出会い
第一話
ある日の夕方、白のロールスロイスがロビー玄関の中央にゆっくりととまった。一応湯浅野旅館は日本では由緒正しい旅館だし、高級車が止まることなどざらにある。俺は、普段ならお客さんだと思い接客をするが、この時はなぜか体が動かず、その場に立ちすくんでまった。
その人は車から片足をおろし、歩き出した。髪は柔らかい金髪でぱっちりとした二重 の美少女だった。白いセーターに黒いスカート、絵にかいたようなお嬢様スタイル だった。年齢はいくつぐらいだろうか?明らかに自分よりは年上だと思ったが距離が近くなるにつれ若く見えてくる、25、20 、いやもっと…… その人は俺のそばをゆっくりとし た足取りで通り過ぎ、旅館の中へと入っていった。
「皆さん今日は新しい従業員を紹介します。来週から皆さんと一緒に働く 綾野さんです。」
「綾野彩花です。皆さん宜しくお願い致します。」
なんと、ロールスロイスから降りてきたこの美少女はお客様ではなく、アルバイト希望だった。
「若い子が入ってくれて助かるわね、和泉君」
女将さんは少しからかうような目つきで俺のことを見てきた。
「なんでそんなこと僕に聞くんですか?誰が入ってこようが僕には関係ないです」
「だって和泉君、さっきからすごくうれしそうな顔してるから」
「和泉君、これからよろしくね!」
美少女と目が合った、俺は緊張してすぐに視線をそらしてしまった。
「こ、こちらこそよろしくお願いします...」
「和泉君は今おいくつ?」
「17です」
「じゃあ高校生なのね、ここでアルバイトしてらっしゃるの?」
「ええ、まあ、親父もここで働いてるんで」
「あら! そうなの!? じゃあ後でお父様にも挨拶しなくちゃ」
俺は彩花さんの言葉遣いが妙に丁寧なのが気になった、俺とは育った環境がちがうような、だとしたら、なんでそんな人がこの旅館にアルバイトに来たんだ? 全く理解できない。
「あの、さっきロールスロイスから出てきましたよね、お客さんかと思いましたよ」
「え⁉」
「どういうことかしら」
彩花さんの目線が一瞬泳いだ気がした。
「私はここまで歩いてきました、多分人違いなさってるんじゃない?」
「あれ、そうですか、おかしいな」
確かに彩花さんは俺がさっきロビーで見た人に違いない、なのになぜそんな嘘をつくんだろう。
「あの、何でここで働こうと思ったんですか?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「うーん、まあちょっと色々あってね」
この人きっと何か大きな秘密があるに違いない、俺はそう確信した。




