第八話「ディジーズの崩壊」
「なるほど、彼らが君のいってたネクロマンサーか...... ネコの姿とは興味深いね」
そう異形となった白衣の男が答えた。
「でしょうディジーズ。 ぜひ捕まえたいわ」
「それは面白い...... とらえてじっくりいじってみよう」
そういうとこちらに猿を投げつけた。
(あいつがディジーズ。 でもあれはなんだ!? 人間の腕が何本もからみついている! あれもネクロマンシーなのか!)
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 跳蛙弾!」
ぼくのうち出した弾が蛙となって跳ね、ディジーズを上下左右からあたる。
「なんだ、あれは......」
当たったはずの弾が体から押し出されてきた。 それにともない体が肥大化して服を破る。 そこにはいくつもの腕がまとわりつく異形の姿があった。
「一旦ひこう!」
『わかった乗れ!』
ぼくたちは猿にのりにげようとした。
「させないわよ」
そうリジェクトがいうと、部屋の前に多くの犬と猫がいる。
『こいつらリジェクトのディシーストか! くそ! 逃げ道を防がれた! 無理やり突破するか!』
「いや! こいつら感染症をもってるかもしれない! あっちだ!」
ぼくたちは横の棚奥へと逃げた。
『くそっ! なんだあいつ!』
「わからない! でも普通のネクロマンサーじゃない! まさか人間の一部だけを甦らせたのか」
ぼくはスピードローダーでリボルバーの弾を交換した。
『脳だけディシーストにできるなら、体の一部を甦らせることができるってことか』
「ああ、多分...... それより腕がからまっているから体まで弾丸が届かない」
『私の石の猿も、あの腕力には通じない。 二人でも自信があるわけだ...... 完全にはめられた』
壁際に追い込まれる。
『彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 石鮃』
ミーシャがヒラメをうみだす。 ぼくたちは壁と同化して見える薄い石のヒラメの下に隠れる。
「おかしいわね...... こっちにきたはず」
「隠れたのか、だが隠れる場所なんてない。 一体どこにいる」
リジェクトとディジーズはぼくたちを探している。
(もしディジーズの腕が単体のディシーストなら、どこかに核となる星幽石があるはず。 それを壊せば......)
「ここの床がえぐれてるわね。 ということは床を素体にしてなにかを呼び出したということ、多分あのヒラメ、床か壁に隠れているわ」
「ならば、壊していけばいずれでてくるな」
ディジーズは腕のまとわりついた巨大な足で踏みつけて、壁へと棚を投げつけてくる。
(まずい! このままだといずれ潰される!)
「ミーシャ、隙を頼む」
『わかった!』
ヒラメは地面を横になり、滑るように床を走って、二人の視界を遮った。
「邪魔だ」
ヒラメはディジーズの腕で弾きとばされる。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
ぼくのうちだした弾は小さく散るとディジーズの体に当たった。
「くっ! これは散弾...... だが効きはしない」
「【散弾蟻】《シェルショットアント》」
ぐっ、なんだこの痛み...... ぐあ!」
「どうしたの? ディジーズ。 これはアリ......」
落ちた赤いアリをリジェクトがみつけた。
「これはヒアリか。 アルカロイド系の毒をもつ。 アナフィラキシーショックでもおこせればとおもったのか...... だがそんなものは効かない」
ディジーズは歪む笑顔でそういった。
「それだけじゃない」
「なんだと...... ぐっ! なんだ!」
ディジーズの体に絡み付く腕がつぎつぎ地面に落ちた。
「まさか! 体内に残ったアリが星幽石を探知して壊している!? みんな!」
リジェクトの声で犬猫がこちらに向かってくる。
『させるかよ!』
ミーシャの猿がそれらを蹴散らす。 ぼくはその間にポケットの弾丸をリボルバーに装填する。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【被覆鋼弾燕】《フルメタルジャケットスワロー》」
ぼくのはなった銃弾はツバメとなると、ディジーズの腕と胸を貫く。 そのとき固いなにかが砕けるような音がした。
「ぐはっ! そんな......」
「ディジーズ!!」
リジェクトはそう叫んだ。
ディジーズの胸から砕けた大きな星幽石が落ちる。 するとその体はゆっくり崩れ落ちていく。
「くっ...... やったわね」
リジェクトは大量の犬猫を背に部屋からでていった。
『逃がしたか......』
「ああ」
ぼくたちが犬猫を倒して、リジェクトをおうがその姿はもうなかった。
『やはり、人間じゃないのか』
ディジーズがいたところに、砕けた大きな星幽石がおちている。
「ああ、ディジーズも生きている人じゃなくてディシーストだった。 星幽石が胸の辺りにあったのをアリを通して感じたんだ」
『共感か、危険なことを...... つぶされてたら最悪死んでたぞ。 ただあいつらは自我をもつまま甦ったディシーストということか...... ならあのリジェクトもおなじ可能性が高いな』
「ああ、だけど死んだものは魂とともに記憶も散ってしまうはず、自我や理性なんてもつはずが......」
『私とおなじく死ぬ間際に魂を移したじゃないか?』
「......なるほど、それなら可能性はあり得るか。 あの時、ぼくは失敗した。 それで雷が落ちて...... でもそれが二人もいるなんて」
『帝国がそういう術をつくりだしたのかも...... とりあえず、カイルに報告しよう』
ぼくたちはその場から去った。




