助けを呼べば現れる! ──正義のヒーロー、自転車ライダー!
「助けてぇー!」
ロードバイクでのポタリング中、俺は柄の悪い四輪車に乗る怪人に捕まった。
「クククク! キサマも普通免許保持者にしてやるぜ!」
「やめてくれぇー! 俺は自らの健康と自然環境のための乗り物にしか乗りたくないんだ!」
「ハハハーーッ! キサマも我らの仲間になって、不健康な運動不足になった上、世界に排気ガスをまき散らせ!」
「だ、誰かーーっ! 助けて! このままじゃ俺、自動車乗りにされてしまう!」
「待とうよ」
にこやかな声が、怪人四輪乗りの動きを止めた。
見ると、丘の上に止めたママチャリに跨って、きちんとヘルメットをかぶった、サラリーマン風の男性がにこやかに俺たちを見下ろしていた。
怪人が声を荒らげる。
「誰だーーッ!? キサマ、弱そうだな!」
「僕は正義のヒーロー『自転車ライダー』」
彼はにこやかに、平和な口調で言った。
「自転車は人類が創り出した最強の乗り物だよ?」
「何を言いやがる? おっせー上に邪魔くせぇ公道のゴミがよ?」
「知ってる? 自転車は、あらゆる乗り物の中でもっとも運動効率がいいんだ。何しろ漕いだペダルの力がそのままタイヤに伝わるから、ロスがないんだ」
その通りだ──
俺もチャリライダーだから知ってる。
でも、それは──
「それは強さに関係ねェーー!」
怪人四輪が煽り運転を繰り出した!
「ハハハーーッ! どれだけ運動効率が悪くとも結果的な『速さ』と『力強さ』がすべて! キサマに300馬力が出せるというのかーーッ!?」
悪質な幅寄せ! 自転車ライダーを深いドブに叩き落とそうとする。
「変──身──!」
自転車ライダーが腰のベルトにカードを装着した。
「牽引補助あり、デニス・ミューラー・コレネック!」
自転車ライダーの前にドラッグレーサーが出現する!
ドラッグレーサーに牽引されて、ライダーは加速し、風の抵抗が少ないゾーンでペダルを漕いだ!
時速296kmのスピードで、あっという間に怪人四輪乗りを引き離す!
「グワアアアァー!?」
ドブに落ちたのは怪人四輪乗りのほうだった。
「ありがとう、自転車ライダー!」
俺が涙を流しながらお礼を言うと、彼はにっこり振り返り──
「すべては乗る者次第なのさ。では──僕、急ぐんで」
そう言うと、赤いデミオに乗り換えて、安全運転でどこかへと走り去った。




