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少年達の深夜の大冒険②

ビックリして逃げる3人

自転車を忘れたことに気付いたのはその後だった。

僕たちは街灯の光もない薄暗闇の湿った土の匂いと雑草も手入れされていない、白い鉄パイプが連なる、細い道を足の裏にクッションでもついてるかのように、足音を極力たてずに走って逃げた。


ハアハアと。こもる深い呼吸と、全力で走った反動から僕はまた大量の汗が身体のあちこちから流れ出す。それがポタッと襟足から首に落ちる。せっかく渇いたパンツは湿ってお尻に張り付いている、その張り付いた布を指で直す。


「ああ!自転車…」


僕は、乗ってきたモトクロス自転車を錆門の前に置いたまま、正反対の裏門まで走ってきてしまったことに気付いた。

取りに行くには、またあの薄暗い憂鬱な闇のなかを一人で行くことになる。深夜のなかにポツンと取り残された自転車が盗られないか心配になった。鍵を掛けなかったことを悔やんだ。


速見洋介が僕が自転車を置いてきたことに、気づいてくれた。僕のモヤモヤした断崖ギリギリのずっしり重い空気を一気に吸い込んで晴れさせた。

そして、速見洋介は「取りに行かないとね」っと最大の一言を孤立する僕に援軍を出す。

それは三國志の諸葛亮孔明が采配を振るうみたいに、僕の心を鼓舞してくれた。

リーダーの山ちゃんもクラス一、いや学校一の頭脳派の速見洋介の提案をむげに、拒否することはできないことは、頼りない僕にでも考えなくてもわかった。


山ちゃんを置いて、僕と速見洋介は自転車を取りに戻った。

逃げてきた動揺はすでに消えて、戻ることの嬉しさの方が先を歩いた。

そしてこの状況を作ってくれた、速見洋介に僕は心からの「ありがとう」を送った。


速見洋介は僕をニコッとみて

「仁木くんは僕以外には、絶対我慢しちゃうからね、それが分かってて、助けないのは親友じゃないし」

っとさらりと格好よく言った。


鈍感な僕は初めて速見洋介にいつも助けてもらっていた事に気付いた。僕の被ってきた阪神の野球帽をようやく、僕の頭に戻してくれて、「ポン!」と僕の大きい頭を速見洋介の手のひらが優しく撫でた。


戻った帽子からはフワッと速見洋介のシャンプーのいい匂いが僕の鼻に香る、さっきから垂れてくる鼻水が邪魔してうまく嗅ぐことができない、僕は鼻水と匂いを一緒にすすり、鼻の奥に香りが割り込んで来る。

速見洋介はカラカラと綺麗な声で笑う。

「僕は、仁木くんだけには正直になれるからね」

と僕をさらに泣かせてくる、僕は速見洋介にカッコいいと言う簡単な言葉しか出てこなかった──

"親友"と恥ずかしげもなく言ってのける男は僕の中では本当に「カッコいい」存在になった。


山本くんが待ってるから急がないと──

速見洋介は僕の腕を取ってざらつくアスファルトを走り出した。

サラサラな黒髪を揺らし、振り向く綺麗な整った横顔が優しく笑う。僕はしかり掴む速見洋介の手のひらの感触に神経を奪われて、一瞬にしてスローモーションのように切り取られた時間を共有して音もない空間を駆けていった──


錆門が大きく佇む現前には暗闇に同化する自転車が見えた、

そして、自転車から絶対に僕が取りに帰ってくると信じる強い意識をはっきりと受け取った──


無事自転車を救出した僕らを、少し苛立って待っていた山ちゃんが視界に入れる、山ちゃんは自分もついていけばよかったと、暗闇のなかに取り残されて不安だったこと、僕に意地悪した胸のうちを吐露してくれた。

もうそこには、いつもの3人の友情が何事もなく横たわっていた。


そして、僕たちがなぜこんな深夜にここに来たのかその理由が明らかになる。










【あとがき】

思い付いたので書きました。

ちょっと臭い友情が見える話に出来上がりました。

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