第109話:歴史的実績による「ダークプール(匿名暗黒市場)」取引! 幼馴染の完全包囲と、お化け屋敷の甘い罠!
1. 10:00:市場を揺るがす「ダークプール(匿名暗黒市場)」の脅威
「いいか高坂! 開会式でのアリスの『独占宣言』により、学園という名の公開市場は現在、風紀委員という名の規制当局によって完全に監視・統制されている。だが、マーケットの歴史において、規制が厳しくなればなるほど投資家が逃げ込む場所がある。……それが『ダークプール(匿名暗黒市場)』だ!」
文化祭本番の午前中。
俺、高坂優人は、俺の右腕にガッチリと腕を絡ませて離さない四宮アリスと共に、校舎内のクラス企画を「監査(という名の公開デート)」して回っていた。周囲の男子生徒からの嫉妬の視線がレーザービームのように突き刺さる中、インカムからは親友・佐藤の緊迫した解説が響く。
「ダークプールとは、取引所の外で、誰にも注文状況(デレの動き)を見られずに巨額の売買を行う非公開市場のことだ! 高坂、お前は今、最もその『見えない取引』に警戒しなければならない! 巨大資本の札束ビンタより恐ろしいのは、暗闇から忍び寄る『実績』の刃だぞ!」
「佐藤、解説はありがたいが、俺は今それどころじゃ……」
「高坂くん? 誰と話しているの? 私という『絶対的な安全資産』が隣にいるのだから、他のノイズはシャットアウトしなさい」
アリスが俺の腕をさらに強く抱き込み、豊かな双丘を押し付けながら上目遣いで睨んでくる。彼女の石鹸の香りが俺の理性を激しく揺さぶるが、それ以上に、周囲の女子生徒(他ヒロインの手先)たちの不穏な動きが気になって仕方がなかった。
「ア、アリス……次はどこを回るんだ?」
「そうね、2年Bクラスの……『お化け屋敷』の監査に行きましょう。暗がりで不純異性交遊が行われていないか、私が直々にチェックする必要があるわ。……もちろん、あなたが怖がったら、私がしっかり抱きしめて守ってあげるから安心してね?」
アリスは完全に職権濫用を楽しむモードに入っている。
しかし、2年Bクラスの看板を見た瞬間、俺の背筋にゾクッと冷たいものが走った。
そこは、俺の幼馴染である橘ひまりのクラスだった。
2. 暗闇の分断:17年分の「行動予測」
黒い暗幕をくぐり抜け、お化け屋敷の中へと足を踏み入れる。
中は完全な漆黒で、不気味なBGMと冷たい隙間風が、絶妙な恐怖を演出していた。
「高坂くん、離れないでね。私の腕をしっかり……きゃっ!」
突如、通路の横から作り物のゾンビが飛び出してきた。アリスが驚いて俺の腕にしがみつこうとした、まさにその一瞬だった。
足元の床が微かに傾き、俺はバランスを崩して右斜め後ろへと一歩下がった。
――バタンッ!
「えっ……!?」
俺が後ずさった空間だけが、まるで回転扉のようにクルリと反転し、俺はアリスと完全に分断され、見知らぬ狭く暗い小部屋へと放り込まれてしまったのだ。
「高坂くん!? どこ!? 壁が……壁が閉まってるわ! 規律違反よ! すぐに開けなさい!」
壁の向こう側からアリスの焦った声が聞こえるが、分厚いベニヤ板と暗幕に遮られ、すぐに遠ざかっていく。
「……ふふっ。アリス先輩、公開市場のルールなんて、この暗闇の中では通用しないんですよ?」
暗闇の奥から、甘く、そして聞き慣れた優しい声が響いた。
ポッと、小さなランタンの明かりが灯る。
そこに立っていたのは、小悪魔風のキュートな吸血鬼の衣装に身を包んだ、幼馴染の橘ひまりだった。
3. ダークプールでの「相対取引」
「ひまり……!? お前、この仕掛け……」
「えへへ。優人くんが驚いた時、無意識に『右足から斜め後ろに下がる』癖があることくらい、17年も一緒にいればデータ(実績)として完璧にインプットされてるからね。その歩幅に合わせて、床の傾斜と隠し扉を設計したの。……ようこそ、わたしと優人くんだけの『ダークプール(秘密の取引所)』へ」
ひまりは悪戯っぽく微笑みながら、ランタンを床に置き、俺に向かってゆっくりと近づいてきた。
普段の家庭的でエプロンが似合うひまりとは全く違う、肩を露出し、フリルとリボンがあしらわれた大胆な衣装。その破壊力に、俺の心拍数は一気に跳ね上がる。
「ひまり、お前その格好……」
「かわいい? 今日は決算日だからね。わたしだって、いつもの『安全な幼馴染(国債)』のままじゃ、お姉様たちというハイリスク・ハイリターンな銘柄に勝てないって分かってるもん」
ひまりは俺の目の前まで来ると、スッと背伸びをして、俺の首元に両腕を回してきた。
