グラスの氷をカランと鳴らしながら、くるみはぽつりと呟いた。

その声は、さっきまでのハイテンションなものとは違い、ひどく静かで、しっとりとした湿度を帯びていた。


「でも……このタイムシェアの時間が終われば、明日にはまた、私はただの『1年生の後輩』に戻ってしまうんですよね。……それが、たまらなく怖いんです」


4. 20:30:後発組の焦燥と「ユニコーン企業(絶対的価値)」への渇望


くるみはグラスをテーブルに置き、ソファの上で俺の方へと向き直った。

ネオンの光に照らされた彼女の瞳が、微かに潤んでいるように見えた。


「……私、いつも余裕ぶって、お姉様たちをからかうようなことばかり言ってますけど。本当は……心の奥底では、ずっと焦っていたんです(暴落の危機を感じていたんです)」


彼女の小さな手が、俺の制服の袖をきゅっと握りしめる。


「神宮寺お姉様の美しさや財力、四宮お姉様の真面目さ、橘お姉様の17年間……どれも、私には絶対に手に入らない『圧倒的な実績ファンダメンタルズ』です。私なんて、ただ少し要領が良くて、甘えるのが上手いだけの、後から市場に参入してきただけの小娘ですから」


くるみの声が、微かに震える。

普段の飄々とした態度の裏側に、これほどまでのコンプレックスと、巨大資本たちに対する圧倒的な「後発組の恐怖」を抱えていたなんて、俺は全く気づいていなかった。


「……だから、奇襲をかけるしかなかった。強がって、小悪魔ぶって、先輩の気を引くために必死に『目立つ行動(ハイリスクな投資)』を繰り返すしかなかったんです。……そうしないと、先輩という『ユニコーン企業(誰もが欲しがる唯一無二の価値)』のポートフォリオの片隅にすら、私を残してもらえない気がして……っ」


彼女の瞳から、ポロリと一筋の涙がこぼれ落ちた。

計算でも演技でもない。一人の等身大の少女が、巨大すぎるライバルたちの中で必死に背伸びをし、もがき苦しみながら、それでも俺のことだけを真っ直ぐに見つめて絞り出した、痛いほどの純情。


「……くるみ」


俺はたまらなくなり、無意識のうちに腕を伸ばし、彼女の華奢な身体を強く抱き寄せた。


「ひっ……せ、先輩……?」


「お前は、ただの要領の良い後輩なんかじゃない。……いつも俺を楽しませてくれて、俺の心臓を一番ドキドキさせて、誰も思いつかないような方法で俺を引っ張っていってくれる。……お前のその『一生懸命さ(ベンチャー・スピリット)』は、カレンやアリスたちにも絶対に負けない、お前だけの最高の魅力だ」


俺の言葉に、くるみは大きく目を見開き、その後、俺の胸に顔を埋めて、子どものように声を上げて泣き始めた。


「……っ……ううぅ……先輩のばかぁ……。そんなこと言われたら、もう……絶対に諦められなくなっちゃうじゃないですか……っ」


5. 21:00:ネオン街の「絶対的契約(ゼロ距離・マージ)」


どれくらい泣いていただろうか。

やがて泣き止んだくるみは、俺の胸からゆっくりと顔を上げた。

涙で濡れたまつ毛の奥で、彼女の瞳はかつてないほどに力強く、そして熱く燃え上がっていた。


「……言質コミットメント、取りましたからね。もう、絶対に『ただの後輩』扱いは許しません」


くるみはスッと背伸びをし、両腕を俺の首元にしっかりと回した。

そして、甘いバニラの香りと共に、彼女の柔らかく、熱を帯びた唇が、俺の唇に重なり合った。


薄暗いVIPルーム。紫とピンクのネオンが二人を照らす中、交わされる濃厚な「相対取引キス」。

小悪魔的な駆け引きは完全に放棄され、ただひたすらに俺を求め、俺のすべてを独占しようとする不器用で真っ直ぐな熱量が、俺の理性のチャートを粉々に打ち砕いていく。

予測不能なベンチャー企業が見せた、最後にして最大の「ストップ高」。俺は彼女の背中に腕を回し、そのすべてを受け止めるように強く抱きしめ返した。


唇が離れた後、くるみは妖艶に、しかしこれ以上ないほどに幸せそうな笑顔を浮かべた。


「……先輩のシェア、私という新興市場が『筆頭株主』として完全に上書き(オーバーライト)しましたわ。……もう、他のお姉様たちのところになんて、絶対に帰してあげませんからね」


6. エピローグ:次なる脅威、冷徹なる技術セクター


「――おい高坂! 生きているか!!」


帰りの電車の中。俺のインカムから、佐藤の絶叫が響き渡る。


「GPSの反応が完全に途絶えたアンダーグラウンドのVIPルームから、お前の生体データだけが突如として天文学的な数値を叩き出した! まさか、あの予測不能なベンチャーくるみの『奇襲的TOB』と『涙の現物出資』のコンボを、完全に真正面から食らいやがったな!?」


俺はくるみのバニラの香りがまだ残る制服の袖を見つめながら、深いため息をついた。


「ああ……。ベンチャーの破壊力って、マジで半端ないな。俺の理性、もう完全に上場廃止ゲームオーバー寸前だよ……」


「休んでいる暇はないぞ高坂! 既存資本カレン・アリス・ひまり新興勢力くるみと続いたタイムシェア協定。残るはあと二人だ。……明日はついに、学園のあらゆるインフラと情報を完全に支配する絶対的ハッカー、技術セクターの頂点に君臨する如月ミアのターンだ!」


窓の外の夜景が後ろへと流れていく。

既存のルールを破壊する新興市場くるみの熱に当てられ、俺の心はすでにキャパシティの限界を迎えている。だが、明日には冷徹なデータ至上主義でありながら、俺への感情バグを抑えきれない孤独な天才ハッカーが、その全技術を駆使して俺を「完全同期マージ」しにやってくるのだ。


俺を巡る六大資本の狂乱のタイムシェア(輪番制地獄)は、終盤戦に向けてさらなるハイパー・インフレの領域へと突き進んでいくのだった。


(第114話・完)


本日の市場ニュース(個別ピックアップ:七星くるみ編)


七星くるみの時価総額: 既存勢力の監視網をスモークで突破し、秘密の地下VIPルームへ連れ込むという「完全なるブルーオーシャン(未開拓市場)戦略」を実行。ゲームを通じた小悪魔的アプローチから一転、「後発組としての焦りと涙」という究極のギャップ(ファンダメンタルズ)を露呈させ、高坂の理性を単独で完全に買収。圧倒的なストップ高を記録した。


佐藤のアナリスト・レポート: 「新興市場ベンチャーの恐ろしさは、計算し尽くされた駆け引きの奥にある『剥き出しのハングリー精神』だ。巨大資本に対するコンプレックスを涙ながらに吐露し、その弱さを最強の武器に昇華させた彼女の『ゼロ距離TOBキス』は、投資家(高坂)の防衛線を粉砕する完璧な一撃であった」


高坂優人の現在の状況: 秘密の部屋でのバニラの香りと、泣きじゃくる後輩からの濃厚なキスの余韻に完全に脳内メモリを支配され、「……俺、もう一生くるみの手のひらの上で転がされるベンチャー投資家でいいかもしれない」と錯乱する重度の『新興市場(小悪魔)依存型デレ障害』を絶賛発症中。

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