暗闇の中、彼女の甘いシャンプーの香りと、吸血鬼の衣装越しに伝わってくる柔らかな体温が、俺の五感を激しく支配していく。
「アリス先輩の『公開監視』は確かに強力だったけど……でも、優人くんの一番無防備な部分を知っているのは、わたしだけ。……ねえ、優人くん。昔、雷が鳴って停電した時、怖くてわたしの布団に潜り込んできたこと、覚えてる?」
彼女の顔が、俺の耳元にピタリとすり寄せられる。
甘い吐息が耳たぶをくすぐり、俺は全身が熱くなるのを感じた。
「あの時みたいに……今度はわたしが、優人くんの逃げ場所になってあげる。だから……ここで、わたしに『特別配当』を支払って?」
4. 10:30:幼馴染の「巨額配当」要求
ひまりの言葉には、幼馴染としての優しさと、一人の女としての強烈な独占欲が完璧な割合でブレンドされていた。
彼女は俺の背中をギュッと抱きしめ、絶対に逃がさないという意思表示を見せる。
「……ひまり。お前、本当に最近、心臓に悪いことばっかりするな……」
「優人くんが、わたし以外の女の子のところに行っちゃいそうになるからでしょ? ……わたし、ずっと待ってたんだよ。17年間、ずっと『複利』で想いを膨らませてきたの。今日こそ、その利息……ちゃんと回収させてもらうからね」
ひまりは顔を上げ、ランタンの淡い光の中で潤んだ瞳で俺を見つめた。
その視線は、もはや「幼馴染」という安全圏に留まることを完全に放棄した、一人の恋する少女の切実で、情熱的なものだった。
逃げ場のないお化け屋敷の隠し部屋。
外ではアリスが俺を探し回り、カレンや他のヒロインたちも血眼になっているはずだ。だが、この完全な暗闇の密室では、ひまりの現物投資が絶対的な支配力を持っていた。
俺の理性の防衛線は、彼女の17年という重すぎる実績の前に、音を立てて崩れ去った。
「……わかったよ。お前の投資には、絶対に損はさせない」
俺はひまりの腰に腕を回し、その華奢な身体を強く抱きしめ返した。
ひまりは一瞬嬉しそうに目を細め、そのままそっと目を閉じた。
俺たちは、お化け屋敷の暗闇の中、誰にも見られない完全な非公開市場で、互いの鼓動(株価)が完全に重なり合うほどの、深く、そして甘い『決済』を交わしたのだった。
5. エピローグ:市場の崩壊と、次なる刺客
「――おい高坂! 生きているか!!」
インカムから、佐藤の鼓膜を破らんばかりの絶叫が響いた。
「お化け屋敷の監視カメラが10分間完全にブラックアウトしていた! お前、まさかあの暗闇の中で、幼馴染と巨額の『場外取引』を行っていたんじゃないだろうな!? ……マズいぞ高坂! アリスが怒り狂って、お化け屋敷の壁を物理的に解体し始めた!」
「なっ……!? 解体!?」
ドゴォッ! という鈍い音と共に、俺とひまりが隠れていた小部屋の壁のベニヤ板が、外側から警棒で無惨に叩き割られた。
「……見つけたわよ、不法滞在者。私の監視下から逃れて、こんな暗がりで不正な配当を受け取っていたなんて……! 橘さん、あなたには『市場操作(風紀違反)』の罪で永久退場を申し渡すわ!」
鬼の形相で壁の穴から顔を覗かせた四宮アリス。
そしてその後ろには、「私の優人くんに何をしているのかしら?」と扇子を握りつぶしながら微笑む神宮寺カレンの姿まであった。
「あちゃー……見つかっちゃった。でも、一番美味しいところ(利確)は済ませたから、いっか」
ひまりは俺の腕の中でペロッと舌を出し、小悪魔のように微笑んだ。
文化祭の午前中。
絶対的と思われたアリスの規律は、幼馴染のダークプール取引によって見事に打ち破られ、相場はさらなる混沌とハイパー・インフレへと突き進んでいくのだった。
(第109話・完)
本日の市場ニュース(個別ピックアップ:橘ひまり編)
橘ひまりの時価総額: 規制当局の監視の目をかいくぐり、お化け屋敷のギミックを利用した「ダークプール(匿名暗黒市場)」への引き込みに成功。17年間の行動データをフル活用した完璧な密室の構築と、大胆な衣装(吸血鬼)による現物出資で、市場の予測を裏切る劇的なストップ高を記録。
佐藤のアナリスト・レポート: 「公開市場がどれだけ規制されようと、完全にプライベートな空間で『17年分の利息』を要求された時の高坂に、逃げ道は存在しない。暗闇での『わたしが逃げ場所になってあげる』という言葉は、最強のセーフ・ヘイブン(安全資産)としての価値を見せつけた」
高坂優人の現在の状況: 暗闇での甘い香りと感触が脳裏に焼き付き、理性のチャートが完全に崩壊。「……俺、もう一生あの暗闇の部屋から出たくないかもしれない」と遠い目をする重度の『幼馴染・非公開取引依存症』を絶賛発症中。




